(左から)パスピエ・露崎義邦、Yasei Collective・中西道彦

 

Mikikiブログ〈ヤセイの洋楽ハンティング〉でお馴染みのYasei Collectiveが、自身のレーベル=Thursday Clubからの初作品となるニュー・シングル“radiotooth”をリリース! Mikikiではこれを記念し、ヤセイブログのスピンオフ企画として各メンバーをフィーチャーした短期集中対談連載〈ヤセイの同業ハンティング〉をスタートしています。メンバーそれぞれがいまバンドマンとして&同じ楽器を演奏するミュージシャン(同業者)として尊敬する人たちを招き、あんなことやこんなことをディープに掘り下げていく全4回!

とうとう最終回となる第4弾は、Yasei Collectiveの中西道彦と、間もなく東京・日本武道館公演を控えるパスピエ露崎義邦によるベーシスト対談です! L'Arc~en~Cielジャミロクワイなど共通する音楽的なルーツの話からパスピエの顔出しにまつわる理由まで、今回も長編となりました。饒舌な中西と冷静で着実な語り口の露崎による、熱きベーシスト・トークをお楽しみください!

〈ヤセイの同業ハンティング〉
★Vol.1 別所和洋(Yasei Collecitive)×芹澤優真(SPECIAL OTHERS)はこちら
★Vol.2 松下マサナオ(Yasei Collective)×伊藤大助(クラムボン)はこちら
★Vol.3 斎藤拓郎(Yasei Collecitive)×木幡太郎(avengers in sci-fi)はこちら

Yasei Collective radiotooth Thursday Club(2015)

 

多感な時期に聴いた音楽はいつになっても抜けない

――まずはお2人の出会いと、中西さんが露崎さんに対談相手として声をかけた理由を訊かせてください。

中西道彦(Yasei Collective)「初めてちゃんと話したのは今年の頭くらいだよね」

露崎義邦(パスピエ)「初めて会ったのは2年くらい前になるんですけど、新宿のMARZで。対バンをしたのが最初で、リハの段階で〈なんだこのバンドは!〉という衝撃を受けました。本番もフロアでがっつり観させてもらって。フロアでいちばん盛り上がってたのは僕なんじゃないかってくらい(笑)」

中西「ホントに!?」

露崎「ホントに。そこから(ヤセイの)動画を漁ったりして」

中西「嬉しいっす」

露崎「で、その時に観た動画でいちばん刺さったのが、“Goto”……ゴートゥー? ゴトウ?」

中西「ゴトウ!」

露崎「〈ゴトウ〉でいいんですね、どっちなんだろうと思って(笑)」

中西「ヘンなタイトルで……うちのタイトルは全曲ヘンなんだけど(笑)。一応これは人の名前で、よく行くライヴハウスの名物店長みたいな、ゴトウさんという人をイメージして」

露崎「そうなんですか。あと、ニーボディと青山で共演された時のライヴも観させてもらったり。それで今年の頭にお互いのバンドのリズム・セクション同士4人で、ちょっとお酒も呑みつつ新年会セッションみたいなことをやったんです。それ以来仲良くさせてもらってる感じですね」

中西「ですね、はい。(露崎は)年齢はちょっと下ですけど、いまグイグイきていておもしろそうだなと思って、直感で対談させてもらおうと思ったんです」

露崎「ありがとうございます」

――中西さんはパスピエに対してどんな印象を持っていますか?

中西「なんていうんですかね、すごくポップな音楽なんですけど、その裏の裏を見ると難解な部分があるんですよ。〈もっとそこ、簡単にできるんじゃない?〉というところをあえてやらない、みたいな印象があります」

露崎「ヤセイさんもまあ相当難解なことを……」

中西「うちは難解なことを、そのままやる(笑)」

露崎「(ヤセイは)すごく難解で、クセのある4人が音を出し合っている印象だったんですけど。いろいろ動画を観ていくと、ヴォコーダーを使っているとはいえ〈歌もの〉という意識が結構あるのかなと思っていて」

