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【D.J.FulltonoのCrazy Tunes】Vol.3 ジュークとフットワークの違いとは?という疑問にそろそろ決着を

日本でもっともジュークを知る男が紐解く、日本の&世界のジューク最前線

 

日本のジュークが最近おもしろい、というのはややいまさらな話かもしれないけれど、多くのDJ/ プロデューサーが非常に表情豊かな作品を送り出しているのを日々見るにつけ、どうも気になって仕方ない……という編集部スタッフの勢いでスタートしたこの連載。いま日本のジューク・シーンはどうなっているんだろう?ということで、それを語ってもらうならこの人しかいない!と白羽の矢を立てたのが、関西を拠点にレーベル・Booty Tuneを主宰する日本でもっともジュークを知る男、D.J.Fulltono。 彼の視点を通して、いま知っておくべきジャパニーズ・ジュークの面々や海外のレジェンドの紹介、さらには自身がこれまでに体験してきたジュークにまつわるエピソードなども披露してもらいます。第3回は、担当編集もやんわり見て見ぬフリをし続けていたジュークとフットワークの違いについて……ありがたい!

 


 

どの音楽でもジャンル名の話になると、最近のクラブ・ミュージックは細分化しすぎていてややこしいという意見が必ず出ますよね。僕個人としては、ジャンルはどんどん細分化されてほしい。なぜならDJにとっては欲しい音を探しやすいし、レコード屋も棚を整理しやすい。でも、その音楽の本質からブレていかないように、もともとのジャンル名はどこかに残しておいてほしいです。たぶんそれがジュークって言葉なんだと思います。

〈ジュークとフットワークってどう違うの?〉と頻繁に訊かれます。DJスピンは、ジュークとフットワークに境界線はないと言っていました。つまり、この曲がジューク、この曲がフットワークという明確な分け方ができないんです。

ではそもそもなぜ2つの呼び名があるのか。
〈フットワーク〉なんて呼び名がなかった時代、みんなその音楽を〈ジューク〉と呼んでいて、確かDJディーオンやDJファンクなどのゲットー・ハウス勢もみんなジュークという言葉を使っていたと記憶しています。ゲットー・ハウスといえば女性がお尻を振る通称〈ボビング〉という踊りが代名詞でしたので、当初ジュークはお尻のイメージが強かったんです。僕のレーベルもBooty Tuneって名前ですし、フランスにも古くからやっているブーティー・コールっていうレーベルがあります。

これが初期ジュークに強かったイメージ

 

でも実はボビングだけじゃなくて、皆さんご存知の足を素早く動かすダンス〈シカゴ・フットワーク〉を踊る人も昔からシカゴにはたくさんいたみたいです。

2003年のフットワーク・ダンサー。ジュークもフットワークも同じだった時代

 

要約すると、テンポに合わせて反復しながらお尻を振ったり普通に踊ったりするパーティー・ミュージックが〈ジューク〉。
そしてそのジュークのなかに潜む、足を素早く動かしたくなる謎のグルーヴ――これがフットワークと呼ばれているもので、具体的に言うと160BPMとその半分の80BPMの間をフリースタイルで踊るものがそれ。ヨーロッパではそのフットワークに注目し、ジュークとは一線を画した新たなアプローチとして〈フットワーク〉をジャンル名として提唱しはじめます。

これは僕が思うに、ヨーロッパのクラバーのなかには、ジュークの昔のイメージであるお尻のダンスや下品な声ネタが生理的に受け付けないって人も実際にいるので、そのイメージとフットワークを切り離したいからあえてジュークという言葉を使わなかったのかなあと。

でも昔からこの音楽が純粋に好きなリスナーにとって、フットワークっていう呼び名はピンポイントすぎるし、そして何よりパーティー・ミュージックとしての本来のジュークを切り離したくないという思いがありました。それで現時点では〈ジューク/フットワーク〉という名称になっているんだと思います。

