来年2019年1月12日(土)に東京・代官山UNITで開催されるライヴ・イヴェント〈DOVETAIL(ダブテイル)〉。Mikikiでは、同イヴェントに出演するWONK、MELRAW、SIRUP、CRCK/LCKS、ものんくるが、菅野結以がパーソナリティーを務めるTOKYO FM「RADIO DRAGON-NEXT-」内で行った座談会の模様を、計6回にわたってテキストで公開中だ(イヴェントと本記事の概要は第1回の記事へ)。

〈なれそめ編〉〈WONK編〉〈MELRAW編〉〈SIRUP編〉に続く第5回は、〈CRCK/LCKS編〉。小西遼(サックス/キーボード/ヴォコーダー他)、小田朋美(ヴォーカル/キーボード)、井上銘(ギター)、越智俊介(ベース)、石若駿(ドラムス)という気鋭の若手プレイヤーが集結したポップス・バンドの魅力について、6名がトークした様子をお届けする。

★座談会・完全版テキストの記事一覧はコチラ
★次回、最終回は12月4日(火)公開予定!

 


歌も歌ってフード出店もして

菅野結以「では他の4人に聴いてほしいCRCK/LCKSの楽曲。小西さん、紹介をお願いします」

小西遼(CRCK/LCKS)「はい。CRCK/LCKSで“No Goodbye”という曲をお聴きください」

CRCK/LCKSの2018年のEP『Double Rift』収録曲“No Goodbye”

 

(“No Goodbye”オンエア中)

小西「SIRUPと長塚の2人で呑みにいくときは(前回の記事を参照)、何呑むの?」

長塚健斗(WONK)「2人じゃなくて、何人か、共通の友達でモデルやってるヤツとかと。僕、プライヴェートでたまに食事会をやってるんですよ」

小西「ああ、料理人だもんね」

菅野「えー! すごい」

長塚「あるときは6人くらい……向井太一くんとかも来てて。その人数に対して牡蠣を80個とか仕入れて(笑)、ボトルワインも鬼のように用意して、空けまくりました。19時くらいから2時くらいまでやってましたもんね。むちゃくちゃ呑んだ」

SIRUP「後半、全然覚えてない」

角田隆太(ものんくる)「どうでもいい話なんだけど、牡蠣ってどこから仕入れるの?」

長塚「築地の魚の業者から。広島と北海道、岩手の指定の品種を頼んでますね」

小西「ガチだあ。料理の勉強はずーっとしてるの?」

長塚「2年ぐらい前までレストランでシェフをやってたんですよ」

菅野「そうなんですね!」

MELRAW「僕はWONKメンバーとかよりは食べてないんだけど、めちゃくちゃ美味いですからね」

小西「〈DOVETAIL〉のとき、フード出店やってよ」

長塚「歌も歌って? 忙しすぎるじゃないですか(笑)。……じゃあ後で予算のほうのご相談を」

全員「アハハハ(笑)」

小西「料理を作るのが好きなの?」

長塚「好きっす。歌うのと同じくらい好きですね」

小西「じゃあラヴソングを書いて、手料理もして、と」

長塚「ああ~。でもそんな機会はいままでなかったですよ」

角田「YouTubeで、歌いながらクッキングするみたいなのやったらいいんじゃない?」

小西「いいね。レシピを歌にして」

SIRUP「料理が出来た後に、エンディングだけ歌うとか」

長塚「あー、なるほどなるほど」

MELRAW「WONKのヴォーカル、そんなことまでやるのかよ(笑)。すごいタレント性出してくるな」

菅野「(笑)。すごいバズりそうですね」

MELRAW「〈ソルトベイ〉みたいな格好つけた感じじゃなくて、普通にエプロンして」

長塚「わりと真面目にね。でも確かに、〈釣りチューバー〉の人とはコラボしたい(笑)」

 

ビートが変わった

菅野「CRCK/LCKS で“No Goodbye”でした。……みんな唸っておりますが(笑)、小西さんがこの曲を選んでくれた理由は?」

小西「CRCK/LCKSって、角田がいたときもそうなんですけど※――一曲をそれぞれがしっかり書いてきて、それをみんなで味付けして曲にしていく、というプロセスがかなり多かったんです。だけど、夏に出した一番新しい作品『Double Rift』からは、俺と小田(朋美、ヴォーカル/キーボード)との共作曲がほとんどなんです。

そういった作り方をした曲は、それまでもあったと言えばあったんですけど、この曲“No Goodbye”は深夜に2人でデータのやり取りをして、2人で7時間くらいでバーッと書き上げた曲で。バンドとして、初めての共同作業みたいなことがしっかり出来たという意識があったんです。そういう意味で“No Goodbye”は、バンドの歴史の中でひとつの転換期となる曲だという想いがあって」