中西「そうなんですよ。インスト・バンドとして括られてはいるんですけど、(インストということは)あまり気にしていない」

露崎「そうですよね。(インストと歌ものの)割合も半々くらいですかね」

中西「そうですね。つゆさんが好きな“Goto”はヴォーカル、ヴォコーダーは入ってないけど、シングルになる曲は結構ヴォーカルをフィーチャーしていて」

――今回の“radiotooth”もそうですよね。バンド自身はあまりインストであることを意識はしていないと。

中西「僕はその意識はないですね」

露崎「曲作りの段階でインストか歌ものかを決めるんですか?」

中西「ほぼ。歌ものの曲はほぼ全部(斎藤)拓郎が書いていて……俺が書く曲もたまにある」

――改めて、お2人それぞれのプレイヤーとしてのルーツをお伺いしたいのですが。

中西「俺はレッチリですね」

露崎「レッチリなんですか! 僕がいちばん影響受けたのはジャミロクワイなんです」

中西「俺もジャミロはすごい聴いていたんだけど、それより前の高校時代に、NHKでやっていた〈サタデー・ナイト・ライヴ総集編〉みたいな番組でレッチリを観て。90年くらいの、彼らがいちばん尖ってた頃の映像で、〈なんだこの人たちは!〉と」

レッド・ホット・チリ・ペッパーズの90年のライヴ映像

 

露崎「フリーが青頭だった(髪の毛が青かった)頃ですかね?」

中西「青……くなかったかな。とりあえず裸だった」

一同「ハハハハハ(笑)」

中西「それで人の背丈くらいの高さでジャンプしてた(笑)」

露崎「ハハハハ(笑)。初めからベースだったんですか?」

中西「俺は3、4歳くらいからピアノをやっていて、ベースを始めたのは高校生くらいの頃」

露崎「レッチリが衝撃でエレべ(エレキ・ベース)を始めて」

中西「そうそうそう」

露崎「ヤセイを組んでから、シンべ(シンセ・ベース)とエレべを両方使うようになったんですか?」

中西「シンべを使うようになったのはいまのバンドを組んでからですね。ある日衝動買いしたちっこいキーボードをリハに持っていって、ブーッて鳴らしたら、〈これ結構いいんじゃない?〉と」

露崎「このバンドにシンべを入れたい、というのではなく、試しに持っていったら……みたいな」

中西「そう。目的を持って何かをするというよりかは、ワーッとあれこれこれ試していくなかで残ったものがヤセイ(の音になる)って感じだから」

露崎「エレべとシンべの使い分けはどういった匙加減でやられているんですか?」

中西「うーん……そうね、難しいんだけど、シンべは基本的にオマージュとして考えていて。例えばジャミロも、“Little L”とか『A Funk Odyssey』(2001年)あたりになると、ほとんど打ち込みみたいになるでしょ。あれを聴いてすごいなと思って。カッコイイと思ったらやりたくなるの。で、やってみただけ(笑)。俺もジャミロはめちゃめちゃコピーしていて、1枚目(93年作『Emergency On Planet Earth』)から3枚目(96年作『Travelling Without Moving』)までは全部コピーした。初代ベーシストのスチュワート・ゼンダーのプレイがカッコ良くて、そのままやりたくなっちゃうんですよね(笑)」

ジャミロクワイの93年作『Emergency On Planet Earth』収録曲“Emergency On Planet Earth”

 

露崎「ハハハ(笑)。雑食的に、いいなと思ったら採り入れるんですか」

中西「すごい雑食だと思う」

――露崎さんもジャミロクワイがルーツということは、やっぱりロックというよりはファンク、ソウルのほうが……。

露崎「そうですね。もともとはL'Arc~en~Cielがきっかけでベースを始めたんですけど、そこからいろいろ聴き漁っていくうちに洋楽へ行って、高校に入ったくらいの頃にジャミロだったり、アース・ウィンド&ファイアシックといったファンク系のものを聴くようになったんです。やっぱりその頃に聴いていた音楽がバックボーンとしてあるのかなあという気はします」

