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ヌーディーマン

ANNABEL If Music Presents: By The Sea... And Other Solitary Places If/Ninja Tune(2015)

スモーキーで牧歌的なジャズ・サンプルの上に、ビリー・ホリデイが完全憑依したみたいな歌唱をふりかけ……。まるでワンダー“Look Out For Yourself”の続編をついに聴けたかのような感動に、ドップリはまってしまったこの一枚。ケンドリック・ラマーを軸にしたLA勢、ヴァリエーションの広がり続けるR&B、サウンド・オブジェ大喜利とビート~ハウス回帰の対比、〈トロピカル・ハウス〉や〈アフロ○○〉などかつてとは違った意味で出回っている言葉たちが、個人的に興味深かった2015年。晩酌のアテによく聴きました。

 

 

野村アリマサ

PRINS THOMAS Paradise Goulash Eskimo/BBQ(2015)

オンライン上でミックス作品自体は手軽に楽しめるようになった昨今、リリース/セールス共に縮小傾向にあるフィジカル市場にあって、3枚組のヴォリュームで本作が世に出た意味は大きい。肝心の内容もトッド・テリエのブレイクで注目されたノルウェー・ディスコの出自を辿りながら、2015年におけるみずからの立ち位置を幅広い選曲で炙り出し……。缶詰だけに賞味期限はすこぶる長いが、入手は早めのほうが良いかも。

 

 

林 剛

BLACK VIOLIN Stereotypes Universal Classics(2015)

黒人と弦楽器の組み合わせを色眼鏡で見る世の中に、アーバン・ミュージックの語法で立ち向かうヴァイオリンとヴィオラ奏者のデュオが、ラディカルな姿勢の本作でメジャー・デビューしたことは、〈Black Lives Matter〉のスローガンがなおも叫ばれる2015年ならではだった。メラニー・フィオナブラックソートファロア・モンチロバート・グラスパーらのゲストを効果的に使った制作者イーライ・ウルフの手腕も見事。そして、弦に込めるエモーションと変わりない主役のヴォーカル。この歌心を僕は買った。

 

 

Masso 187um

YG Blame It On The Streets Pu$haz Ink/CTE World/Def Jam(2014)

NWAとケンドリック・ラマーに2015年はお任せ、ってことなんでしょうか。先行曲“Twist My Fingaz”“I Wanna Benz”共にバッチリでしたが、結局ニュー・アルバム『Still Krazy』は2016年に持ち越しのようなので、それまではコレでも聴いて待ってます。DJクイックマック10らが参加した“Bicken Back Being Bool”のリミックスが何より最高。

 

 

松元かれん

CIRCA WAVES Young Chasers Virgin/HOSTESS(2015)

リヴァプール発、若さ溢れるキラキラなギター・ロックを奏でる4人組! 私の〈+1枚〉は2年連続で〈サマソニ〉に出演するなど、日本でも大注目された彼らのデビュー・アルバムです! 底抜けにキャッチーでシンガロングしたくなる楽曲たち、“The Luck Has Gone”のエモーショナルなギター・リフに何度ときめいたことか!  ブリティッシュ・ロックンロール・リヴァイヴァルの決定打と言っても過言ではないでしょう。この1年を振り返るとサーカばっかり聴いてた!

 

 

村尾泰郎

図書館 図書館の水源郷 MY BEST!(2015)

年間ベストを選ぶのは大掃除みたいで大変だ。何を入れて何を外すのか。この1年を代表する作品は?なんて考えはじめるときりがない。そんなとき、図書館の『図書館の水源郷』を聴くと心が穏やかになる。田中亜矢近藤研二イトケン宮崎貴士——4人の個性豊かな音楽家が6年ぶりに再会して奏でたのは、ずっと昔から知っていたような気にさせられる、親しみやすくて美しい〈みんなの歌〉。〈選ぶ〉なんてことは忘れて、ただ静かに耳を傾けていたい。

 

 

山口コージー

SCOTT WEILAND & THE WILDABOUTS Blaster Ear(2015)

まさか俺の〈+1枚〉を、いまこのような気持ちで聴き返すことになろうとは。2015年12月3日、突然の訃報で世界を悲しみに包んだスコット・ウェイランドのリーダー作だ。激しさとポップ感覚に溢れる演奏、そして精魂込めた歌唱が絶品! ディスターブドのジョンらと組んだアート・オブ・アナーキーでの活動や、ストーン・テンプル・パイロッツへの再復帰説も流れるなど、好調ぶりを窺わせていた最中なだけに、本当に悔やまれてならない。2015年の〈+1枚〉作品だって!? いや、俺は一生これを聴き続けるぜ!

 

 

山口哲生

まじ娘 Contrast EXIT TUNES(2015)

2015年にデビューした方から選ばせてもらおうと考えたときに、まず彼女の名前が浮かびました。ホリエアツシストレイテナー)作詞/作曲、みきとP編曲の“アマデウス”が目玉でしたが、個人的には“回らないトゥシューズ”など無機質な手触りの楽曲を歌う声も極上かと。本人が作詞/作曲した“end”は、昔システム・オブ・ア・ダウンのコピー・バンド(パートはドラム/ヴォーカル!)をしていたのもあり、良い意味で変態的!

 

 

山口智男

KOREY DANE Youngblood Innovative Leisure(2015)

ジャケ買いが大当たりした、25歳のシンガー・ソングライターによる一枚。エドワード・ホッパーっぽくも見えるアートワークは、レーベル仲間のハンニ・エル・カティーブが手掛けたもの。同じLA在住のシンガー・ソングライターでも流行のローレル・キャニオン一派とは違い、ロックンロールなハートを持っている点に惹かれた。カントリー風の曲もちょっとハードボイルド。ある意味、異端な存在だけに、ここで僕が推さないと! ジャケに感じるものがあったら、いまからでもぜひ。