あと、ちょっと理屈っぽくなるけど、ヨーロッパのトラックメイカーはシカゴのフットワークなグルーヴを採り入れようとしているけど、ヨーロッパにはフットワーク・ダンサーはいないので、一般のパーティー・ミュージックとして踊れるよう曲に改良を加えます。でもそれって結局フットワークをジュークに戻してることになるんじゃないかなあと思ったりします。

まあ実際は、そこにダブステップやジャングル、テクノといった要素が加わっていたりするので、いわゆるジュークとは別のおもしろさはあるのですが、フットワークらしさはほとんど残っていないのに、ジャンルがフットワークというのは矛盾しているなと。

なんだか硬い話になってしまったので、最後に、僕が好きな曲を紹介します。今回のテーマに合わせて僕の独断で付けたマークも参考にお楽しみください。

 

1. DJ SLUGO - 114799
(2001年作『Born Ghetto - From My Hood To Your Hood』収録)

JUKE度: ★★★
FOOTWORK度: ★★★
ゲットー・テックが流行った2000年頃に、RPブーDJスラゴに渡した曲を、スラゴが勝手に自分の曲としてリリースしちゃったことで有名な超ヒット曲。当時はジュークだと思って聴いていたけど、いま聴くとイントロとか完全にフットワークですね。

 

2. EQ WHY - What You Do
(2012年作『Equalized』収録 ※iTunesページはこちら

JUKE度: ★★
FOOTWORK度:
★★★★★

トラックは完全にバトル系フットワークだけど、タテ乗りでブチあがりたい気持ちにもさせてくれるので、僕的にはジュークでもあるかなあ。

 

3. AFRICA HITECH - Out In The Streets
(2011年作『90 Million Miles』収録 ※iTunesページはこちら

JUKE度: ★★★
FOOTWORK度:

この曲はみんなよく知ってると思います。ヨーロッパでフットワークって言葉が広がりはじめた時に出たので、後にこのビートのオマージュ作品がたくさんリリースされました。意見は分かれるかもしれませんが、これはフットワークっていうよりジューク、もしくはそれ以外のハメ系要素がありますね。

 

4. THA POPE - Bob That Back Down
(Unreleased)

JUKE度: ★★★★★
FOOTWORK度:

典型的なブーティー・ミュージック。この曲はシカゴでめちゃくちゃ流行ったっぽいです。試しに曲名でYouTube検索してみてください。女の子が部屋でこの曲をかけて踊ってる動画がクソほど出てきます。でもフットワーク色もほんのりあって、よく見ると動画の0:28に尻振ってる後ろでフットワークしてる人もいます。

 

5. DJ CLENT - Clent's Dog Catcher
(2014年のEP『Hyper Feet』収録 *iTunesページはこちら

JUKE度: なし
FOOTWORK度:
★★★★★

ジューク要素一切なしで一見ダウンビート。だけど、あきらかに走り出しそうな予感をキープ。フットワークな高速ビートが登場するまでずっとじらされてる感じ。結局じらされて終わるというこの感じがたまらない。何も起こらないフットワークもあるという一例。

 

PROFILE:D.J.Fulltono


 

 

関西を拠点に活動するDJ/トラックメイカー。ジューク/フットワークを軸に ゲットー・テック、エレクトロ、シカゴ・ハウスなどをスピンする一方、自身のレーベル=Booty Tuneを運営。パーティー〈SOMETHINN〉も主催する。また、プラネット・ミューやハイパーダブでリリースされたジューク・関連作品の日本盤特典ミックスCDを手掛けるほか、国内外の音楽メディアへジューク関連記事を多数執筆。2014年に5作目のEP『My Mind Beats Vol.01』をリリースしている。

★5月22日(金)〈SIXPACK vol.3〉@神戸・KINGS CROSS
★5月24日(日)〈SOMETHINN vol.10〉@大阪・CIRCUS
★5月30日(土)〈THE BOX〉@大阪・Compufunk Records
★6月13日(土)〈PAN Japan Showcase〉@東京・恵比寿LIQUIDROOM

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