アース・ウィンド&ファイアの81年作『Raise!』収録曲“Let's Groove”

 

中西「多感な時期に聴いた音楽はいつになっても抜けないよね。年齢は違うけど、ベースを始めた頃に聴いていたものが近い。俺もレッチリの前はラルクを聴いていたし」

――tetsuの影響力もありますか。

※L'Arc~en~Cielのベーシストでリーダー。現在はtetsuya名義で活動

中西「高校の文化祭でやらなきゃいけないんですよ(笑)」

――やらなきゃいけないって(笑)。

中西「tetsuさんはすごいと思う。いまだにすごいもん。tetsuさんのベース・ラインはあんまりペンタトニックじゃなくて、すごくダイアトニックに忠実で、聴くたびに〈そこ行きたいよね〉と思う。あとグリスのやり方なんかもいまだに影響を受けているし」

※グリッサンド。弦を押さえたまま指を他のフレットへ滑らせるテクニック

露崎「プロデューサーの岡野(ハジメさんの存在も大きいんですかね」

※L'Arc~en~Cielの作品プロデュースを長きに渡って務めているプロデューサーで、ベーシストでもある。他にもエレファントカシマシPOLYSICSMUCCら数多くのアーティストのプロデュースを担当

中西「たぶんそうだと思う。でも最初から上手かったんだろうね。“Blurry Eyes”(ラルクの94年のシングル)の時から上手かったもん」 

露崎「その時代から聴いてらっしゃるんですね」

中西「でもそれは後追いだけどね」

――いまパスピエをやっているうえで、先ほどおっしゃったようなファンクなどのルーツはフレージングなどに影響していますか?

露崎「そうですね。レコーディングをやっていて、そういった(ソウル/ファンクの)ビートになると、エンジニアさんやメンバーから〈そっちは得意そうだね〉と言われたりしますね。まあいろいろな音楽を聴こうという姿勢はもちろんあるんですけど、根本にあるのはそこかなという気はしています」

――今年はいわゆる日本のロック・バンドのなかにも、ダフト・パンク『Random Access Memories』以降というか、ファンクの流れが入ってきたこともあってベーシストに焦点が当たっているイメージがあります。

露崎「確かにそうですね」

中西「ベーシストがそもそもちょっと脚光を浴びているような気がしないでもないんです、最近。どうですか?」

露崎「ここ最近はそうですね。KenKenさんやハマ(・オカモト)くんなどベース・ヒーロー的な方がいろいろと活躍してらっしゃいますし」

――パスピエのベーシストとして意識していることは?

露崎「やっぱり僕らは歌ものをやっているので、そこはいちばん大事にしている部分ではありますね。個人的にはファンクとかダンス・ミュージックが根本にあるし、自分の持っているものを活かすことも大事なんですけど、それ以上にパスピエのカラーにどれだけ染まれるかというところを考えてやっていますね」

中西「でも結構そっち(ファンク)に寄ってない? 俺はそれがカッコイイなと思うんだけど」

露崎「ホントですか?」

中西「わりと横ノリ系が多いというか。しかもそれをバンドっぽくやっているのが2015年的な視点から見てすごくいいなと思って」

パスピエの2015年作『娑婆ラバ』収録曲“裏の裏”

 

露崎「バンド感というのは意識していますよね。ある種、バンドでは再現不可能なんじゃないかというところを再現しているというか」

中西「(ヤセイの場合だと)人ができないことをまずやろうっていう、それがモチヴェーションになっている部分が少なからずある。やりたいと思ったこと(プレイ)を、そのままやれるように。うちの拓郎がソフトで〈なんだこれ〉みたいなフレーズを打ち込んだデモを持ってくるんですけど、それをわりとそのまま再現したりしていて」

露崎「作曲者からの、他のパートへの提示はあるんですか?」

中西「それがもしダサかったら完全にぶった切るんだけど、〈これいいじゃん〉ってなると(どんなに難しくても)やる(笑)。妥協してそれっぽくやることはない」

 

