KANDYTOWNのソウルフルな美意識を支える男がソロ作を完成! 最高のラインナップを従えて己の美学を貫いた濃厚な一撃を味わえ!

 メジャー・デビューを経てメンバー個々のリリースが続くKANDYTOWNからまた一人、ビートメイカーのMIKIがソロ・デビュー。ハード・ロック・バンドでギターを弾いていた父の影響で、幼少期からピアノを習い、ジミヘンやジェイムズ・ブラウンなどに聴き親しんでいたという彼が、音楽を志すのは至って自然なことだった。

 「中2ぐらいの時にサッカーを辞めちゃった時点で興味あるのが音楽だけだったんで、それしかないかなって」。

 高校に進み、地元・世田谷の先輩の影響でラップを始めたものの、体調を壊したのを機にその興味はビートメイクへ。手探りで始めた音作りがいまでは彼の音楽のすべてになった。

 「もともと物作りが好きで、トラックを作ってる時に〈脳ミソが喜んでるな!〉って感じてすごいハマったし、J・ディラが病室でビート作ってるの見て、これだったら一生できるなと思って」。

 そんな彼に誰より道を示したのは、亡き後もKANDYTOWNの精神的支柱であり続けているYUSHIだ。高校卒業後のNY留学を経て、共に暮らしたサンフランシスコでの思い出は、MIKIの作り手としての原点になったという。

 「サンフランシスコに着いて最初に曲作った時、椅子に座ってたらYUSHIに思いっきり椅子を蹴っ飛ばされたんすよ(笑)。〈もっと熱くなれよ!〉って。そういう熱さとか音楽に対する情熱って、作ってる時点でやっぱ曲に出てくるし、それだけで曲調が変わってくるんですよね」。

 いわばその情熱をアルバム・サイズで形にしたのが、このほど登場した初のソロ作『137』だ。活動初期から温めていたトラックも含むことを思えば、ほぼ5年越しで完成したことになる。「新しいというよりは、いつ聴いてもいいなあと思えるようなアルバムにしたかった」と彼は言う。

MIKI 『137』 KANDYTOWN LIFE/bpm tokyo(2018)

 「よくラッパーにも〈MIKIのビートでは軽い気持ちで書けない〉って言われるんですけど、気持ちを動かされるようなサウンドが好きだし、自分が楽しめる音楽をやってる。自分の中では、これを出せればこの先は何をやってもいいやみたいな、濃い一枚になったと思います」。

 そんな濃厚なトラック群は、KANDYTOWNにも見るメロウな曲調に加え、要所のドラマティックな演出もアルバムの妙に。妥協せず「最高のメンバーを集めた」という客演陣にはクルーの仲間ら日本勢はもとより、USのラズ・フレスコやチェルシー・リジェクトも顔を揃えている。

 「BESさんと仙人掌の“Breath”では若い世代に向けてのメッセージを入れてほしいって頼みましたけど、他の曲はこちらからテーマを言わなくても基本的にそれぞれラッパーが感じ取ってくれた。B.D.さんは人としてカッコいいから一緒に音楽やりたいと思ってたし、NIPPSさんはいまだに唯一無二。BESさん、仙人掌は俺ら世代は別格で食らってて、BESさんの本質的な良さを出したいと思ってあえて〈これぞヒップホップ〉な音でやってもらったし、後輩のFINとNOAも誰にも真似できないようなラップをしてくれた。ラズとチェルシーの〈俺らはスタジオで稼ぐ、どんどん録るからビートをくれ〉みたいなヴァイブスも新鮮でしたね」。

 さらに本作には先頃急逝したFEBBの姿も。ソリッドなビート上で15歳違いのB.D.、30歳差(!)のNIPPSとマイクを回す“You Want Me”をアルバムきっての一曲としたほか、「ラズも黒さを理解してくれた」と胸を張る“¥en”ではMIKIとトラックを共同制作している。

 「FEBBとは、世に出る前からクラブで会って仲良くなって。5分ぐらいずっと目が合ってて(笑)、その瞬間にお互いわかり合えたんすよね。2人でアルバムも出そうとしてビートもいっぱい一緒に作ってて、“¥en”はそのうちの1曲なんです。いまはアイツのぶんもがんばらなきゃいけないって感じっすね」。

 本作の最後を“Never End”なる曲で締めたのも、「いろんな人と仕事がしてみたい」という今後に向けたそうした決意の表れだろう。

 「これまではKANDYTOWNの仲間がカッコ良すぎて、正直〈こいつらが歌ってくれるなら満足だわ〉って感じだったんですけど、一枚作ってもっとハングリーなマインドになれたし、次のアルバムは若い奴らともっと尖ったものにしたいと思ってます」。