INTERVIEW

モルゴーア・クァルテットの荒井英治が髙嶋政宏と激熱プログレ対談! ELPの名曲群をカヴァーした新作『Tributelogy』を語る

 

新作『トリビュートロジー』のリリースを祝して、“スターレス髙嶋”氏が降臨。
転調と変拍子の嵐の中で語られる熱すぎるプログレ愛。

 キング・クリムゾンをはじめとする70年代英国プログレッシヴ・ロックの名曲群のカヴァ・ワークで注目を集めてきた闘う弦楽四重奏団モルゴーア・クァルテット。『21世紀の精神正常者たち』、『原子心母の危機』に続く3年ぶりの新作『トリビュートロジー』は、アルバム・タイトルやジャケットが示すとおり、エマーソンレイク&パーマー(以下ELP)へのトリビュート作品である。元々は、昨年3月に亡くなったキース・エマーソンへのトリビュート作として企画されたものだが、結果的には年末に急逝したグレッグ・レイクへの追悼盤にもなってしまった。

モルゴーア・クァルテット Tributelogy コロムビア(2017)

 収録曲は、ずっとやりたかったという《タルカス》組曲を筆頭に、《トリロジー》や《ザ・シェリフ》、《悪の教典#9》組曲、そして、キースの葬儀でも流されたというキース晩年の楽曲《アフター・オール・オブ・ディス》など計9曲。《タルカス》もさることながら、圧巻は《悪の教典#9》か。ショスタコーヴィチの楽曲の演奏を主目的に結成されたモルゴーアの演奏は、鋭角的ビートとスピーディな展開を身上とするELP作品とは元々相性がいいわけだが、特に《悪の教典#9》では彼らの卓抜した演奏技術と表現力が最大限生かされた驚くべきカヴァ・ワークとなっている。

 全曲のアレンジは、いつもどおり、第一ヴァイオリン奏者にして超プログレ・マニアの荒井英治。また、ジャケット・デザインでも彼らは毎度唸らせてくれるが、『トリロジー』をモティーフにした今作もぬかりない。

 というわけで企画されたこの対談。荒井の相手を務められるのはこの人しかいないはず。スターレス髙嶋の異名を持つ日本唯一?のプログレ・アクター髙嶋政宏氏。『クリムゾン・キングの宮殿』Tシャツでがっつり決め、全身からプログレ・ビームを放射する髙嶋氏の口からは、プログレ愛に満ちた熱い言葉がとめどなく溢れ出るのだった。

髙嶋 モルゴーアの『21世紀の精神正常者たち』に敬意を表してこのTシャツを着てきましたよ。

――そういうプログレTシャツは普段から着てらっしゃるんですか。

髙嶋 普通に着てますね。趣味が飲食と、Tシャツとかのプログレ・グッズ集めだし。ライヴに行くたびに買うし、道歩いてても、プログレTシャツを着てる人に声かけたりします。マグマのTシャツ着てる人がいたら、いいですねそれ、って。

――髙嶋さんのプログレ狂ぶりは有名ですが、お宅では奥さんから苦情が出たりしませんか。

髙嶋 よく言われます。もっとノリのいい音楽はないの? とか。奥さんと箱根の温泉行く時、車の中でずっとクリムゾンの『The Road To Red』(CD21枚組ボックス・セット)とかをかけたりするし。

――髙嶋さんはやっぱりクリムゾンが一番好きなんですか。

髙嶋 音楽は全ジャンル聴きますが、一番はやっぱりクリムゾンですね。

荒井 でもプログレの最初の洗礼は、ピンク・フロイドの『アニマルズ』なんでしょう?

髙嶋 ええ、中1だったかな。犬の声をシンセでやってるのに驚いて、なんだこれ! って。当時僕はパンクに傾倒してて。同じ頃、クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』『レッド』も聴き、特に『レッド』で本格的にプログレにはまっていったんです。

――モルゴーア・クアァルテットとの出会いは?

