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ニール・ヤング「ニール・ヤング 回想」 アメ車ファンも必携! 回想録『SPECIAL DELUXE』待望の日本版、豪華仕様で登場!

アメ車ファンも必携!  回想録『SPECIAL DELUXE』待望の日本版、豪華仕様で登場!

 

NEIL YOUNG,清水由貴子 ニール・ヤング 回想 河出書房新社(2019)

 ニール・ヤングの回想録が出たと聞いたときは、正直 「え? また」と思った。すでに大部の自伝や他人が書いた詳細な伝記本がある。しかし読まねばなるまい。なぜならニール・ヤングだから。予測不可能な人だから。

 読みはじめて驚いた。「最初は〈車と犬〉について書く予定だった」とあるではないか。しかも自分は「世界一ひどい犬の飼い主かもしれない」ので、テーマを「歴代の愛車」に変更した、と。犬はともかく、車はぼくには手薄な分野だ。参ったな、と思いながら、重い本を読み進めた。

 しかし予想外にというか、予想どおりにというか、めっぽう面白い。これはミュージシャンの道楽話ではなく、一流の文章家による素晴らしいエッセイなのだ。彼の父親スコット・ヤングはカナダでは有名な文筆家だった。その息子であることを誇りに思うと同時に「自分にとって本当に大事なことについては、真面目でこだわりの強い内容となる自信があった」と彼は書いている。

 考えてみれば、アメリカや彼の出身地カナダでは車は必需品だ。それをおざなりにして、快適で意味深い人生を送ることはできない。読みはじめると、彼の場合はちょっと度が過ぎることがすぐにわかるのだが(笑)。

 古いアメ車ファンには喉から手が出そうな車の話ばかりだ。中古車の多くは数百ドルで手に入れたが、問題は修理や管理である。壊れたら部品がなくて、手に入れても乗れない車や、修理のため解体したままの車が次々に出てくる。それでも彼は飽くことなく車を手に入れ続ける。その結果、CO2排出問題と真剣に向き合うようになったいきさつも詳しい。

 「ひとたびスタジオに入れば、自制心も警戒心も理性も吹き飛ぶ」と書く彼に常識は通用しない。レコーディングしたが気に入らなくて発表しなかったアルバムが山のようにある人だ。「わたしたちの音楽は仕事ではない。生き方そのものだ」という言葉には、車も生き方だと付け加えるつもりだったのかもしれない。

 彼のファンなら、カナダから霊柩車で出てきてロサンゼルス名物の渋滞に巻きこまれたとき、対向車線を走ってきた旧友のスティヴン・スティルスと出会い、そこからバッファロー・スプリングフィールドがはじまったという物語を知っているだろう。なぜ霊柩車なのか。それは棺用のローラーが楽器や機材の出し入れに便利だったからだ。しかもそれが2台目だった。そんな細部にも事欠かない。

 行方知らずの目的地に向かって牧場の道やフリーウェイを走り続ける彼の車。その助手席に乗せてもらったような気がする本だ。この翻訳本は、惚れこんだ個人が会社まで作って出版したそうだ。人に何を言われようが やりたい音楽しかやらない著者も喜んでいると思う。

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