
宮城のおばあちゃんには〈いつ就職していつ結婚するんだ〉って言われます
――……あ、そういえば大事な話を忘れてました。始球式問題※ですよ!
「ハハハハハハ! ありましたねえ(笑)」
――Negiccoがひとりずつ始球式をやってきて、かえぽの番が来ました、練習もして頑張りました、ところが謎の報道が出ちゃいました、という流れだったわけですけど、あれはどういう心境でした?
「ねー、ホントにビックリしましたよね」
――県知事がスキャンダルを起こして、その代打みたいに報道されて。
「もともと県知事さんも出られる予定だったらしいんですけど、それもよくわからない。しかも、前回が雨で流れてなかったらそんなことにもなってないし、その頃から〈次、リベンジしようね〉って話にはなってたから。なのに報道する側としては〈緊急登板!〉みたいに書かれてて。一個一個に食ってかかる気もないけど、わかってほしいなと思って軽く書いたりはして」
――つまり、1人で始球式をやっていたはずが、雨のせいでズレ込んで県知事と2人でやることになり、そして県知事がキャンセルしたってわけなんですね。
「キャッチボールすらまともにやったことがなかったから急に言われてその日に投げるのは無理だし、グッズも作ってるし、ユニフォームだってひとりひとり特注で作ってもらってるし、当日作れるわけないのになあって思いながら。なんとなくモヤッとして終わってしまったところはあるんですけど、でも始球式自体は楽しかったです」
――サトウ食品とNegiccoの関係とか伝わってないのかって思いますよね。
「伝わってないみたいですね、サトウ食品さんのゲームだからっていうこともわかってれば、そんな話にはならないと思うんですけど」
――その結果、不本意ながら突然報道される側になり。
「『NEWS ZERO』に出て(笑)」
――政治色から遠い場所にいたはずのNegiccoが思いっきり巻き込まれるっていう(笑)。
「政治に関してはぜんぜんわからないんですけど、始球式はいい経験でした。投げる直前まで緊張しなくて、意外とイケるなと思って。ふつうに楽しかったです。サトウ食品さんの関係者の方がいらっしゃる場所でずっと〈ネギー! ネギー!〉って言い続けてる人がいて、それで和んで、〈あ、大丈夫だ。イケるわ〉と思って」
――それはサトウ食品の偉い人なんですかね?
「偉い人が〈ネギー! 頑張れネギー!〉って。あ、名前は言ってくれないんだと思いながら(笑)。サトウ食品の社長さんもボールを受け取ったときに〈ネギネギー!〉ってやってくれたから、私もやって、これは大丈夫と思って。
私のおじいちゃんも観に来てくれたんですよ。おじいちゃんはすごい身だしなみとか気をつける人だったんですけど、最近、髪を整えたりもしなくなっちゃって。〈おじいちゃん、ちょっと元気ないからマメに行ってあげて〉とか言われてたら、始球式に来てくれて〈すげえよかったぞ!〉って。阪神ファンなんですけど(笑)」
――孫が野球に関わるだけでもうれしいんでしょうね。
「喜んでくれたみたいで。おじいちゃんおばあちゃん孝行はしていきたいですね」
――テレビに出るなりの活動って、そういう面でも大きいじゃないですか。
「親もそうだし、おじいちゃんおばあちゃんも観られるように、いまCMやらせてもらえてるから」
――サトウ食品はデカいですよね。年末になれば流れまくるから。
「ホントにありがたい。でも、宮城のほうのおばあちゃんには〈いつ就職していつ結婚するんだ〉って言われます」
――世の中のルールを押しつけられる(笑)。
「正月とかに行ったときにそういう圧力みたいなものをチラッと感じて。〈いつどんな職に就いて、子供はいつ?〉って、そりゃそういうふうに見るよなー、みたいな。それもあったのかも」
――ボクも30歳ぐらいまで、親には〈ちゃんとした仕事はまだしないのか〉〈いつ黒い髪にしてネクタイをするんだ〉的に言われてましたよ。
「〈ちゃんとした〉って思ってもらえないところではあるんですよね」
――フリーターみたいなイメージでずっと見られてたんですけど、アイドルもそうなんでしょうね。ちゃんとした仕事とは思われにくい。
「うん、思ってもらえない」
――特に大学にまで行った人だと。
「そうですね、〈彼氏いないなら紹介するよ〉みたいなことまで親戚に言われて(笑)」
――かえぽはまだそこまで切実になる必要もないのに!
