ヤセイの洋楽ハンティング

ジャンルレスだけど個性派。いまもっとも注目されるべきベーシスト、ティム・ルフェーヴル

こんにちは。ヤセイコレクティブによる「ヤセイの洋楽ハンティング」、第4回はベース/シンセ・ベース担当の中西がお送りします。

いろいろ紹介したいアーティストがあって悩みましたが、僕のヒーローであるベーシストを紹介したいと思います。その名もTim Lefebvreティム・ルフェーヴル)。

Timは第1回の〈聴いたらわかる! 唯一無二なスタイルを確立したドラマー、マーク・ジュリアナの観ておくべき映像たち〉第3回の〈ギター・トリオの新しい可能性をストイックに追求し続けるギタリスト、ウェイン・クランツ〉に貼ってあるYouTube映像にも登場する、でっかいベーシストです。

2000年代前半のUri Caine Trio『Bedrock: Plastic Temptation』やWayne Krantz Trioあたりから認知され始め、いまでは引く手あまたの彼ですが、ふつうの〈ベース・ヒーロー〉という立ち位置とは少し違います。

僕は速弾きとかハデなプレイよりかは、独創的なプレイや空気の作り方とかそういう部分に惹かれるのですが、Timはどちらかというとそっち側。フレージング、サウンドともにバッチリ影響を受けました。とくに2005年前後のKeith Carlock周りのYouTubeを見ていると、このトリオの円熟期とも言える時期でもあり、なんだかドロドロと混沌しているようでいて完全にコントロールされているというか、非常に聴き応えがあります。

ティム・ルフェーブルとウェイン・クランツを迎えたキース・カーロックの2005年のライヴ映像

 

上の動画の1:50~3:30あたりでのディレイの使い方なんかはまさに〈ダブ・ミックス〉ですよね。4:00台のワウの使い方もフィルター・テクノっぽくて、ただめちゃくちゃに踏んでいるわけではなく、とても有機的な使い方をしていることに気づきます。

イナタすぎるぶっといベースの音と、細切れにして順番を全部入れ替えたようなフレーズ、〈うわ! きた!〉というところでガッツリ踏むエフェクター! 上の動画ではエレハモ(エレクトロ・ハーモニックス社)のDeluxe Memory Manが大活躍してます。モーションブルー・ヨコハマでのWayne Krantz Trioのライヴでバッチリ見てきましたが、弾きながら足でグリグリとディレイタイムを可変させて、ストリングスみたいな音を出してました。あとで試してみたんだけど、どーしても再現できなかったなあ(笑)。ちなみにTimはめちゃくちゃナイスガイでした!

オクターバー、リング・モジュレーター、ディレイ、エンベロープ・フィルター……Janek Gwizdalaとのインタビューのなかでもオクターバーの使い方について、Jojo MayerJonathan MaronGroove Collective)らとアイデアを交換していたという言及がなされています。あと、リング・モジュレーターをLAでのギグで踏んだら、周りが〈What!?〉ってなったというくだりが大好き。

ベーシストのヤネク・グウィズダーラによるティム・ルフェーブルへのインタヴュー映像

 

HIP HOPやエレクトロ、ブレイクビーツやDJの2枚使い、ダブとか古い時代のロック、いろんな音楽のインプットを各自の解釈で落としこんだ結果がこのトリオのサウンドともいえますね。
Keith Carlockとの活動ではRudderもやばいです。

ラダー“Tokyo Chicken”の2012年のライヴ映像

 

Chris CheekHenry Hey、Keith、Tim というTop Notch達が好き勝手やるバンドということで、的確に好き勝手やってます。オクターバーでTB-303みたいなサウンドを出してます。Rudderはよりオマージュ的要素が強いので、リズム隊の引き出しを楽しむという意味でもとてもおすすめ。懐かしみのあるナマ音と、シンセ・ベースのようなエッジーなサウンド、そして全ての根底にあるゴン太のタイム感。

Louis ColeGenevieve Artadiのユニット、Knowerでもセミアコ・ベースが的確にぶっとい。

ノアーの2013年作『Let Go』収録曲“Paying The Price Now”

 

まさにゴムマリ。完全に持っていってます。CKYの8mmビデオみたいなクォリティーでこんなにブチ上がれるのは彼らだけですね(笑)。

さてそんなTimですが、近年だいぶ活躍の場を広げ、なんと「David Letterman Show」のハウス・バンドをやったり、Tedeschi Trucks Bandで来日したりも! マーク・ジュリアナ達とエッジーなジャムを繰り広げた次の日に、デレク・トラックスのスライド・ギターの後ろでベースを弾けるのは世界中探しても彼だけでしょうね(笑)。

本人はいたって自然体で弾いているのですが、共演するグループ(枠)によってそれがジェイムズ・ジェマーソンドナルド・ダック・ダンなどの正統派継承者そのものであったり、一方では〈古いレコードからのサンプリング〉といったようにも感じられたり――そのどれもがウソっぽくなく、本当にどこへ行っても〈いい感じ〉にしちゃう。実はものすごい〈ヤセイの説得力〉を持ってるプレイヤーなんだと思います。〈自分が何を弾きたいか〉ではなく〈音楽がベーシストに何を求めているか〉をプレイの中心にすえて表現できる稀有な人ですね。

 

おすすめCD

RUDDER Matorning Care(2009)

KNOWER Let Go Five One/Village Again(2013)

URI CAINE TRIO Bedrock: Plastic Temptation Winter & Winter(2009)

【プロフィール】
Yasei Collective

Yasei Collective (ヤセイコレクティブ)

2009年に米国より帰国した松下マサナオを中心に、エレクトロ、ジャズ、ロック、ヒップホップなどが融合されたNY音楽シーンのサウンドを国内で体現するべく結成された4人組。自主制作盤『POP MUSIC』のリリースし、都内を中心に全国各地で精力的にライヴを行うなか、2011年に初作『Kodama』を発表。2012年には〈フジロック〉などフェスやイヴェント出演をこなす一方、自主企画イヴェントでは柳下“DAYO”武史(SPECIAL OTHERS)、山本ムーグ(Buffalo Daughter)、Ovall、アンカーソングら多くのミュージシャンを招いて開催。2014年には国内外から11組のアーティストを迎えた『so far so good』を、2016年に自主レーベルのThursday Clubを立ち上げて最新作『Lights』をリリースしている。

美しい星