©Charlie Gross

グラミー賞に10度ノミネートされた現代最高峰のアーティスト、ミシェル・ンデゲオチェロ。類稀なミュージシャンシップと独自の美意識を誇る孤高の才人がこのたびブルーノート入り! 最高のニュー・アルバムが届いたタイミングで、その足取りを改めて振り返ってみよう!

 「これは私の旅、私の人生、そして私のすべてのうちのほんの一部です。初めてレコードを作ったのは22歳の時で、それから30年以上も経っているから、共有したいことはまだまだたくさんあります」。

 ブルーノート移籍作となったニュー・アルバム『The Omnichord Real Book』をリリースするにあたって、ミシェル・ンデゲオチェロはそのように語る。ここ数年の表立った活動は決して賑やかではなかったが、パンデミックによるロックダウンの影響について「私にとってそれは素晴らしい時間だったと認めざるを得ません。腰を据えて音楽に改めて向き合うことができました」と認める彼女は、その期間もしっかり英気を養ってふたたび創作に取り組むための準備をしていたということだろう。

MESHELL NDEGEOCELLO 『The Omnichord Real Book』 Blue Note/ユニバーサル(2023)

 ミシェルとブルーノートの縁といえば、グラミー賞を受賞したロバート・グラスパー・エクスペリメントののアルバム『Black Radio』にて“The Consequences Of Jealousy”に客演した2012年ということになるのだろうか。2014年にはファッツ・ウォーラーの音楽を再解釈したジェイソン・モランの『All Rise: A Joyful Elegy For Fats Waller』にプロデューサー/ヴォーカリストとして関わっているし、さらに2016年にはマーカス・ストリクランズ・トワイライフの『Nihil Novi』でもプロデュース/ベース演奏を担っていた。

 そんな彼女は幼少期に両親のレコード・コレクションと共に過ごした時間を振り返り、「レコードを調べたり、ブルーノートのロゴを見るのが大好きでした。〈ジャズ〉という言葉はとても重いので私は避けていますが、自己表現をテーマとしたレーベルに所属できることにとても感動しています」とも喜びを語っている。その言葉の通り、彼女は長くマイペースな旅を通じて〈初めてレコードを作った22歳の時〉から常に自己表現を真摯に追求してきた。

 

鳥のように自由

 ベースをはじめとするマルチ器楽奏者/シンガー/ソングライターのミシェル・ンデゲオチェロ、本名ミシェル・リン・ジョンソンは68年生まれ。出身はまだ東西が分かれていたドイツの西ベルリンで、軍人でありサックス奏者でもあった父親の駐留に伴って彼女も数年はドイツで過ごしている。70年代に入って家族と共にヴァージニア州に移り住んで以降は、音楽に興味を持つようになっていく。10代になるとワシントンDCのクラブで演奏活動を開始し、同地のゴーゴー・バンドで腕を磨いたという。やがてハワード大学へ進んで音楽を学んだ彼女はNYへ移住。ベースやドラムマシーンを用いてライヴを行うなか、その頃にはすでにスワヒリ語で〈鳥のように自由〉を意味する姓を名乗り、彼女はミシェル・ンデゲオチェロになっていた。

 92年にはマドンナらがワーナー傘下に設立したレーベル=マーヴェリックの第1弾アーティストとして契約し、翌93年に華々しくメジャー・デビューを飾ることになるわけだが、それに先駆けて彼女が業界内で奮闘していた痕跡はいくつかの作品に残されている。まず、91年にGRPからデビューしたガールズR&Bグループ、ヴォイスボクシングのデビュー作『Voyceboxing』にて3曲でベースを弾き、そのうちの“Talk To Me”ではソングライターとしても採用された(同曲はミシェル本人もデビュー作にて“Outside Your Door”としてセルフ・カヴァーしている)。翌92年、キャロン・ウィーラーのアルバム『Beach Of The War Goddess』でベースを弾いたミシェルは、キャロンを経由して会った久保田利伸のアルバム『Neptune』でも1曲の演奏に参加している。さらに、この時期の彼女はリヴィング・カラーの新ベーシスト募集オーディションも受けていたそうだが(ベーシストのマズ・スキリングスが92年に脱退している)、幸か不幸か合格とはならなかったことで、無事にソロ契約を結ぶチャンスを掴んだというわけだ。