髙嶋 ディスク・ユニオンに行った時、モルゴーア版「レッド」が流れてて仰天して。その時、店内モニターではR.I.O.(ロック・イン・オポジション)のライヴ・イヴェントの映像が無音でかかってたので、てっきりその音楽だと思ってR.I.OのDVDを買って家で観たら全然違うわけ。で、ちゃんと調べてから改めて「レッド」が入っている『原子心母の危機』を買いに行った。「レッド」のカヴァはいろんなロック・バンドがやっているけど、モルゴーア版が最高だと思ってます。

荒井 ほんとに!? ありがとうございます(笑)。クリムゾンはプログレの中で最も弦楽四重奏に合うと僕は思ってるんですよね。一番イメージがわく。特に『太陽と戦慄』から『暗黒の世界』、『レッド』あたりのモノクロームの世界はぴったり。

――ELPはどうなんですか。

荒井 次に合うのがELPですね。音楽が非常にテクニカルで、ヴィルトゥオーゾの世界だから。

――特にモルゴーアにはぴったりでしょう。ほとんどショスタコを弾いてるのと同じような感覚なんじゃないですか?

荒井 まあモルゴーアの場合は、なんでもショスタコになっちゃうんですけど(笑)。

◆◆◆◆◆◆◆

髙嶋 新作、素晴らしいです。もう1曲目の《アフター・オール・オブ・ディス》からして気合いが凄い。鬼気迫る感じっていうか。あれはキースの葬儀で流したんですよね。

荒井 ええ、葬儀に間に合わすため、あれだけは3月28日に録音したんです。メンバー全員のスケジュールの都合もあり、朝6時半に集まって。

髙嶋 本当に胸に突き刺さってくるようなサウンドで。キース・エマーソンへのレクイエムを聴いてるみたいな気持ちになる。ああ、もうキースはいないんだな…と。

――今回、以前からの念願だったという《タルカス》も遂に録音しましたが、これは編曲も演奏も大変な難曲ですよね。

荒井 録音自体は2日間ですが、編曲には8月から2カ月ぐらいかかりました。

髙嶋 《タルカス》も最近いろんな人がカヴァしてますが、やはりモルゴーア版が最高だと思いました。原曲ではクレッグ・レイクが歌っていた《スティル...ユー・ターン・ミー・オン》では、エリック・サティの《ジムノペディ》のフレーズが使われてて、すごく心地いいし。あと、僕はクラブで《聖地エルサレム》をかけたことがあるんだけど、《ホウダウン》とか《聖地エルサレム》とかもモルゴーアにやってほしいなあ。

荒井 実はどちらの曲も、今回候補には上がってたんです。

――髙嶋さんとELPの最初の出会いはどの作品ですか。

髙嶋 『展覧会の絵』でした。中学の先輩のバンドがELPのコピーをやってて。だから僕はしばらくの間、《展覧会の絵》って曲はキース・エマーソンが作ったと思っていた。ELPは、とにかくカッコいいバンドというイメージがありました。映像を見ると、キース・エマーソンがキーボードにナイフを刺してるし。デビュー作の頭に入ってた《バーバリアン》の衝撃も凄かった。

荒井 《バーバリアン》は元ネタがバルトークのピアノ曲なんですが、元ネタよりはるかにカッコいい。彼らがアレンジすると、クラシックぽさというか、アカデミック臭さが消えちゃうんですよね。

髙嶋 そうそう。難しいこと、一切ないんですよね。音楽理論とかわかんなくても、ただロックとして楽しめるし、とにかくハードでカッコいい。そのハードさを、今回モルゴーアのこのアルバムにも感じたんですよ。新しい扉を開けましたよね。前の2作も良かったけど、そこから一段違う扉を開けたっていう感じがします。早くライヴを観たいなあ。

荒井 6月に結成25周年コンサートをやるので、ぜひ。最初だけドビュッシーの曲をやり、あとは《タルカス》と《悪の教典#9》を全部やるつもりです。

 というわけで最後に、自分の棺桶に入れてほしいプログレ作品を5枚ずつ挙げてもらいました。

■荒井英治
・キング・クリムゾン『Islands』
・ELP『Welcome Back My Friends To The Show That Never…Ends~Ladies And Gentlemen』
ジェネシス『The Lamb Lies Down On Broadway』
ロバート・ワイアット『Rock Bottom』
サード・イアー・バンド『Third Ear Band』

■髙嶋政宏
・キング・クリムゾン『Red』
・同『In The Court Of The Crimson King 』
・同『Larks' Tongues In Aspic』
・同『Islands』
・同『Lizard』

 


LIVE INFORMATION

モルゴーア・クァルテット 結成25周年記念コンサート vol.1
○6/28(水)①14:00開演/②19 :00開演
出演:モルゴーア・クァルテット(弦楽四重奏)
曲目:エマーソン・レイク&パーマー:タルカス、ほか
会場:浜離宮朝日ホール
www.millionconcert.co.jp

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