アイスランドのバンドが10年ぶりにアルバムを発表。燃えさかる虹のジャケットという衝撃的なヴィジュアルとは裏腹に、ビートを刻まないアンビエントなサウンドはとても内向的で、かつ艶やかだ。こうした作風は、〈セクシュアル・マイノリティーの人権が後退しているように見える〉とインタヴューで発言するなど、私たちが生きる世界の暗澹たる現状を彼らなりに消化して生み出されたものだと思う。ゆえにサウンドは壮大で慈しみと優しさを醸しながらも、随所で憤怒を垣間見せる。己の情動を明瞭に音として表現できる才気には驚くほかない。言うまでもなく必聴レヴェルの作品だ。