OPUS OF THE YEAR 2015
[特集]2015年の100枚+
ゆく年くる年。ゆく音くる音。ゆきゆきて音楽——2015年もいい作品は山ほどあった!という毎度の感慨と共に素敵な新年を迎えたいものです。でも、まだ安心し……ないでください、ここで紹介する作品を聴かずして、新しい年はやって来ないですよ!
★Pt.1 【ディスクガイド】bounceの選ぶ2015年の100枚 1⇒25
★Pt.2 【ディスクガイド】bounceの選ぶ2015年の100枚 26⇒50
★Pt.3 【ディスクガイド】bounceの選ぶ2015年の100枚 51⇒75
★Pt.4 【ディスクガイド】bounceの選ぶ2015年の100枚 76⇒100
★Pt.5 改めて、2015年ってどうだった? bounce編集部スタッフによる座談会
★Pt.6 結婚、脱退、再結成、解散、訃報……2015年の音楽ニュース総まとめ!
★Pt.7 座談会からこぼれた2015年のトピックをより詳細に解説!
★Pt.8 リサイクル、リイシュー、コラボ、遺作などカテゴリー別に重要作を紹介!
ONE HUNDRED PLUS ONE
ライター陣の選ぶ2015年の〈+1枚〉
◆青木正之
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2014年に話題を集めたポスト・パンク・バンドのイーガルスやオート。その系譜に連なる男子4人組、ガール・バンドが放った初作は2015年で一番のインパクトでした。ミニマルな展開、狂気を孕んだヴォーカル、神経質なギター・ノイズがひと塊になって迫る緊張感は、ズバ抜けて凄かった! (アルバムには未収録ですが)ブラワンのハード・テクノをカヴァーするあたりのセンスはこの作品にも活かされていて、粗削りながらも聴くほどに増していく中毒性はまるでテクノのよう。
◆荒金良介
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前作『Earth Rocker』も素晴らしかったが、このアルバムも期待を裏切らない最高の出来映えだった。ブルース、ハード・ロック、ストーナー的な要素を持つ男臭いサウンドで、聴けばアドレナリン噴出のカッコ良さ。2015年を振り返ると、BABYMETALのワールド・ツアー(メキシコ、カナダ、ドイツ、フランス、スイス、イタリア)を目撃し、世界を相手に渡り合う彼女たちの勇姿、現地の反響の凄さにただただ驚いた。
◆池田謙司
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これは正直、度肝を抜かれた一枚。過去の成功で得た名声や音楽スタイルはひとまず置いといて、華麗なる進化をまざまざと見せつけてくれた。超一流の者のみが持ち得る視点、極上の質感はまさしくバリバリのアスリートです。例えるなら、いまの野茂がメジャーでノーヒットノーランをやっちゃうくらい凄いことだ……と、わけがわからないことを考えてしまうくらいの衝撃でした。この地点まで到達できるアーティストは現行シーンでも数名くらいでは!?
◆池谷昌之
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〈チンパンジーの反応するリズムは個体によって違うことがわかった〉という話をニュースで知り、なるほど、同じ霊長類のヒトもそれぞれハマるリズムがDNAに組み込まれているのかな、と妙に納得させられまして。ブロークンビーツのシンコペーションに出会ってから15年以上、ずっとヤラれっぱなしの自分もチンパンかと思いました。そんなわけで、ディーゴ先生にはずっとこのリズムの上で、ソウルフル&コズミックな音を奏でてもらいたいです。
◆一ノ木裕之
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普段書いているフィールドとは縁もゆかりもありませんが、リスナーとしてこれを推したい。曲名はおろかアーティスト名すら解読できずに、ほぼジャケのイイ顔頼りでタイの音楽を聴いてきたような俺のなまくらぶりをシバく、em入魂のタイ・リイシュー・シリーズだ(最新作のパイリン・ポーンピブーンは未聴なため、この編集盤を選びました)。〈よそ者のエキゾティシズム〉とか言われようとも、やっぱりここでしか聴けない音楽が鳴っていると思うわけです、ハイ。
◆稲村智行
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NWAの自伝的映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」がようやくの日本公開。運良く封切り前に観ることができ、これがまたウワサ以上の傑作で男泣き。そんなタイミングに嬉しすぎるSHM-CD仕様でこの88年作が日本盤化! エネルギッシュなサウンドに歯に衣着せぬラップ——当時夢中になったサウンドから力をもらうようにリピートしている。そして、ケンドリック・ラマーのグラミー11部門ノミネートという報が。2015年はコンプトンが熱かった。
◆上野功平
女性シンガー・ソングライターものが豊作の1年でしたが、本作での不器用で剥き出しな歌声にはとりわけ心が震えました。アーツ&クラフツ所属のテイラー・カークに熱烈なラヴコールを送ったそうで、レナード・コーエンやニック・ケイヴにも迫る渋い音世界を創出。血縁者(ジェーン・バーキンやシャルロット・ゲンズブール)のようなウィスパー・ヴォイスを期待すると、良い意味で打ちのめされるはず。2016年1月の初来日公演も楽しみ!
◆内本順一
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フェイム・スタジオでライヴっぽくレコーディングされた“Satisfy Me”のPVを観て一発でヤラれた、アラバマ生まれ、現在はナッシュヴィルを拠点に活動するシンガー・ソングライター。絞り出すような掠れ声のシャウトからパッションとエモーションが溢れ出ていて、身体が熱くなったのだ。ホーンやオルガンの鳴りも底の深い音響も最高で、このメジャー・デビュー盤には往年のサザン・ソウルのヴァイブが見事に甦っている。スワンプ風味から甘いバラードまで全曲素晴らしい!
◆カシワサン
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2015年末に届いたVP×タワレコのコラボ・コンピ第3弾。2000年から現在に至るまでをひと括りにしがちな風潮にケリを付けるべく(!?)、〈ゼロ年代のダンスホール〉に絞り、当時のヒット曲を〈クラシック〉として扱った一枚だ。クロニクスやジェシー・ロイヤルなどラスタ系が人気を集めている昨今。一定の周期で起こるルーツ・リヴァイヴァルは10年前にもあって、ここに収録されたシズラやケイプルトンはいま聴いてもやっぱり最高。ジョグリンも同様。時代を軽々と超える名曲たちにニヤニヤ。
◆金子厚武
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ごく個人的な話をすれば、2015年は久々のアルバムを発表したブラーやアッシュ、〈フジロック〉で来日したスーパー・ファーリー・アニマルズなど、自分にとっての青春時代である90年代後半に活躍したUKのバンドが、揃って動きを見せてきて印象的でした。なかでもこのアイドルワイルドの6年ぶりとなる作品と、それに伴い秋に行われた8年ぶりの来日公演は、間違いなくハイライト。2016年はリチャード・アシュクロフトの再起に期待したいです。