 初めてのアルバム『Plantation Lullabies』は93年10月のリリース。登場時から彼女はオープンなバイセクシャルで、そうしたアイデンティティーについても当時は無造作な宣伝文句のひとつになっていたように記憶しているが、何よりも受け手を圧倒したのは彼女の音楽性そのものだった。プリンス、マイルス・デイヴィス、ATCQという好みの反映はもちろん、スライ・ストーン、Pファンク、マーカス・ミラーからの影響は抑制の効いたクールなファンク感覚をミシェルに授けている。ヴィジュアル面のブランディングも行き届いたファッショナブルでスタイリッシュな雰囲気も90年代初頭のムードにマッチし、アルバムは賞賛をもって受け止められた。大半の楽曲を制作したデヴィッド・ギャムソン(スクリッティ・ポリッティ)はこの時期ワーナーのスタッフとして働くなか、ショウケースでミシェルと出会って魅了され、彼女を通じて70年代のソウルを再現しようとしたそうだ。

 ともかく、デビューした〈有望新人〉はそこから多彩な大物との手合わせを経験していくことになる。94年にはレッド・ホット・オーガニゼーションのチャリティー盤『Stolen Moments: Red Hot+Cool』にハービー・ハンコックとの共演曲“Nocturnal Sunshine”で参加。また、マドンナは『Bedtime Stories』収録の“I’d Rather Be Your Lover”でベース演奏とラップに彼女を招いている(告訴問題の起こった2パックのパートを削除して急遽ラップを頼まれたエピソードも有名だろう)。他にもギャング・スターのグールーによるジャズ・ラップ企画〈Jazzmatazz〉や、マーカス・ミラー、ボニー・ジェイムズ、さらにはローリング・ストーンズまで、90年代の彼女はベーシスト/ヴォーカリストとして幅広いフィールドで引く手数多な状態となった。そんななかで唯一のコマーシャルな成功となったのは、ジョン・メレンキャンプとのデュエット“Wild Night”(ヴァン・モリソンのカヴァー)であり、これは全米3位を記録。一方、ギャムソンはチャカ・カーンのアルバム『Dare You To Love Me』にミシェルを迎え、(アルバム自体はお蔵入りするものの)そこからは共演したアップ・チューン“Never Miss The Water”(96年)がクラブ・ヒットを記録している。

 

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枠を気にする必要のない旅

 96年には引き続きギャムソンと組んだ布陣でセカンド・アルバム『Peace Beyond Passion』を完成。これは孤高の表現と親しみやすさが絶妙なバランスで結びついた傑作で、R&Bチャート15位まで上昇、翌年のグラミーで最優秀R&B部門にノミネートもされるなど前作以上の評価を獲得した。ただ、同時代のR&Bとはテイストが異なり、かといってロックともジャズとも括り難い独創的な音楽性を売りあぐねたのか、次作へ向かうにあたってレーベル側からコマーシャルな作品作りを要求されたギャムソンはワーナーを退社し、プロデュースからも外されることになってしまう(皮肉にもその2作目がもっとも商業的に成功したミシェル作品となった)。

 そもそもミシェルはサード・アルバムにジャズ・ヴォーカル作品を望んでいたという話もあるが、レーベルの説得もあって方針転換し、結果的に届いた3作目『Bitter』(99年)はクレイグ・ストリートのプロデューサーでヴォーカルに重きを置いた内容となった。21世紀に入ってからはR&B/ヒップホップの勢いが支配的になった状況も踏まえ、レーベルの要請を受ける形で4作目の『Cookie: The Anthropological Mixtape』(2002年)は本人なりのメインストリーム感に溢れたコンシャスでハイパーなポップ作品に仕上げられている(同作は翌年のグラミーにノミネートされた)。恐らく彼女がメインストリームへの目配せを試みたのはここが最後だったのだろうが、それにしても〈9.11〉を想起させるリリックの問題などがあって延期を余儀なくされるなど、ミシェルにとってメジャーの市場は居心地のいい場所ではなくなっていったに違いない。翌2003年の『Comfort Woman』をもってマーヴェリックとの10年の契約は満了となった。

