INTERVIEW

イスラエルのジャズ界牽引するベーシスト、アヴィシャイ・コーエンが新しいトリオでの制作や新作『From Darkness』を語る

Photo by Yuka Yamaji

 

イスラエルのジャズ・シーンを牽引するベーシストのピアノ・トリオ最新作!

 ベーシストのアヴィシャイ・コーエンが、ピアノのニタイ・ハーシュコヴィッツ、ドラムのダニエル・ドールとの新しいトリオで、アルバム『フロム・ダークネス』をリリースして来日公演をおこなった。以前の、シャイ・マエストロマーク・ジュリアナという、いまや共に注目すべきソロ活動を展開する気鋭のプレイヤーたちとのトリオの、あの緊張感溢れるプレイを知る者にとっては、尚のこと、この新しいトリオに注目をしたことだろう。まずは、その新しいメンバーのことから話を訊いた。

 「がらっとメンバーが替わったわけではなく、元々トリオでの演奏は継続的にやっていて、ダニエルがまず1年半前に加わった。彼のドラミングは、まるでロック・ドラマーみたいだった。非常に音が大きくて、ジョン・ボーナムみたいだった(笑)。彼のドラムが加わることで、サウンドに特別な色合いがもたらされ、それで新しいアルバムを作ってみたいと思ったわけなんだ」

 “革新的”と形容されたマーク・ジュリアナのドラムに代わって、トリオに加わったダニエルのプレイがまずきっかけを作ったのだという。

 「マークのシャープなドラムに対して、ダニエルはヘヴィーなドラムを叩く。そして、ニタイはとても詩的でコンセプトを持ったプレイをするピアニストと言える。そこだけでも、いままでとは違うと思ったし、このアルバムも、このメンバーでなければ、新たに録音しようとは思わなかった」

AVISHAI COHEN From Darkness Razdaz/Warner Music Japan(2015)

 この言葉は、そのまま、『フロム・ダークネス』の世界を的確に表現している。シャープできめ細やかなドラムの代わりに、ヘヴィーでダイナミックなドラムが、そして、同じくきめ細やかで饒舌なタッチのピアノの代わりに、エレガントに揺蕩うようなタッチのピアノが、違う風景を作り出している。

 「いままでのアルバム制作では、特にコンセプトはなかった。そのときにしっくりいった演奏のドキュメントを記録したいという感じだった。だが、今回に関しては、このユニットが非常にスペシャルなものだと思えてきたので、これはぜひ録音すべきだと思った」

 興味深いことに、このトリオであろうが、アヴィシャイ・コーエンが他にやっているカルテット、セクステット、あるいはストリングスを入れたユニットであっても、基本は、トリオの作曲であり、しかもそれはベースではなく、ピアノから作られるのだという。

 「元々、私は作曲をピアノでやっている。だから、トリオ編成のために作っていることが多い。そこからストリングやホーンを入れることに発展していく。基本的には、ソロ・ピアノ・アルバムとして作ることもできる内容だが、自分として、トリオは強力な編成だと思っていて、たとえば、クリームポリスのようなロックのトリオもそうで、またクラシックにおいてもそうだと思う」

 慣れ親しんだピアノを彼が弾く姿は観たことはない。ただ、今回のトリオでのステージでベースを弾く姿は、そうしていることの喜びを観る者に感じさせるものであるのは確かだった。ベースという楽器に惹かれた理由をやはり尋ねてみたくなった。

 「それは分からないね(笑)。ピアノから、ロックンロールを始めるようになって、エレクトリック・ベースを始めた。それがきっかけだが、ベースが僕を選んだのではないだろうか。そして、ジャズを始めるようになって、自ずとダブル・ベースを弾くようにもなった。ベースは自分にとって最後の楽器だと思っている」

 彼の活動によって注目が集まることにもなったイスラエルのジャズ・シーンについても改めて尋ねてみた。自ら運営するレーベルRAZDAZでは、若いイスラエルの新しい才能を紹介しようとしている。

 「イスラエルは非常に小さい国だ。その規模に比べると、若いジャズ・ミュージシャンのコミュニティというのは大きいといえる。その中で、いまの若い人はネットで情報を得ることにも長けていて、いま世界のジャズで何が起こっているのかということにもとても注目をしている。ジャズ・クラブの数も少ないが、 そこでお互いに腕を磨くことをしている。だから、ジャズのコミュニティ自体は強固なものがある。それゆえ、この10年間、イスラエルのシーンは注目を浴びることになったのだと思う」

 

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