INTERVIEW

MYTH & ROID『eYe's』「日本のピクサーを作りたい」Tom-H@ck率いるクリエイター集団、夢の第一歩踏み出した初作

【特集:二次元以上。SPRING SPECIAL】Pt.2

めざすは異世界へ誘うエンターテイメントの最高峰──多分野のクリエイター集団が導く〈感情の最果て〉。固定概念を覆す新たな扉の向こう側へ、さあ、飛び込め!

 サウンド・プロデューサーのTom-H@ckを中心としたクリエイティヴ・ユニット、MYTH & ROIDがファースト・アルバム『eYe's』を完成させた。これまでは主にTom-H@ckとヴォーカリストがフィーチャーされてきたが、もともとMYTH & ROIDは作詞家でコンセプターでもあるhotaruをはじめ、さまざまな分野のクリエイターが集まった不定形の集団として活動をスタート。今回はアーティスト写真でも複数のシルエットが確認できたりと、徐々にその実体が露になってきたと言える。

MYTH & ROID eYe's KADOKAWA(2017)

 「これまでは各メンバーの事務所が違ったり、物事を進めにくい部分があったんですけど、昨年自分の会社を立ち上げて、舵取りがしやすくなったんですよね。海外だとコライトってもう一般的ですけど、日本はまだエンタメ制作の概念が固定化していると思っていて、そこをぶち壊したいというか、MYTH & ROIDが新たな扉を開くことになればいいなって思ってるんです」(Tom-H@ck:以下同)。

 インダストリアル/ラウド・ロックをベースとしながら、民族音楽などの要素も採り込んだ幅の広い音楽性と、パンチの効いた歌声が大きなインパクトを残し、また2015年のデビュー作“L.L.L.”から今年2月の“JUNGO JUNGLE”まで、5枚のシングルがすべてアニメのタイアップに使われたこともあって、着実に知名度を高めてきたMYTH & ROID。複数のアニメ作品の楽曲を手掛けることによって、アーティスト自身の色が見えにくくなるという危険性も一般的にはあると思うが、彼らは〈人間の感情の最果てを描く〉というテーマを掲げることで、その問題をクリアしている。

 「これは100%ポジティヴな意味合いで言うんですけど、僕たちは商業音楽家としてデビューしているということが一番の強みなんです。〈何か表現したいことがある〉というわけではなく、物事を計画して、仕込みをして、どうビジネスライクに物事を進めていくかが大事で、そこに自分たちの表現したいこともぶっ込む。いまの音楽業界は不況ですから、メーカーにすべてを任せるのではなく、もっと自分たちで考えないといけない時代に突入してると思うんですよね。で、僕たちはアニメ・タイアップからビジネスを広げていったわけですけど、原作の持つ強力なパワーに対して、自分たちにとっての木の幹というか、核を作っておく必要があって、それが〈人間の感情の最果てを描く〉というテーマだったんです。今回のアルバムは、義眼師を主人公とした〈虹色の目の化石を巡る物語〉として、それを描いています」。

 

異世界へ誘える存在に

 アルバムはBRADIOのサポートなどでも活躍するイマニによる英語でのナレーションが文字通り映画のオープニングのような“A beginning”から始まり、続くリード・トラック“TRAGEDY:ETERNITY”では、本作より参加の新ヴォーカリストであるKIHOWが幅広い声色を使い分け、ドラマティックな構成の楽曲に貢献。トータル5曲の歌唱を担当した彼女は、帰国子女ならではのネイティヴに近い英語の発音を武器に、確かな存在感を放っている。

 「最初から複数のヴォーカリストを起用したかったので、去年からオーディションをしていて。最初は全然見つからなかったんですけど、KIHOWの歌を聴いてすごいなって思いました。そもそも何でいまの音楽業界が不況かって、国内だけでビジネスをやろうしてきたからじゃないですか? でも、もうそういう時代じゃないし、アニメはその扉を開く意味でもすごく大きいから、海外は最初から意識していて。その意味でも、ちゃんと英語で歌える人材はマストだったんですよね。あと、彼女の声には神秘的な力があるというか、彼女の声を聴いていると、ディープな世界に連れていかれる感覚があって、トラックの作り方も変わっていったんです。音数を絞ったのはいまの世界のトレンドを意識した部分もあるんですけど、彼女の声の影響もすごく大きいと思います」。

 これまで発表してきた楽曲は、アニメの世界観との連動もあってか、歪んだギターを押し出したラウドなものの割合が多かった。しかし、MYTH & ROIDとしては珍しい全編日本語詞で、古風な言葉の雰囲気と、エレクトロニカ風の音像がマッチしている“雪を聴く夜”や、海外のメインストリームにそのまま持っていけそうなポップ・ナンバー“Tough & Alone”や“sunny garden sunday”など、KIHOWの歌う新曲で中心的な役割を果たしているのはシンセサイザー。それもソフトではなくハードで、Tom-H@ckはアナログ・シンセを使うためにみずからのスタジオにシステムを組み、それが本作の立体的な音像に繋がっている。

 「僕の好きな音楽家の一人がナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーで、彼は『ソーシャル・ネットワーク』でアカデミー賞、『ドラゴン・タトゥーの女』でグラミー賞を獲ってるんですよね。バンドのヴォーカリストがハリウッド映画のサントラで賞を獲るっていうのが衝撃だったし、しかも、その音楽がアナログ・シンセを使ったかなり革新的なもので、映像と相まったときにものすごいエネルギーを発してたんです。それには憧れもあったし、研究材料にもなって、今回入ってる新曲は8割方ハード・シンセを使っていて、最初と最後の物語を語るトラックは、ほぼアナログ・シンセで作ってます。個人的に〈いいシンセの音〉の価値観として、〈スピーカーやヘッドフォンで聴いたときに、ものすごく耳に張り付いてくる〉っていうのがあって、それってソフトでは絶対出せないし、それをやってる日本人もほぼいないと思ったので、今回トライしてみました」。

 〈虹色の目〉を模した鮮烈なヴィジュアルも含め、本作はまさに『eYe's』という映画のサウンドトラックのような一枚。アンドロイドが描く〈感情〉を巡る物語は、きっと聴く者の心に深い余韻を残すだろう。しかし、この作品はMYTH & ROIDが、Tom-H@ckが思い描く広い世界の、あくまで一部でしかないという。

 「僕はよく〈日本のピクサーを作りたい〉と言っていて、ディズニーランドに行ったときの、あの異世界に来たような感じって、エンターテイメントの最高峰だと思うんですよ。もともと『グランディア』っていうRPGのゲームが好きだったり、昔からファンタジーに対する憧れを持っているので、MYTH & ROIDも聴き手を異世界に誘えるようなアーティストでありたい。『eYe's』はその始まりなのかなって思いますね」。

関連盤を紹介。

 

MYTH & ROIDのシングルを紹介。

 


二次元以上。SPRING SPECIAL
[ 特集 ]音楽で楽しむ2017年春の2Dカルチャー

★Pt.1 久保ユリカ『すべてが大切な出会い ~Meeting with your creates myself~』
★Pt.3 fhána“ムーンリバー”
★Pt.4 Tom-H@ck×佐藤純一×太田雅友 特別鼎談
★Pt.5 Pile『Tailwind(s)』
★Pt.6 夏川椎菜“グレープフルーツムーン”
★Pt.7 芹澤優『YOU & YOU』
★Pt.8 ディスクガイド

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