ベーシストとして、メンバーに〈いいね〉と言ってもらえることの意義

中西「自分のなかでシンセ・ベースとエレキ・ベースの使い分けというのがもうわからなくなっていて。ヤセイとは別にZa FeeDoというバンドをやっているんだけど、どちらかしか持って行ったらダメと言われたらシンセ・ベース持って行くというくらい、エレキ・ベースを弾きたいという気持ちがあまりなくなっちゃって(笑)」

Za FeeDo“UBU”

 

露崎「ミュージシャンとしての出発点がピアノだから、持ち替えがすごくシームレスなんですかね」

中西「やっぱり鍵盤を弾くなら弾くで、あまり半端なことはしたくなくて。同じスタイル……という人はなかなかいないと思うんですけど。でも最近ちょっと増えてきてる、シンセ・ベースの人が」

露崎「確かにそうかもしれないですね」

中西「チッ!と思って見てる(笑)」

露崎「ハハハ(笑)」

中西「そういう人への当てつけでもあるんだけど。これはたぶん普通のベーシストには弾けないから。〈なんだこれ〉って感じになっちゃうと思う」

露崎「エレキ・ベーシストが弾いている鍵盤プレイというのではなく、両方ちゃんと弾ける人という印象がすごくありますね」

中西「最終的にはどっちでもいいんだけどね(笑)」

――それこそMikikiのヤセイブログでは中西さんはティム・ルフェーヴルを紹介していましたが、速弾きのような派手なプレイではなく、サウンドの独創性のほうを大事にしているのでしょうか。

中西「それはそうですね。でもティムは本当にベーシストなんですよ、エレキ・ベーシスト。まあウッド(・ベース)も弾くけど。あの人のエレキ・ベースの音はもう〈ティム〉というか。あれにはすごく影響を受けているんですけど、僕にはどう弾いてもあの音は出ない。でも、どう弾いても出ないという時はシンべとリング・モジュレーターがあると安心なんです。あのへんのNYの人たちはリング・モジュレーターをすごく使ってるんですよ。本人も言っていたけど、LAなどでのギグで使うと、ヘンな音がするからみんな〈なにその音?〉みたいなになるんだって。でも日本ではSUGIZOさんあたりが普通にずっと前から使っていたり、意外と使ってる人はいるんですよ」

※シンセサイザーやギターで使われる、ざっくり言うと音を金属的な質感に変えるエフェクター

SUGIZOの2011年ソロ・ツアーのライヴ映像

 

――露崎さんは、音作りの面で常にこだわっている部分は?

露崎「そうですね、こだわりとしてはやっぱり、エレキ・ベースの良さのいちばんオーソドックスな部分をいかに最大限に発揮できるかを考えていますね。まあフィルターなどを使ったりはするんですけど……他のメンバーにいいねと言ってもらえることの喜びが大きいので」

中西「すげえわかる、それ」

露崎「まあベーシストあるあるかもしれないですね」

中西「やっぱそうなんだね。ベーシストはどうしてもそうなっちゃう」

露崎「他のプレイヤー、メンバーが演奏していて気持ち良い、歌いやすいと言ってもらえるのは嬉しいことなんで」

中西「最終的にいちばんそういう状態が落ち着くような気がする、ベーシストは」

露崎「ベーシスト的にもカッコイイですよね、パートの本来の意味というか」

――もちろん自分がこういう音を鳴らしたいというのももちろんあるけれども、最終的にはバンドとして、曲としていちばん良い形になった時がいちばんと。

露崎「自分のアプローチも失くさないようにしつつ、ただそこに執着しないようにはしていますね。こだわりがありすぎると全体が見られなくなることもありますし。そうならないために、〈これは違うね〉と(他のメンバーから)言われたら良い意味ですぐ折れる。他のパートやヴォーカルに対するベースのヴィジョンが以前より見えるようになってきたのかなとは思います」