 で、そもそも存在しない枠を気にする必要のなくなった彼女の旅が、それ以降はより自由なものとなったのは言うまでもない。サンタナやベースメント・ジャックス、イェルバ・ブエナ、ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ、ソウライヴ、テレンス・ブランチャード、ザップ・ママ……と畑を問わずにあちこちのレコーディングに顔を出しつつ、ドリー・パートンのトリビュート盤『Just Because I’m A Woman: Songs Of Dolly Parton』(2003年)に参加したかと思えば、レディオヘッドのカヴァー企画『Exit Music: Songs With Radio Heads』(2006年)にクリス・デイヴと参加したり。2005年にはスピリチュアルなジャズ・アルバム『The Spirit Music Jamia: Dance Of The Infidel』を発表し、2007年にはセルフ・プロデュースでよりミクスチャー度合いを深めた『The World Has Made Me The Man Of My Dreams』をリリース。アフロもレゲエも呑み込んだ同作にはディアントニ・パークスやパット・メセニーも招いており、彼女のミュージシャンシップの高まりとインディペンデント精神の強さは結果的に(本人がどう捉えているのかはさておき)ジャズ(周辺)ミュージシャンとの親交をより濃密に深めていくことになった。そして、みずからは手の合うバンド・メンバーたちとマイペースにアルバムを重ねつつ、特に2010年代以降は、先述したジェイソン・モラン『All Rise: A Joyful Elegy For Fats Waller』やマーカス・ストリクランドの『Nihil Novi』のように、プロデューサーという立場からも多くの後進とコラボレート。一方では独立系アーティストのキャリアをサポートする〈インディペンデント・ミュージック・アワード〉の審査員もたびたび務めていたりする。そうしたポジションやペースによって本人の作品がかつてのようにセンセーショナルなものでなくなっていったのも確かだが、一定の水準を必ず越えてくる安定感と美意識の通底ぶりは言うまでもないし、実際のところ、ここに至るまでのさまざまな繋がりこそが今回のブルーノート・デビューへと彼女を導いたのもまた確かだろう。

 

新たな章の始まり

 というわけで、このたびリリースされた『The Omnichord Real Book』である。アルバムとしては2018年のカヴァー作『Ventriloquism』以来となり、しかも今回はすべてがミシェル自身の書き下ろしたオリジナル曲だ。プロデュースを担当するのは、ハリー・スタイルズやレオン・ブリッジズら多くのアーティストと共演してきたマルチ奏者/作曲家のジョシュ・ジョンソン。さらにはジェイソン・モラン、アンブローズ・アキンムシーレ、ジョエル・ロス、ジェフ・パーカー、ジュリアス・ロドリゲス、マーク・ジュリアナ、コリー・ヘンリー、近作で絡んだブランディー・ヤンガーやジョーン・アズ・ポリス・ウーマン、タンディスワ、ホットプレーツ……などなどジャズ界を中心に活躍する錚々たる顔ぶれがゲストとしてさまざまな参加している。ジャズの深い影響を受けながらも、ミシェルのルーツであるソウル/ファンク、アフロビートなどを織り交ぜ、それらを独自のサウンドへと昇華させた、彼女の先駆者としての新たな章の始まりを告げる意欲的な一作と言えるだろう。このように書くと敷居が高く思われてしまうかもしれないが、名うてのプレイヤーたちと作り出す奥行きのあるグルーヴにチャントやラップも混じったヴォーカルと印象的なフレージングが渦巻く、まさにミシェルならではの包容力と知性、優美さに満ち溢れた、単純に聴き心地の良い……恐らくは最高傑作と呼んでも差し支えないくらいの一枚となった。本人いわく「このアルバムは、古いものを新しい方法で見るやり方について表現した作品です」とのこと。彼女はさらにこう説明している。

 「両親が亡くなった時にすべてがとても早く動き出したんです。すべてのことが急速に変化し、自分自身に対する見方も瞬く間に変わりました。彼らの遺品を整理しているうちに、父が私にくれた最初のリアル・ブック(ジャズのスタンダード曲を集めた楽譜)を見つけました。私が聴いて学び、覚えて育ったものです。母は彼女の痛みを私に贈ってくれました。彼女の経験を特徴づけたメランコリーを私は背負っています。そして、人生というものについての経験は私をイマジネーションの中に入り込ませて、音楽を聴くように促してくれるのです」。