※角田は元・CRCK/LCKSメンバー

MELRAW「CRCK/LCKSの曲でこういうビートって珍しくない? 最初にアルバムをバーッと通して聴いたとき、〈あれ?〉って思ったんだよね」

長塚「俺もすごい思いました」

小西「俺、年初に奮発して高いPCを買って、本格的にDAWを始めたんです。これまではかなりアナログな手法で、テープとかルーパーとかで作ってたんですけど、PC上で音楽を作る、ビートを作るようになったら、わりと思い通りのビートを作れるようになって。それを駿(石若駿、ドラムス)やメンバーに渡したら、以前は〈やりやすいビートに直していいよ〉って言ってそうしてもらってたのが、ほぼそのままでOKがもらえて。

この“No Goodbye”に入ってるシンバルとかはすべてサンプリングして、生演奏と重ねたりしているんです。なので、ビートは生バンドから少し外れたところというか、スタジオ制作ならではのやり方を挑戦的に使ってるんですけど、それがぱっと聴いたときの印象としてバンドっぽさは失われないようにと心がけはしました」

角田「DAWっぽさはまったくないよね。個々のメンバー(の演奏)が浮き立ってくるようなアルバムがって感じがしたな」

小西「でも、前からキーボードを4つ重ねたりとかDAWっぽいことはやってたんだよね」

角田「ああ、たしかに」

菅野「長塚さんも〈CRCK/LCKSの好きな一曲〉でこの曲を挙げていますね」

長塚「アルバムを通して聴いたときに、めちゃくちゃ印象に残る曲だったんですよね。特にイントロがヴォーカル始まりじゃないですか。あと、歌詞がヤバくないですか? それでおおー!となって、このビート感じゃないですか。もうめっちゃいいじゃん!と思って」

小西「イエーイ。嬉しい」

菅野「長塚さんはコメントでCRCK/LCKSのことを〈スーパーマン集団〉と書かれてます」

長塚「もうスーパーマンでしょう。演奏のクオリティー、意味わかんないですよ」

菅野「角田さんは〈快楽主義の神々の大晩餐会〉と」

長塚「これ、いい表現だと思いましたよ(笑)」

菅野「〈10人くらいいそうだけど5人〉(笑)」

角田「いや、だって信じられなくないですか? あの音を5人でやってるなんて」

小西「あなたその〈元・1人〉だったじゃないですか(笑)」

角田「西洋絵画の大晩餐会ってあるじゃないですか、『最後の晩餐』みたいな。ああいう感じだよね、イメージとしては」

菅野「SIRUPくんも似たような感じで、〈超絶技巧とエモーショナルを兼ね備えた集団〉と」

SIRUP「僕、今年CRCK/LCKSのツアーに呼んでもらったんですけど、その前から〈ヤバいぞあいつらは〉〈ついに来るぞ〉と噂は聞いてて。ツアーで対バンする前にうちのバンド・メンバーも別のバンドでCRCK/LCKSと対バンしてて、すごい落ち込んでたんですよ。〈あいつらヤバいよ……〉って。で、音源聴いて、もう〈バリかっこいいやん〉って思って。〈でもこれどう(再現)すんのやろ?〉って思って実際に演奏を観たら、〈え、これは演奏してな……してるー!〉って感じで(笑)」

全員「アハハハ(笑)」

SIRUP「でも、めっちゃエモかったんですよ。それが印象的でした」

長塚「ライヴ、エモいですよね」

SIRUP「あんなに難しいことしてるのに、感情が前にきてるのがすごいなって」

小西「……たしかにこれ自分のターンになると恥ずかしいね(笑)。でも、どうしても技術的なところが目に付きやすいバンドだから、ライヴは絶対エモさで押し切ってやる、というのは確固たる信念としてありますね」

角田「ライヴでは陽性のパワーがワーッと出るからお客さんは救われるんだけど、ライヴに来てないお客さんは逆に落ち込むかもね(笑)。逆にここまで見せつけられると」

小西「あー、そうかあ。見せつけてるって気持ちはあまりないんだけど、結果的にそう見えちゃうってことね」

角田「光を放ちすぎて、影が出来ちゃうみたいな」

SIRUP「〈神々〉ですからね(笑)」

菅野「(笑)。MELRAWさんのアンケートの回答もおもしろくて。〈青春が詰まってる〉という」

MELRAW「CRCK/LCKSの演奏力の高さは、まあ言わずもがなとしておいて、小西くんが〈バンドをやるならこういうのをやりたかったんだぜ〉ってのが散りばめられてて、そしてそれがちゃんとコントロールできてるんですよね。メンバーはほとんどの人がジャズ出身だけど、〈ここがアガる〉ってのがちゃんとあるし、それを俺もわかるというか。〈それね! やりたいよね! 気持ち良さそー!〉みたいなのが(笑)」

