この不世出の天才ピアニストは、ジャズと共にバロック以降の鍵盤作品への探究にも才能を傾ける求道者だ。その過程で産み落とされていた、今こそ聴かれるべき音楽。作品の出版から250年を経て1994年に録音、約30年後に顕れたキースからの贈り物。偉大なる父の偉業を後世に伝え、自らも古典派を準備した作曲家であり、卓越したクラヴィーアの名手だったカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ。若きベルリン時代に書かれ、鍵盤作品史においても意義深い全6曲のソナタ集から、キースは原石たる作品そのものに蔵された感興をのみ引き出す。そこに横溢する精緻かつ風雅を究めた技がまとう静謐な透明感に身を委ねよう。