タワーレコード・スタッフがブレイク前のアーティストをピックアップし、総力をあげてプッシュする企画=〈タワレコメン〉に選出された作品から、 Mikikiが注目したアーティストをフィーチャーする不定期企画〈タワレコメンに迫りコメン〉。第5回は、2016年11月度の〈タワ レコメン〉に選出されたレモン・ツイッグスが登場です。それでは、レッツ・迫りコメン!
今年10月にデビュー・アルバム『Do Hollywood』を4ADからリリースし、ここ日本でもジワジワとファンが急増中のNYの兄弟デュオ、レモン・ツイッグス。ビートルズからトッド・ラングレン、あるいはアリエル・ピンクまでが引き合いに出される豊かな音楽的センス/テクニックはもちろん、ソフト・ロックとミュージカル音楽が合わさったような華やかで賑やかなサウンド、さらに演劇やスラップスティック・コメディの要素も採り入れた摩訶不思議な世界観、加えて衝撃的なヴィジュアル(主に弟くんですが/上記写真で左)も相まって、いまや第一線で活躍するファッション関係者たちも熱い視線を送っています。
すでにインディー・ロック界隈では話題騒然となっているレモン・ツイッグスですが、音楽ルーツが云々……といった予備知識を持たなくても楽しめる懐の深いポップさが最大の魅力。しかし、ディグればディグるほど出てくる彼らのエピソードの数々を知っておけば、その万華鏡サウンドをもっともっと味わい尽くせるかもしれません。ということで、今回は〈レモン・ツイッグスがいかにヤバいのか?〉を、5つのアングルから紐解いてみましょう。
1.〈新たなポップ・アイコン誕生!〉と呼ぶべき強烈な存在感
若かりし頃のジャクソン・ブラウンとヨーランディ・ヴィッサー(ダイ・アントワード)が同じフレームに収まっているかのような異物感――これが、筆者が初めてレモン・ツイッグスのアーティスト写真を見たときの印象でした。かのエルトン・ジョンは〈彼らのキテレツな感じにヤられたね〉と絶賛しています。
とりわけ、ヤンキーの息子を思わせるウルフカットにメイクを施し、上半身裸&サスペンダーという独創的なファッションの弟マイケル・ダダリオ(弱冠17歳!)の存在感が強烈で、その性を超越した佇まいは現代的でもあり、どこか70年代のグラム・ロック的でもあります。一方の兄ブライアン・ダダリオも19歳と若いですが、何かを悟ったような冷めた眼差しと、ウェスタン・シャツからタキシード・ジャケットまで着こなす伊達男っぷりがまたクール。彼らの新人離れしたポップ・アイコンぶりは、共に子役としてブロードウェイ・ミュージカルやTVドラマ、ハリウッド映画などで場数を踏んできたことと無関係ではないはず。
ここでぜひチェックしてもらいたいのが、アメリカ映画「People Like Us」(2012年/日本未公開)のワンシーン。クリス・パイン扮する主人公から、ギャング・オブ・フォーやジョイ・ディヴィジョン、そしてテレヴィジョンといったバンドのCDを薦められるマイケル少年のあどけない表情がキュートです。
2. ハイプを一蹴する空前絶後のライヴ・パフォーマンス
そしてヴィジュアルにも増して衝撃的なのが、レモン・ツイッグスのライヴ・パフォーマンス。ひとたび彼らがステージに立てば、チャック・ベリーとキース・ムーン(ザ・フー)が憑依したかのような鬼気迫る演奏と、子役出身というのも頷けるコミカルなアクションの連発でオーディエンスを圧倒してくれます。
9月末にアメリカの超人気TV番組〈The Tonight Show Starring Jimmy Fallon〉へ出演した際には、マイケルの執拗なスティック回しも含めて大きなバズを生んだのも記憶に新しいところ。同番組のハウス・バンドとして現場に立ち会ったクエストラヴ(ルーツ)は、〈俺はずっとレモン・ツイッグスみたいな奴らが現れるのを待っていた〉とツイートしていました。
dog.....i been waiting FOREVER for the world to see @thelemontwigs ------tonight #FallonTonight
— Questlove Gomez (@questlove) 2016年9月26日
残念ながらその動画は削除されてしまったので、ここでは“These Words”のスタジオ・ライヴをご覧いただきましょう。
いやはや、どうですか、この表現力! 一見ドタバタに見えてしっかり静と動を使い分けているマイケルのドラミングが破壊力抜群ですし、2分54秒あたりから飛び出すブライアンのギター・ソロは悶絶もの(ちなみに紅一点のベーシスト、ミーガン・ジーンコウスキはブライアンの彼女だそう)。この映像だけでも、レモン・ツイッグスが決してルックのおもしろさで話題になっているんじゃないということはご理解いただけるはずです。