COLUMN

MARY BLACK 『ザ・ベリー・ベスト・オブ・メアリー・ブラック』

最後の来日公演を前に届けられた、日本オリジナルのベスト・アルバム

 みんなを優しい気持ちにしてくれる。そんな歌。そして音楽だ。すべての曲が、聴く人の心にそっと寄り添ってくれるのだ。

 アイルランドで国民的な人気を誇るシンガー、メアリー・ブラック。今年限りで海外ツアーから引退することを発表し、最後のワールドツアーに出た。5月には日本にもやってきてくれる。それに先駆けて、日本オリジナルのベスト・アルバムが届けられた。1983年のデビュー作から2011年の『Stories From The Steeples』までのアルバムから、全15曲がセレクトされている。

MARY BLACK ザ・ベリー・ベスト・オブ・メアリー・ブラック キング(2014)

 アイリッシュというと、伝統音楽の印象を強く持つリスナーも多いかもしれないが、彼女の場合、トラッドに特別こだわっているわけではない。80年代の作品からはビリー・ホリデイヘンリー・マンシーニバート・バカラックといったアメリカ人作曲家の作品も収められ、それらがジミー・マッカーシーノエル・ブラジルといった、アイルランドのソングライターたちの手による楽曲(彼女の人気を世界的にした89年の『No Frontiers』からの曲をはじめ、どれも珠玉!)も違和感なく並ぶ。そして、聴いているうちに、歌や音楽が人の生活にとっていかに大切なものか、気づくのだ。メアリー・ブラックという歌手の最大の魅力は、そこにあると思う。

 かつてアイルランドから世界中、特にアメリカ大陸に向けて移動した人々が携えていき、現代のポピュラーミュージックにも多大な影響を与えた彼らの音楽。彼女の歌声を聴いていると、まるでそれらの音楽が、母なるアイルランドに還っていくようにも思える。アルバムは、《Song For Ireland》で締めくくられる。

 1999年以来15年ぶりの、そして最後になるであろう来日公演。メアリー・ブラックの姿を目に焼き付けることができるのは、とても幸せだと思う。本作を楽しみながら、その時を待ちたい。

※公演は終了いたしました

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