 創作活動や自己表現が、もしくは音楽そのものが旅だとしたら、彼女のそれはまだまだ続く。これからの旅の行方も楽しみにしておきたい。 *轟ひろみ

『The Omnichord Real Book』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、ジェフ・パーカーの2021年作『Forfolks』(Nonsuch)、ジョエル・ロスの2022年作『The Parable Of The Poet』、アンブローズ・アキンムシーレの2021年作『On The Tender Spot Of Every Calloused Moment』(共にBlue Note)、マーク・ジュリアナの2022年作『The Sound Of Listening』(Edition)

ミシェル・ンデゲオチェロの参加した作品を一部紹介。
左から、久保田利伸の92年作『Neptune』(ソニー)、マドンナの94年作『Bedtime Stories』(Maverick/Warner Bros.)、グールーの95年作『Jazzmatazz Volume II: The New Reality』(Chrysalis)、チャカ・カーンの96年作『Epiphany: The Best Of Chaka Khan Volume One』(Warner Bros.)、ローリング・ストーンズの97年作『Bridges To Babylon』(Rolling Stones)、スクリッティ・ポリッティの99年作『Anomie & Bonhomie』(Virgin/Rough Trade)、アラニス・モリセットの2002年作『Under Rug Swept』(Maverick)、2002年作『Red Hot + Riot : Music & Spirit Of Fela Kuti』(MCA)、2002年のサントラ『Standing In The Shadows Of Motown』(Hip-O)、ベースメント・ジャックスの2003年作『Kish Kash』(XL)、ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマの2003年作『Go Tell It On The Mountain』(Real World)、RHファクターの2005年作『Hard Groove』(Verve)、セラー・スーの2010年作『Selah Sue』(Because)、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの2012年作『Black Radio』(Blue Note)、アンソニー・ジョセフの2013年作『Time』(Heavenly Sweetness/Naïve)、ジェイソン・モランの2014年作『All Rise: A Joyful Elegy For Fats Waller』(Blue Note)、ミゲル・ミグスの2014年作『Dim Division』(Soul Heaven)、マーカス・ストリクランズ・トワイライフの2016年作『Nihil Novi』(Blue Note)、イベイーの2017年作『Ash』(XL)、ジーサティスファクションの2017年作『EarthEE』(Sub Pop)、アフロテックの2018年作『Stories』(Beyond Groove/Pヴァイン)、ダブ・トリオの2019年作『The Shape Of Dub To Come』(New Damage)、アンジェリーク・キジョーの2019年作『Celia』(Verve)、テリー・リン・キャリントンの2019年作『Waiting Game』(Motema)、ジョーン・アズ・ポリス・ウーマンの2020年作『Cover Two』(Sweet Police)、パット・メセニーの2020年作『From This Place』(Nonesuch)、レイクシア・ベンジャミンの2020年作『Pursuance: The Coltranes』(Ropeadope)、デイヴ・コーズの2020年作『A New Day』(Just Koz)、2021年のコンピ『Modern Love (Tribute To David Bowie)』(BBE)、ロバート・グラスパーの2022年作『Black Radio III』(Blue Note)、サム・ゲンデルの2023年作『Cookup』(Nonesuch)、ブランディ・ヤンガーの2023年作『Brand New Life』(Verve)、7月7日にリリースされるコンピ『The Endless Coloured Ways: The Songs Of Nick Drake』(Chrysalis)

 

DISCOGRAPHIC
MESHELL NDEGEOCELLO
ミシェルを知るための11枚
文/亜蘭済士

MESHELL NDEGEOCELLO 『Plantation Lullabies』 Maverick/Reprise(1993)

〈マドンナがプッシュする新人〉という触れ込みすら吹き飛ばすほどの、デヴィッド・ギャムソンやアンドレ・ベッツを共同制作に迎えた衝撃のファースト・アルバム。弾力のあるグルーヴと落ち着いた歌い口がクールで、以降もずっと関わるボブ・パワーのミキシングやDJプレミアの参加もあって、当時のNYヒップホップに通じる質感も。

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『Peace Beyond Passion』 Maverick/Reprise(1996)

デヴィッド・ギャムソンに全編のサウンド・プロデュースを委ね、同時期のニュー・クラシック・ソウルにも通じる生のファンクネスがグルーヴィーに泳ぎ回ったヒット作。〈レビ記〉や〈マグダラのマリア〉など楽曲のテーマも深さを増しつつ、聴き心地は実に親しみやすい。ビリー・プレストンやウェンディ・メルヴォワンも演奏に参加。

