INTERVIEW

Pile『Tailwind(s)』 「中心は音楽、特にライヴ」ファンとの信頼関係を追い風にヴォーカリストとしての成長刻んだ新作を語る

【特集:二次元以上。SPRING SPECIAL】Pt.5

葛藤の時期を通過し、ソロ・シンガーとしてのライヴで築いてきた信頼関係。追い風と共に一歩ずつ前進してきた歌声は、いよいよ想像を超えた場所へ――

 声優を務めたアニメ「ラブライブ!」に登場するアイドル・グループ、μ'sの一員として「NHK紅白歌合戦」に出演するなどで知名度を高めてきたPile。2016年3月の東京ドーム公演でグループの活動がひと段落した後は、“Melody”“素晴らしきSekai”(それぞれがアニメ「境界のRINNE」「デュエル・マスターズ VSRF」のオープニング・テーマ)といったシングルをリリースする一方、台湾、北京、シンガポールなどを回るアジア・ツアーや、TOKYO DOME CITY HALLでの単独ライヴを成功させ、ソロ・アーティストとしての存在感も増している。サード・アルバム『Tailwind(s)』は、この1年の彼女の躍進ぶりを証明する作品と言えるだろう。本作の軸になっているのは、ライヴで築き上げてきたファンとの信頼関係だ。

Pile Tailwind(s) Colourful(2017)

 「『Tailwind(s)』はファンの皆さんの総称なんです。ライヴのMCで〈私は大きな帆を張っていきますから、皆さんは追い風(Tailwind)になってください〉と言ったことがきっかけだったんですけど、グループの活動が一区切りして1年、ファンの方には本当に力をもらっているし、そのおかげで次のステップに進めたと思っているので。いろいろな活動をさせてもらっていますが、中心は音楽、特にライヴなんですよね。グループのときは可愛い衣装も着させてもらっていましたけど、ソロでは歌いやすさを重視して、ライヴ中の着替えも少なくしています」。

 疾走感溢れるビートとエッジの立ったギター・サウンドがひとつになったアッパー・チューン“DASH”、クラシカルなストリングスと共にドラマティックな歌が広がる“Heroic Philia”、重厚感に満ちたロック・サウンドのなかで起伏に富んだメロディーが暴れまくる“VENGEANCE”など、今回のアルバムにもライヴ映えする楽曲が揃っている。ヴォーカリストとして高い技術を求められるナンバーも多いが、仕上がりには彼女自身も確かな手応えを感じているようだ。

 「“Heroic Philla”は、実は10年くらい前から存在している曲なんですけど、とにかく難しくて、当時はまったく歌えなかったんですよ。でも、今回レコーディングしてみたら上手くいったので〈少しは上達したのかな〉って。もちろんライヴでもしっかり歌いたいので、もっとがんばらないといけないんですけどね。少しでも音程を外したりすると、めちゃくちゃ悔しいんですよ」。

 Pile自身のキャリアや感情とリンクした歌詞の世界も本作の大きな魅力だろう。それを象徴しているのが、葛藤していた時期の気持ちと重なる“花と翼”。そして、ファンに向けたポジティヴな思いが描かれている“ROAD”だ。

 「今回のアルバムは前向きな曲が多いんですけど、“花と翼”だけはまだ不安を抱えている状態を歌っていて。特に〈大丈夫咲けるよ〉というところを歌うときはグッときますね。私の歌を聴いてくれるお客さんが全然いないときもあったし、いろいろな場所でライヴができる今の状況は自分の想像を超えているので。“ROAD”はファンの皆さんに向けて〈この先も一緒に走っていきましょう〉と語り掛けている歌。私はインタヴューなどで〈次があるとは思ってない〉〈終わりは自分で決めたい〉みたいなことを言うので、何かあるたびに〈これで引退するのでは?〉って思われるんですよ(笑)。そういうことではないので、“ROAD”を聴いて安心してほしいなって」。

 年末には初の日本武道館公演も決定。濃密な感情表現と強烈なダイナミズムを備えた彼女の歌声は、この『Tailwind(s)』によってさらにスケールを増すことになりそうだ。

 「武道館はちゃんと〈お返しができる〉ステージにしたいです。ライヴはファンの方々に対するお返しだと思っているし、特に武道館に関しては〈実現して嬉しい〉という声をたくさんいただいているので。私にとっても夢のひとつだったし、叶えられて嬉しいですね。相変わらず先のことは考えられないですけど(笑)、今後もいろんな場所でライヴをやりたいです。アジア、国内を含めて、行ったことがないところはたくさんありますから」。

 


二次元以上。SPRING SPECIAL
[ 特集 ]音楽で楽しむ2017年春の2Dカルチャー

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