SHAPE OF LOVE
未曾有の状況下にあってBiSHが初のベスト・アルバムを発表。全国のライヴハウスと築き上げてきた怒涛の歴史とさまざまな感情で溢れかえる名曲の数々を、圧倒的な2枚組で堪能しよう!

 BiSHは2015年4月30日に東京・TSUTAYA O-nestで初舞台を踏み、同5月31日に中野heavysick ZEROで初のワンマン〈THiS IS FOR BiS〉を開催して以来、大小さまざまなライヴハウスを通じて観る者の心を震わせ、その魅力を増幅させてきた。そんな場所たちがコロナ禍で苦境に追い込まれている。逆境にどう対応するか、それをどうプラスに転化するか……というのは、BiSHや彼女たちが所属するWACKの行動原理として、たびたびアクションとして見られてきたものだ。しかしながら、自分たちの側も決まっていたライヴや出演フェスといった場が次々になくなるなかで、BiSHチームが出した答えはベスト・アルバムをリリースすること。そしてデビュー以来ワンマンや自主企画を開催してきた全国のライヴハウスに、そこから生じたavexとWACKの収益全額を寄付するという〈#BiSHベストアルバム大作戦〉の発表であった。

 ……そうした意義を意義として書きすぎるのもアレなので、シンプルに内容を紹介しておこう。ベスト盤のタイトルは、リヴ(生活する、生きる)とライヴを掛けた『FOR LiVE -BiSH BEST-』。彼女たちの代表曲が計27曲収録されたCD2枚組の生産限定盤だ。収録曲はそのまま彼女たちの歩みを凝縮したヒストリーであり、さまざまなライヴ会場を賑わせてきた楽曲の連なりこそが記憶の記録でもある。インディー時代が初出となる“スパーク”や“BiSH -星が瞬く夜に-”から“ALL YOU NEED IS LOVE”までの楽曲はアユニ・Dのヴォーカルが加わったヴァージョン(『GiANT KiLLERS』の2CD版に付いていた『iNTRODUCiNG BiSH』の音源)。“DEADMAN”や“オーケストラ”“本当本気”などメジャー以降の楽曲は、基本的にシングルやアルバムのリード・トラック、MV曲など活動の節目節目を象徴する直球のナンバーが並んでいる。

 2018年の“PAiNT it BLACK”で始まるDisc-2は最近の出来事という感じもするが、“GRUNGE WORLD”や“リズム”など硬軟を織り交ぜる表現力を獲得した近年の楽曲からは、初期の刹那的な作法にはない安定感と貫禄が伝わってくる。長年のリスナーもそんな進化を改めて耳で振り返る機会になるだろうし、新たなリスナーにとってはその躍進をいまから知れる最新型の『iNTRODUCiNG BiSH』になるだろう。

 なお、この後には3.5枚目のアルバムと位置づけられた7曲入りの新作『LETTERS』もリリースを控えている。もともと“TOMORROW”や“ぶち抜け”などのタイアップもあって予定されていたシングルに、リスナーへの〈手紙〉となる新たな書き下ろし曲たちを加えた内容とのことで、こちらの到着も楽しみに待っておきたい。