INTERVIEW

見た目はいかついけど、繊細なイイ奴―ナサニエル・レイトリフ・アンド・ザ・ナイト・スウェッツがルーツ・ロック愛を語る

Photo by Brantley Gutierrez

 

ファースト・アルバムが大ヒット、ルーツ・ロックの急先鋒に

2015年のファースト・アルバム『Nathaniel Rateliff & The Night Sweats』が大ヒットし、世界の音楽ファンから注目される存在となった、ミズーリ出身のフォーク・シンガー、ナサニエル・レイトリフ率いる大所帯バンド〈ナサニエル・レイトリフ・アンド・ザ・ナイト・スウェッツ〉。デラニー・ブラムレットばりの塩っ辛いヴォーカルと軽快なハンドクラップが印象的な同作収録のシングル“S.O.B”がチャートを駆け上がり、アルバムは50万枚を超えるセールスを記録、一躍ルーツ・ロック系の急先鋒となった。

当然のことながら、彼らを取り巻く環境は大いに変化したことだろう。バンドの首謀者であるナサニエルに、まずは現在の心境から伺ってみた。

「前作があんなに成功するなんて、いまだに驚いているんだ。想像もしてなかったからね。あの作品がリリースされる前から今日まで休むことなくずっと働いてきたけど、自分たち自身が満足のできるものをこうやって今回またリリースできたことがすごく嬉しいね」

と、自信満々に語るのが、この度到着したセカンド・アルバム『Tearing At The Seams』。エッジの効いたビート、絶妙なファンクネスを醸す演奏が耳を捉えるオープニングの“Shoe Boot”をはじめ、強靭にしてダイナミックなグルーヴが横溢。前作を軽々と超えるパワーが漲っているではないか。最高だ。前作と同様、プロデュースを務めたリチャード・スウィフトによるレトロ調のヴィンテージなサウンド処理も冴えている。正直なところ、ファーストを超えねば、というプレッシャーはなかったのだろうか?

「プレッシャーだったのは、自分が本当に好きな作品を作り上げるということだった。前回から変化をつけながらも自分たちらしさを残し、自分が納得のいく音、心から好きだと思える音を作り上げることが大変だったね。気持ちのこもったアルバムを作りたかったんだ。もちろん、サウンドが変わることでファンをがっかりさせたくないという気持ちもあったよ。無理矢理変化をさせたかったわけじゃなくて、バンドでもっとライヴで演奏するようになったから、よりバンドとしてのサウンドを意識するようになったんだ。

最初のレコードでは多くの曲を自分ひとりで書いたし、楽器もほぼ自分で演奏して、それをリチャード・スウィフトの元に持っていき、そこから広げていった。でも、いまはつねに皆でいっしょに音楽を作ってる。いまのメンバーたちといると、自信が湧いてくるし、居心地がすごく良いんだよな。だから、今の曲の書き方っていうのはすごく楽なんだ」

『Tearing At The Seams』収録曲“Coolin' Out”

 

音楽に対してリアルで、地に足をつけていたい

実際のところ、『Tearing At The Seams』は、ナサリエフの音楽に対する揺らぐことのない信念を証明する作品になっていると思う。と同時に、アルバム全体には現代的な感覚が張り巡らされており、きっと幅広いリスナーの好奇心を刺激するだろう。その辺のバランスについてどのように考えているのか。

「とにかく前作とは違うフィーリングを持たせたかったんだよ。だから、R&Bソングだけを書くのではなく、そこに異なるスタイルを交差させてみた。でも、その交差させるものも、自分たちが昔から影響を受けてきた音楽を忠実に選んでいるし、カントリー&ウエスタンの要素を加えてみたり、ファンキーでありながらもR&Bであるものを作ろうと意識したね。あえて新しいことをやったつもりはないよ。“A Little Honey”で俺がピアノを弾いたのは新しいといえば新しいか。それから俺が書いたピアノラインがナイト・スウェッツに合わないものもあって、そこのバランスを自分たちが影響を受けてきたあらゆるサウンドからの何かで埋めつつレコーディングしていった。それは新しいと言えることだったな」

『Tearing At The Seams』収録曲“You Worry Me”
 