「でも、田舎のほうだと遅いって思うみたいです。〈26歳なんでしょ?〉みたいな。ぜんぜん結婚願望もないんですけど」

――ボクぐらいの歳になると同級生で独身はボクひとりみたいな世界なんですよ。同業者の先輩でも独身はどんどん減ってきて、リリー(・フランキー)さんと杉作(J太郎)さんぐらいしかいないんですよ。
「ハハハハハハ! 私も最近多いですね、同級生が〈結婚するから来て〉みたいな」
――2回、3回と結婚してる人間まで回りにいる中で、ボクはなんの人生経験も積んでないんだな、とか思いますよ。
「そっか……」
――ただ、Negiccoはメンバーが結婚しても続けられるグループにしたい、みたいなところはあるわけじゃないですか。
「そうですね。だから、いまじゃないと思うけどいつかはって思ってます」
――ファンもかなり受け入れてくれるグループだと思うんですよ。
「〈よかったじゃん!〉ってなる気はしますね」
――〈Nao☆ちゃん熱愛〉とかになっても、それで離れるファンが何人いるんだって感じで。〈いい人なら認める!〉って世界だと思うんですよ。
「〈どんな人なんだ?〉って親みたいに(笑)」
新潟だからいいけど、東京だったらもう生きてないだろうな……
――じゃあ、やっぱりネックは金銭面ですか。どうすればアイドルって食べていけるようになるんでしょうね。
「東京の方はみなさんどうされてるんですか? 新潟だからいいけど、東京だったらもう生きてないだろうな……」
――アイドルが水商売やってる話とかよく聞きますけど、やらざるを得ない状況が絶対あるんですよ。アイドルだけで生活できてたらやらないわけで。
「そうだよなあ……」
――Negiccoに関しては、ここまで来てそう簡単には辞められないっていうのはあると思うんですよ。
「そうですね、小学校から大学卒業までやって」
――ものすごい数のアイドルがいるなかで、この位置まで来るのもまず難しいわけで。まあ、この位置まで来るのに時間がかかりすぎてるグループではあるんですけど(笑)。
「そうですね(笑)」
――でも、緩やかに来たからこそ保ってる空気は絶対にありますから。地元の仕事が増えてるイメージもありますけど。
「ああ、高速道路の応援大使だったりとか」
――NoGoDというバンドの人が〈新潟には新幹線で行くとNGT48のポスターに迎えられるけど、バンドマンは車移動だからNegiccoへの思い入れが強い〉って話をしてました。パーキングのトイレに行くと必ずNegiccoがいるんですよね。
「なぜか男子トイレの中にだけ貼られてるらしくて」
――そうなんですか!
