性急で起伏に富んだ、一聴してそれとわかる〈沖井ビート〉に気持ちよく乗っていく清浦夏実の麗しい歌声は、3作目のフル・アルバムとなる今作でも期待を裏切らない楽しさ。サウンド面ではテープの逆再生をコラージュした中期ビートルズ風からシューゲイザー的アプローチに至るまで自由度高め、かつ芸の細かさが際立った印象で、ピチカート・ファイヴ“東京は夜の七時”のハツラツとしたカヴァーも最高!

 


まずは表題曲の美しさに驚く。シンプルな作りに見えていくつもの装飾が施された様子は、まるで高級家具を揃えたホテルの一室のよう。コード進行は明らかに〈沖井ワークス〉でありながら、それは確実に進化を遂げているのがわかる。そこを軽やかに駆け抜ける清浦夏実の風のような歌声。(SNSではいつもやんややんややってるが)沖井サウンドと清浦ヴォイスのマッチ具合がいかに素晴らしいかがわかる一曲だ。そしてその美しさはアルバムに一貫して流れている。極めつきは、あの“東京は夜の七時”と自作の“21世紀の子供達”をミックスしたメドレー曲。“東京は夜の七時”のリリースから25年。21世紀になり、世界や子供達の状況がどれだけ一変しても、街と恋人たちというテーマは不変だし、渋谷系という音楽ジャンルも一過性のものではなく不変なものになりつつあるのがわかる……そんな名曲だ。FROGの名曲“Gangsters”ばりに沖井がスラップで攻め立てる“花束と磁力”や“美しい歌はいつも悲しい”も◎。