中西「俺も、一応ヴォコーダーを歌ものと踏まえると、ヴォコーダーのレンジや位置を鑑みてベースはこう弾いたほうがいいんじゃないかとか考えますね」

露崎「ヴォコーダーになってくると難しいですね」

中西「普通の歌と違うからね。俺、本当は歌ものがめちゃめちゃ得意なんですよ。でもヴォコーダーを歌ものとして演奏するというのは結構大変。でも俺は歌ものとして演奏している部分がデカイ」

露崎「生の歌ものバンドとヤセイとではフレーズなどを変えるんですか?」

中西「自分ではまったく意識していない。常に何も考えないようにしてますね、感覚で出すようにしてる。でも(ヤセイでは)やっていくうちに、どんどん曲のアレンジが変わることがよくあるんですよ。そういうのってある? 例えばライヴ・セットになった時とか。ヤセイは結構変えちゃうんだよね」

露崎「あ、そうなんですね。ライヴ・エディットというか」

中西「うーん、ライヴ対応ってわけでもないんだけど」

露崎「でもうちのバンドも、ウワモノ楽器はだいぶ重なっていたりするので」

中西「あ、確かにそうだね。(ライヴで)どこをどう弾くか、みたいな?」

露崎「ありますね。例えば鍵盤のパートがなくなったぶん、ベースは音を足したり引いたり、みたいなことが多少ありますね」

――ヤセイはライヴだとインプロヴィゼーションの要素が入ってくるんですか?

中西「インプロが入ってくる部分ももちろんあるんですけど、やってるうちにどんどん変わっていっちゃう」

――単純にアレンジとしてこっちのほうがいいんじゃない?みたいな。

中西「そうですね。曲が出来上がった時はこれがベストだと思っていても、自分のなかでのベストはどんどん変わっていくので」

露崎「それ、例えばツアー中でも変わっていっちゃうんですか?」

中西「ツアー中に結構変わるんだ。ツアーの1本目は演奏がちょっとブワッとしてる。で、ツアー終わるとギューッて感じになる。同じ曲をやっていても、インプロの要素が入っていない曲でも、ツアーの1本目と30本目とでは全然違う……んじゃないかなと。少なくともやっているほうはそう感じてる」

露崎「30本やると結構変わりますよね、絶対。僕らはそこまでの本数のツアーはやったことないんですが」

――先ほどリング・モジュレーターの話が出ましたけど、中西さんのエフェクト使いはかなり凝っていておもしろいものが多いなあと思います。

中西「俺、生ベースをどう何を弾くというよりかは、こう言ってはあれですけどサンプリング的な感じで考えていて。だから俺はプレべ(プレシジョン・ベース)を使ってるんだと思います。プレべって指を離した時に独特の音がするじゃないですか。あの音がただ欲しいというサンプリング的な意味で使ってる。あとオクターヴァーをめちゃめちゃ使うのも、オクターヴァーを踏むと、ヒップホップのサンプリングで聴けるような録った音をちょっとピッチ落として使ってる感じが出るので、そういう音が欲しくて使っていたり、シンセ・ベースも同じようにどこかで聴いたようなシンセ・ベースのパートが欲しかったり、パワーが欲しい時に使う。リング・モジュレーターもそういった感じで」

――自分のなかでの〈これ〉というのを再現するためというか。

中西「ヒップホップがすごい好きで、そればかり聴いてる時期もあったぐらいだから」

露崎「さっき言っていた、かつて聴いていたものへのオマージュだったりもするわけですか」

中西「そうですね、それはすごいありますね」

露崎「“SUNDAY”の真ん中でリフを弾いてるところがあるじゃないですか。あれはオクターヴァーですか? すごくおもしろい音がしてるなと思っていたんです」

Yasei Collectiveの2011年のシングル"SUNDAY"

 

中西「あれは何を使ってたっけ……リング・モジュレーターをちょっとかけたり、オクターヴァーもかけてる。基本的に俺はそんなにフィルターを使わなくて、オクターヴァーとリング・モジュレーター、あとディレイ。でもリング・モジュレーターも最近全然使わなくなった。足元にはディレイ2個と、オクターヴァーが3個と、歪み(系のエフェクター)がいま1個かな」

