ボールト翁のステレオ・ライヴ音源による英国管弦楽名曲選。何と言っても当時88歳、最後の公開演奏会となった“南極交響曲”の77年のライヴ初出音源が聴き逃せない。南極点到達の帰路、遭難に見舞われたスコット隊の悲劇を描くRVW7番目の交響曲、緊張感の強力な表出、緊迫描写の巨大表現はライヴ特有の臨場感も相乗して極大だ。BBC響の硬質なサウンド、老成とは無縁、ボールトの無骨なまでの正面切ったアプローチが悲劇性を増幅させる。リマスターを敏腕ポール・ベイリーが手掛けており、73年の“惑星”は初出時のサウンドの雑味が減じ、リアルな印象が前に出た。“ハマースミス”や“青柳の堤”もやはり格別。