©Charlie Gross

ミシェル・ンデゲオチェロが、2024年2月12日(月・祝)と13日(火)にビルボードライブ東京、2月15日(木)にビルボードライブ大阪で来日公演を行う。彼女を取り巻く音楽や生い立ちについては他記事でも多数語られているので、本稿では過去の作品やジャズの予備知識を知らない方に向けて、今回の公演の魅力を紹介したい。

ミシェルは93年にアルバム『Plantation Lullabies』でデビュー。それから30年が経った現在は、グラミー賞に10度ノミネートされるほどの存在となった。共演したアーティストも豪華で、マドンナやローリング・ストーンズ、サンタナ、プリンス、チャカ・カーン、ハービー・ハンコック、スティーヴ・コールマン、マーカス・ミラー、ロバート・グラスパーなどビッグネームが並ぶ。

老若男女、そしてジャンルを問わないコラボレーション相手の人選から伝わるのは、ミシェルのピュアに音楽を愛し追求する実直な精神だ。まさにスワヒリ語で〈鳥のように自由〉という意味を持つステージネーム〈ンデゲオチェロ〉を体現している。

彼女と最初に接触した日本人ミュージシャンは久保田利伸だろう。彼はニューヨークのスタジオでデビューを翌年に控えたミシェルと邂逅。6枚目のアルバム『Neptune』(92年)収録の“Let’s Get A Groove~Yo! Hips~”でベースを任せ、そのプレイを「荒削りなファンキー」と評した

紹介者はソウル・II・ソウルのシンガーでもあったキャロン・ウィーラー。「巧くて程よくファンキーじゃなくて、本当にファンキーなベーシストはいないかな?」という久保田の問いに「凄いのがいるわ。女の子よ。すごく小さくて、でも変な子。何も喋らないけどベースは凄いから」と答えたらしい。ミシェルはキャロンの作品『Beach Of The War Goddess』(92年)の“Wind Cries Mary”でベースを弾いていたのだ。

その際のクレジット名は本名〈Meshell Johnson〉だったが、ガールズR&Bグループ=ヴォイスボクシングのアルバム『Voyceboxing』(91年)では〈Me’Shelle〉、前述した久保田利伸の『Neptune』では〈ME’SHELL〉、要するに久保田が出会ったのは〈ンデゲオチェロ以前〉のミシェルだったのだ。

〈ンデゲオチェロ以降〉のミシェルは自由な音楽性で30年もの間、自己更新し続けてきた。それはブルーノートに移籍してリリースした最新作『The Omnichord Real Book』(2023年)も例外ではない。

幼少期に親しんだという日本産の楽器〈オムニコード〉と、膨大なスタンダードソングの楽譜を収めたジャズミュージシャンの教科書〈リアル・ブック〉を組み合わせたタイトルの本作が示すのは、懐古ではなく温故知新だ。

日本人にとってピアニカのようなオフラインの楽器を使って、スタンダード曲のような強度ある曲を目指す気概。そしてアフロビートを中心にブラックミュージックらしさを踏まえつつ、新しい音楽を新しい誰かとクリエイトする意志。彼女は古き伝統をリスペクトしつつ、懐古主義やチャレンジなき音楽やプレイヤー同士の馴れ合いを否定する。

ひとつのことに長年取り組むと、気を抜くと飽きてしまう。創造の輝きは消え失せ、その先には惰性や自己模倣、ルーティンが待っている。だから〈ンデゲオチェロ〉であり続ける彼女は美しい。

一方で私たちはどうだろう。彼女が30年をかけて磨き上げたそうした姿勢を、我が国は失ってしまったようにも思える。もしそうなのだとしたら、惰性で生きているのだとしたら、彼女のプレイを見るべきだ。きっとミシェルの創造力に未来を切り開くヒントがあるはずだから。

 


LIVE INFORMATION
Meshell Ndegeocello
ミシェル・ンデゲオチェロ

2024年2月12日(月・祝)ビルボードライブ東京
1stステージ
開場/開演:15:30/16:30
2ndステージ
開場/開演:18:30/19:30
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=14461&shop=1

2024年2月13日(火)ビルボードライブ東京
1stステージ
開場/開演:17:00/18:00
2ndステージ
開場/開演:20:00/21:00
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=14461&shop=1

2024年2月15日(木)ビルボードライブ大阪
1stステージ
開場/開演:17:00/18:00
2ndステージ
開場/開演:20:00/21:00
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=14462&shop=2

サービスエリア/カジュアルエリア:9,400円/8,900円(1ドリンク付)

※本公演はClub BBL会員、および一般販売をWEB受付のみ実施いたします
※法人会員は電話にてご予約承ります

■メンバー
ミシェル・ンデゲオチェロ(ベース、ボーカル)
ジャスティン・ヒックス(ボーカル)
ジェビン・ブルーニ(キーボード)
クリストファー・ブルース(ギター)
エイブラハム・ラウンズ(ドラム)
カイル・マイルズ(ベース)