ズバリお訊きしたい。ナイト・スウェッツのほかにはない強みは何だと考えているのか。

「難しい質問だな。スウェッツには俺がいる! そこが最大の強みだ(笑)。というのは冗談で、俺たちはどのショウも全力を尽くしているし、ライヴでは自分たちの音楽をオーディエンスとシェアしたいと思っている。俺たちは少なくとも音楽に対してリアルで、地に足がついているとは思うね」

その足の踏ん張り方、彼らの立ち姿が実に雄々しく、自信ありげに映るのがこの2作目の強みなのではないかとつくづく感じずにはいられない。ところで現在の音楽シーンに対してどんな印象を抱いているのだろう? そしてこの時代にミュージシャンとして生きるということについて。

「自分が好きなものしか追っていないし、そのほとんどがシンガー・ソングライター系だからな……ローラ・マーリングとか、ケヴィン・モービーとか、アンディ・シャウフとか。彼らのようなメロウな音楽を好んで聴いてる。人気の音楽やチャートのトップに入っている音楽はあまり聴かないから、シーンに関してはあまりわからないんだ。でも、現在のシーンには素晴らしいソングライターたちがたくさんいる。だから、健康的だと思うよ。彼らが存在している限りはいいんじゃないかな。現在は、60年代よりも自分の音楽をリリースしやすい時代ではある。俺はあまりコンピューターに精通していないし、頼っていない。使い方があまりわからないから、自分にはあまり関係ないんだ(笑)」

ケヴィン・モービーの2017年作『City Music』収録曲“City Music”

 

見た目は強そうだけど、心は柔らかいイイ奴

彼の人生やパーソナリティーについてもいろいろと訊いてみた。まず音楽を始めたきっかけだが、両親が楽器を演奏していた影響もあって、幼い頃からいろんな楽器に触れていたとのこと。当時いちばん好きだった楽器はドラムだそうだ。もっとも影響を受けたシンガー・ソングライターは誰か?という質問には「レナード・コーエン、ボブ・ディランからは大きく影響されているし、サム・クックの美しい声はずっとファン。あと、オーストラリアのC.W.ストーンキングもずっと好きなんだ。彼の声も美しい。ブギウギ・ミュージックなんだけど楽しいよ」という答えが。そんな彼がいまいちばんコラボしてみたいと思っているミュージシャンは、キース・リチャーズだという。

C.W.ストーンキングの2008年作『Jungle Blues』収録曲“Jungle Blues
 

『Tearing At The Seams』にはサザン・バラード調の表題曲をはじめ、米国ルーツ・ミュージック好きにとって感涙モノの楽曲がひしめき合っているのも聴きどころとなっている。ところでナサニエルにとってもっとも泣ける曲とは?

「たくさんありすぎるなぁ。俺自身ほとんどの曲で泣けちゃうから、どの曲もそうだとは言える。見た目は強そうだけど、心は柔らかいイイ奴なんだよ(笑)。ひとつだけ選ぶとしたら、ダミアン・ジュラードの“Mountains Still Asleep”かな。歌詞が美しいのと、彼の声がゴージャスだから。完璧過ぎない感じが美しいんだよね」

※80年代後半よりパンク/ハードコア・シーンでキャリアをスタートし、現在はソロで活動するシンガー・ソングライター

ダミアン・ジュラードの2012年作『Maraqopa』収録曲“Mountains Still Asleep”
 

音楽をやり続けるのにあたって、もっとも大事なこととは何だと考えているのだろうか。なくしちゃいけないものは何だと思う?

「多くのものに興味を持ち続け、新しい音楽を発見し続けること。そうやって毎回自分自身に挑戦して、いろいろなタイプの曲を書くことだな。リスナーとしてもさまざまな音楽が好きだから、そういったものを自分でもどうやったら書けるか、演奏できるかを追求していきたいんだ」

いま何よりも興味があるのは、ナイト・スウェッツのメンバーといっしょに思いっきり汗をかきながらいくつもの夜を乗り越えていくこと。インタヴューの隅々から伝わってきたのは、そんな彼の想いだったように思う。最後に、これから先めざしていることについて訊いてみた。

「8月までツアーが続く。あとはもっと曲を書いてレコーディングしたいね。でも、あまり考えすぎず、自分たちのできることを自然の流れでやっていければと思う。めざしているのは、家を買うことだな。まだ買ったことがないから(笑)。自分の家を持ちたいんだ。それから日本も行ってみたいね。俺は庭師だったから、日本の庭園を見てみたいんだよ」

『Tearing At The Seams』収録曲“Hey Mama”
 
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