小西「ああ、すごくわかってもらってる感がある(笑)。元々はロックに憧れていたのがジャズにいってしまったから、ロックができなかった人が30歳手前にしてバンドに手を出すみたいな気持ち良さが、このバンドを始めた当初からありましたからね」

角田「初期衝動がね、あったよね」

菅野「でもこの技術で初期衝動をやると、変態的な凄さがありますよね」

小西「以前、菅野さんとお話させていただいたときもそう言ってましたよね(笑)」

菅野「〈ポップスの皮を被った変態〉とつけさせていただきました(笑)」

全員「アハハハ(笑)」

菅野「では最後に、小西さんはこのイヴェントをやることについてはどうですか?」

小西「初めにこのお話をいただいたときは、内内のイヴェントじゃん、というのが印象だったんです。知ってる人たちだらけだから目新しさもないし、と。でも、いまこうして一緒に話してみたときに、こうやってシーンが出来上がってきたなかでひとつのいい〈楔〉となりそうというか。こういうことがいままであって、そしてこれからまたどこかに向かっていくんだということを示すイヴェントとして、すごくいいものだなと。平成の終わりにちょうどいいイヴェントだなって気がしていますね」

菅野「たしかに。ここからまた拡がっていく感じがしますよね」

★次回、最終回は12月4日(火)公開予定!

 


TOKYO FM「RADIO DRAGON-NEXT-」

毎週金曜日27時~29時に放送中! https://www.tfm.co.jp/dragon/
※放送されたトークはコチラからオンエア日より1週間聴くことができます。
※TS ONE(全国聴取可)にて毎週土曜日20時~22時で再放送有り。
※放送は関東近郊。関東以外の方はradikoの有料コンテンツ、またはWIZ RADIOで聴くことができます。

 


DOVETAIL
日時:2018年1月12日(土)
会場:東京・代官山UNIT
開場/開演:15:00/16:00
出演:WONK、MELRAW、SIRUP、CRCK/LCKS、ものんくる
チケット:前売4,800円   SOLD OUT
主催・企画・制作:Dentsu Music & Entertainment Inc.、サンライズプロモーション東京、ワイズコネクション
★詳細はこちら

 


■WONK

長塚健斗(ヴォーカル)、江﨑文武(キーボード/ピアノ)、井上幹(ベース/シンセサイザー)、荒田洸(ドラムス)からなるエクスペリメンタル・ソウル・バンド。新曲1曲を収録したリミックス作『GEMINI: Flip Couture #1』を5月23日にリリース。
http://www.wonk.tokyo/
★WONKがクリス・デイヴの魅力を語ったインタヴュー記事はコチラ

WONK GEMINI: Flip Couture #1 epistroph(2018)

〈TAICOCLUB'18〉でのライヴ映像

 

■MELRAW

サックス、フルート、トランペット、ギター、シンセサイザー、MPCを縦横無尽に行き来するマルチ・インストゥルメンタリスト、安藤康平によるソロ・プロジェクト。ファースト・アルバム『Pilgrim』を2017年12月6日にリリース。
http://www.epistroph.tokyo/melraw/

MELRAW Pilgrim epistroph(2017)

『Pilgrim』収録曲“The Rogue”

 

■SIRUP

大阪出身のシンガー・ソングライター、KYOtaroによるプロジェクト。最新EP『SIRUP EP2』を8月1日にリリース。
http://www.sirup.online/

SIRUP SIRUP EP2 Suppage(2018)

『SIRUP EP2』収録曲“Do Well”

 

■CRCK/LCKS

小西遼(サックス/キーボード/ヴォコーダー他)、小田朋美(ヴォーカル/キーボード)、井上銘(ギター)、越智俊介(ベース)、石若駿(ドラムス)から成るポップ・バンド。最新EP『Double Rift』を7月11日にリリース。
http://crcklcks.tumblr.com/
★『Double Rift』リリース時のインタヴュー記事はコチラ

CRCK/LCKS Double Rift APOLLO SOUNDS(2018)

『Double Rift』リリース・パーティーの様子

 

■ものんくる

ジャズを基軸にした独自のサウンドに詩情豊かな日本語詞をミックスした、吉田沙良(ヴォーカル)と角田隆太(作詞/作編曲/ベース)からなる2人組ユニット。最新アルバム『RELOADING CITY』を9月5日にリリース。
http://mononkul.tumblr.com/

ものんくる RELOADING CITY VILLAGE(2018)

〈Music Bar Session〉でのパフォーマンス映像