COLUMN

Miles Davis 『At The Fillmore: Miles Davis 1970 - The Bootleg Series Vol.3』

1970年、マイルスの“進歩(ファンク)と調和(ロック)

 日本では大阪万博が開催され、「人類の進歩と調和」をテーマに人々は新しい時代を迎えたことを実感していた1970年のこの時期、アメリカではマイルス・デイヴィスがロックの殿堂である東西“フィルモア”で強靭なエレクトリック・バンドを率いて暴れまくっていた。そんな模様をとらえた本作はマイルスの発掘ライヴ音源の商品化で好評の“ザ・ブートレグ・シリーズ”第三弾。70年6月に“フィルモア・イースト”で行われた4日間のライヴを記録したアルバム『マイルス・デイヴィス・アット・フィルモア』のパフォーマンスを編集なしでフル収録。公式では未発表となっていた音源をプラスした100分を超えるエクスパンデッド版になっており、またボーナス・トラックとして、同じく公式では初登場となる4月の“フィルモア・ウェスト”での3曲《パラフェルナリア》《フットプリンツ》《マイルス・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン》の計35分近くの未発表音源も加わる究極のライヴ・ドキュメント4枚組。 

MILES DAVIS At The Fillmore: Miles Davis 1970 - The Bootleg Series Vol.3 Columbia/Legacy(2014)

 メンバーはサックスにスティーヴ・グロスマン、エレピはチック・コリアでオルガンにはキース・ジャレットというダブル・キーボード、そこに加え、エレクトリック・ベースはデイヴ・ホランド、ドラムスはジャック・ディジョネット、パーカッションにはアイアートというこの時期最高のリズム・セクション。マイルスの頭の中にはジャズの文字はなく、ファンク、ロック指向全開であり、それゆえ楽曲の切れ目がなく、長尺で、押し寄せる波のような怒涛の力演を繰り広げている。

 『ビッチェズ・ブリュー』以降のマイルス・ミュージックはその後変わりゆくジャズの運命さえも示唆する濁流のごとし。すべてを飲み込みながら、ハイブリッド化したサウンドを吐き続ける大河そのもの。あの時代、〈太陽の塔〉の向こうに見えていた音楽の“未来”はまさしくこの中に確かなものとしてあった。マイルス、再びここに“1970年のこんにちは”。

40周年プレイリスト
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