露崎「オクターヴァーが3個もあるんですね(笑)」

中西「ね(笑)、すごいよね」

露崎「使い分けてるってことですよね?」

中西「使い分けてる。あの茶色いのが好きすぎて、家に5個くらいある」

一同「ハハハハハ(笑)」

中西「あれは和音を入れたりとかすると、ちょっと音が濁る。俺はマッドリブがすごい好きなんだけど、彼はレコードから(音を)取って、安いサンプラーを使ってピッチをガンガン落として、ヘンな歪みっぽいというかグシャッとしたエラー感のある音を作っていた。そういうのを聴いていたからあまり綺麗にかかるエフェクターが好きじゃなくて。そういう意味では、つゆさんの、そのお高い感じの……」

マッドリブがブルー・ノート楽曲を取り上げた2003年にリミックス集『Shades Of Blue』収録曲“Slim's Return”

 

一同「ハハハハ(笑)」

露崎「良さげなやつ(笑)」

中西「良さげなやつは、あまり好きじゃなくて。俺のシンべもNovationのそんなに高くないやつ。同時に鳴らした別のシンセを重ねているんだけど、Novationのベース・ステーションはいつも使っている」

露崎「これベース・ステーションなんですね」

中西「そうそう。ベース・ステーションはいいんですよ、すごく軽薄な音がして(笑)」

露崎「それを、ダブルで録ってると。すごく太い音だから、きっとリッチなやつを使ってるのかなと思っていました」

中西「いやいやいや、それはもう使い方。俺が使ってるベース・ステーションは、TB-303というシーケンサーの音が出せるように、というコンセプトのもとで出来たという、その始まりからしてオマージュなんですよね。俺もスティーヴィー・ワンダーが弾くようなリッチで太いシンべも好きなんだけど、言い方は悪いけど80s~90sのチャカ・カーンフィル・コリンズあたりのチャラチャラした時期あるじゃないですか(笑)、自分が生まれた時期というのもあってかその時代の音がしっくりきちゃうんですよね。そういう感覚を排除しちゃいけないと最近思っていて。スティーヴィーの『Innervisions』(73年)でのブーン!みたいな音もカッコイイし、チャカ・カーンの『Naughty』(80年)ってアルバム、知ってる?」

露崎「はい」

チャカ・カーンの80年作『Naughty』収録曲“Move Me No Mountain”

 

中西「『Naughty』は全部生演奏で録られたアルバムで、超名盤だと思うんだけど、その後はチャカチャカとすごい打ち込みのサウンドになっちゃって……どうしちゃったの、みたいな(笑)。だけど、どちらがしっくりくるかと考えると、どうしても80sの誘惑、あの軽薄さの誘惑のほうで。それを自分のなかで何とかしようと、憧れだけではなく自分のルーツをちゃんと踏まえてやらなきゃいけないなと思った時に、あの音がすごくハマる。でも、いろいろ理由付けするとそうなったというだけで、まあ、あまり何も考えてないです(笑)――ところで、フェンダーを使ってるんだよね」

露崎「そうですね」

中西「Sunburstのジャズべ(ジャズ・ベース)は使うのを止めたの? 使ってるんだっけ?」

露崎「あれは使ってますね」

中西「また別のやつ?」

露崎「使っていたやつをレリックしたんです。リペア(修理屋)さんにボロボロにしてくださいって言って」

※使い込んだような傷や剥げた塗装を再現すること

中西「そうなんだ」

露崎「昔からSunburstだけは使わないと思っていたんですよ、見た目的な意味で」

中西「渋すぎるから、みたいな?」

露崎「いちばん使ってる人が多いかなと思って。何の気なしに(ベースを)いろいろ触っていた時に、〈この1本いいな〉と思ったのがSunburstだったんです。やっぱり音でしょ、と。で、今年の春くらいに見た目的に何かやりたいなと思いはじめて、それでボロボロに(笑)」