「女子トイレにはないんですよ。〈用を足すところにあるんだよ〉ってみんなに言われます」
――ボクもしょっちゅう遭遇してますよ。
「だからバンドさんには〈Negiccoがいてうれしい〉っていうのは言ってもらってます」

あのベルトに関してはなんでもありですもん
――地元の仕事が増えた流れともつながるかもしれないですけど、この2年間で大きな出来事があったじゃないですか。DDT(プロレスリング)のアイアンマンヘビーメタル級王者になったっていうエピソードが(笑)。
「ハハハハハハ! ありました。〈チャンピオンベルト持って帰っていいんですか?〉って言ったら、〈持って帰って〉って言われて、ユキ(Kaedeの愛犬)が一生懸命匂い嗅いで(笑)。たぶんいろんな人の匂いがするんだろうなって」
――相当闘ってきたじゃないですか。
「Negiccoとしても闘ったし、ひとりひとりも闘って」
――スーパー・ササダンゴ・マシンと接点ができたばっかりに、おかしなことに巻き込まれていくっていう。
「Meguが挑戦したとき、ササダンゴさんが車に轢かれてて。こんなこともありなベルト持ったらマズいだろと思って、いつ轢かれるかわかんないし。あのベルトに関してはなんでもありですもん」
――誰がいつ何を仕掛けてくるかもわからないから。
「ホント怖くて。でも、なんとかいいかたちで取り返してもらって」
――Negiccoがこういうのに巻き込まれるとは思ってなかったですからね。闘いとはいちばんほど遠いグループなのに。
「たしかに。でも、ベルトはうれしかったですね。タイミング的にツアーもあったから、ツアーにベルトを持って行って取り合いしたり(笑)。しかも、それが試合ってかたちになってるのもおもしろくて、DDTさんのTwitterで〈Kaede勝ち〉みたいな」
――動画が次々とアップされて。
「ただのNegiccoのツアーの宣伝みたいになってて(笑)」
――ササダンゴさんとの最初の接点は〈夏の魔物〉※ですか?
「かな? たぶん〈魔物〉ですね」
――緑色なだけでタッグを組まされて。
「フフフフ。あの当時、ササダンゴさんが何を言ってるかわかんなくて。でも、いまはプレゼンとかでいろいろ話されてて、やっぱり頭いいなって」
命が削れました
――話は変わって、「命削れてた」「寿命縮みそう」とかTwitterに書いてたのはなんだったんですか?F
「ああ、〈世田谷コンサート〉※のときピアノを弾いたんですよ。あと、新曲の歌詞がけっこう難しくて誰も覚えられなくて。結局ちょっと調整したんですけど。ピアノに関しては週に何回か、4時間とか5時間とかずっと連続で練習してたんですけど、やってもやってもできなくて。22日の〈世田谷〉ってストリングスも入ってたから、その方々に失礼だなと思って。
家にちっちゃめのキーボードがあって、ぜんぜん鍵盤が足りないんですけど、それを持ってって練習してて。これで大丈夫そうと思ったら、いざ本番となると指が震えて震えてうまく弾けなくて。ひとりで弾き語りだと自分のペースで全部歌い続けてるからいいんですけど、3人だと歌ったり歌わなかったり上だったりハモッたりっていうのが難しくて大変でした」
――それで命が削れた。
「命が削れました。精神的に削れて。いい経験ではあったんですけど。この感じの恥ずかしいのを見てもらったから、もう何も怖くない(笑)」
――「もうちょい器用に生きたい」とかもTwitterに書いてましたよね。
「ああ、それはなんだったかな。たぶんやることが溜まってて、一個やり始めるとほかのことができなくて、そのピアノのときだと思うんですけど。ただ、体力というか集中力みたいなものは大学に行ったことでだいぶ鍛えられた気がします。短い時間でいかに詰め込むか、みたいな」
――大学に行ってた頃、あきらかに寝てないぐらいの状態だった時期があったじゃないですか。
「寝てなかったし、あの頃のほうがダンスも激しいものが多かったから」
――それを思うと、少しはいい流れにはなってるんじゃないですか?
「そうですね、大学に行っておいてよかった。大学の知識はぜんぜん使ってないけど(笑)」
――その知識を使う仕事をするべきなんですかね?
「でも、したいと思わないんですよね。もう勉強はいい、やり切ったっていう」
――これ見よがしに白衣着て、あざとい感じの理系アイドルみたいな方向は。※
「ぜんぜんいいって感じです。大学4年生になった時点で、これは違うなって思ってたから。もし就職するってなったとしても理系の仕事っていうよりは、ふつうにしたいなって。勉強したことを活かしたような仕事には就けないなと思ってて」