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『Bitter』 Maverick/Reprise(1999)

過去2作以上にシンガーとしての自身に主眼を置いた3作目。当時カサンドラ・ウィルソンやKD・ラング仕事で名を上げていたクレイグ・ストリートが新たにプロデュースを担い、密度の濃いヴォーカル作品になっている。演奏陣ではウェンディ&リサがより深くサポート。ジミ・ヘンドリックス“May This Be Love”のカヴァーもある。

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『Cookie: The Anthropological Mixtape』 Maverick/Reprise(2002)

タリブ・クウェリやレイラ・ハサウェイ、ファンカデリックのマイケル・ハンプトンらを迎えて明快なファンクのグルーヴに回帰しつつ、リリックはさらに舌鋒鋭いものに。ミッシー・エリオットのリミックスも含む布陣はメインストリーム寄りのようでいて、それすらも大きなウネリで呑み込む様子が痛快だ。新進のケイトーを共同制作者に抜擢。

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『Comfort Woman』 Maverick/Reprise(2003)

前作から約1年という過去にないインターヴァルの短さで登場した5作目。3つの〈Love Song〉を挿みつつ女性を取り巻く社会の状況や固定観念を狙い撃ったコンセプチュアルな内容で、ケイトーやクリス・デイヴ、ドイル・ブラムホール2世ら固定の演奏陣とプログレッシヴなファンクを聴かせている。マーヴェリックとの契約はここで満了。

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『The Spirit Music Jamia: Dance Of The Infidel』 EmArcy(2005)

数年越しの念願だったというジャズ・プロジェクトで録音された野心的な一枚。前作からのクリス・デイヴをはじめ、ニール・エヴァンスやブランドン・ロス、オラン・コルトレーンらを従え、憧れのカサンドラ・ウィルソンもフィーチャー。ボブ・パワーとの共同制作によってモダンな空気感を表出している点にも注目だ。

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『Devil’s Halo』 Mercer Street/Downtown(2009)

『The World Has Made Me The Man Of My Dreams』(2007年)を経てジャズの旅から帰還(?)。ディアントニ・パークスとクリス・ブルース、キーファス・シアンシアというシンプルな編成でロック風味も強いバンド・サウンドを感情豊かに聴かせる。後の『Ventriloquism』に通じるレディ・フォー・ザ・ワールドのカヴァーも興味深い。

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『Weather』 Naïve(2011)

仏ナイーヴへ移籍を果たしての通算9作目。前作と重なる演奏陣で取り組みつつ、大御所のジョー・ヘンリーがプロデュースを務めた今回は比較的フォークやロックの色合いも濃い曇り気味のオルタナ感でまとめられている。レナード・コーエン“Chelsea Hotel”、ソウル・チルドレン“Don’t Take My Kindess For Weakness”も披露。

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『Pour Une Âme Souveraine A Dedication To Nina Simone』 Naïve(2012)

タイトルが示す通りのニーナ・シモンに捧げた一枚で、題材に合わせてジャズ・ヴォーカルの風情も濃厚に漂う。“Please Don’t Let Me Be Misunderstood”や“To Be Young, Gifted And Black”などの名曲を、リズ・ライトやシニード・オコナー、ヴァレリー・ジューンらゲストの声も借りながらソウルフルに現代の歌として蘇らせている。

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『Comet, Come To Me』 Naïve(2014)

『Weather』からの気負わない流れを汲みながら、ジェビン・ブルーニら馴染みの演奏陣としなやかに作った印象の11作目。ここ数作と比べればオーガニックなソウル感覚への揺り戻しもありつつ、レゲエもファンクも骨太なベースと温かい歌声で聴かせる。フーディーニ“Friends”のカヴァーにはアンプ・フィドラーが参加!

 

MESHELL NDEGEOCELLO 『Ventriloquism』 Naïve(2018)

ミシェル自身が時代を共にしてきた80~90年代のソウル/R&B中心のカヴァー作。明快な大ヒットや著名曲がメインで、プリンス“Sometimes It Snows In April”やアルB・シュア!“Nite And Day”、TLC“Waterfalls”あたりは儚くも流石の心地良さ。“Tender Love”や“Sensitivity”などジャム&ルイス作のスムース名曲もマッチしている。