初のドラマ脚本・監督に挑戦したオダギリジョーと初のタッグを組む永山瑛太の初対談

独自の存在感と振り幅の広い演技で異彩を放つ俳優、オダギリジョー。初めて監督に挑戦した映画「ある船頭の話」はヴェネチア国際映画祭に出品されるなど、多才な才能を発揮してきた。そんななか、初めて連続TVドラマの監督と脚本に手掛けることに。「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」は、豪華なキャストで繰り広げる異色の警察ドラマ。そこにレギュラー出演しているのが永山瑛太だ。永山もまたオダギリに負けないほど自由な表現力と鋭い感性を持つ俳優。今回、初めて共演することになった2人に話を訊いた。


 

――「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」は異色の警察ドラマですね。鑑識課を舞台に主人公と警察犬が事件に挑む、という設定もユニークです。

オダギリジョー「テレビの連続ものに挑戦する事になった時、 いろいろ考えたんです。警察ものとか医者ものとか学校ものとか、ストーリーを続けやすい設定の中で、他とは違う個性を引き立てるためには、人間ではなく警察犬からの視点を入れれば良いと思ったんです」

――警察ドラマでありつつ、そこに様々なエピソードが絡み合って群像劇のようになって先が読めない物語ですが、瑛太さんは脚本を読んでどんな感想を持たれましたか?

永山瑛太「様々なジャンルが混ざり合っていて、その混沌とした世界のなかにオダギリさんが表現したいものがしっかりと描かれていて、これはオダギリさんにしか作り出すことができない、これまで見たことがない映像世界になるな、と思いました」

――ドラマでオダギリさんが演じる役も、これまでの警察ドラマではなかったものですよね。これは最初から頭の中にあったのでしょうか?

オダギリ「最初からありました。俳優って結局やりたい役なんてなかなかやらせてもらえないんですよ。だから、自分のなかに〈こういう役をやってみたい〉というストックがいくつかあって。そのうちのひとつがあの役だったんです」

――あのチャレンジングな役をずっとやりたかった、というのがオダギリさんらしいですね。

永山「オダギリさんがあの役の準備をしているところを2度くらい見かけたんですけど、その役の着替え途中でモニターをチェックしている姿がすごく印象的でした(笑)」

――瑛太さんは半グレ集団のリーダーという役柄でしたが、これも強烈なキャラクターですね。ずっと異様なテンションで。

永山「台詞、何を言っているかわかんないですよね(笑)。演じている、という意識はちゃんとあるし、セリフも勿論覚えてはいるんですけど、ああいう衣装を着て、ギラついたネオンの照明のなかにいると意識が違うところに飛んじゃってましたね。それを客観的に見てくださるオダギリさんに後で修正してもらう感じでした」

――瑛太さんから見て、監督=オダギリジョーの演出はいかがでした?

永山「今回は半グレのリーダーという役柄で、撮影の時は〈やりすぎかな?〉と思っても、そのまま勢いで演じてみて、あとはオダギリさんに判断してもらって調整してもらえればいいと思ってました。それで〈もう少し(テンションを)下げて〉とか言われた時には、その理由を丁寧に説明してくださるんですけど、オダギリさんが言ってることがすっと自分の中に入ってくるんです。それはオダギリさんが役者でもあるからだと思いますね」

――オダギリさんから見て、瑛太さんの役者としての魅力はどんなところでしょう。

オダギリ「俳優としての表現力はもちろんですが、どこか自分に似た〈行儀のよくない部分〉がある気がして(笑)。最近は何でもすぐに叩かれるから、みんな行儀がいいでしょ?」

――〈行儀のよくない部分〉ですか(笑)。それはどんなところだと瑛太さんは思いますか?

永山「世の中の常識だけに縛られたりしたくない、というところかもしれませんね。責任感を持ちながらも、クリエイティヴな意識を常に持って作品で遊んでいくというか。そういう部分が似ている、ということだったら嬉しいです」

――今回のドラマには、瑛太さんをはじめ、主役の青葉一平を演じた池松壮亮さんや麻生久美子さん、染谷将太さん、仲野太賀さん、永瀬正敏さんなど、個性的な役者さんがたくさん出てきますね。キャスティングにもこだわりを感じました。

オダギリ「同業者だからこそ役者の底力もわかる。そうすると、やっぱり自分が好きな俳優に演じてもらいたいじゃないですか。魅力を感じる人に役を託したいので、こういうキャスティングになるんです。柄本(明)さんや橋爪(功)さんみたいに『ある船頭の話』に出て頂いた人にまたお願いしたりして」

――細野晴臣さんや鈴木慶一さんのようにミュージシャンも役者として起用されていますね。日本アカデミー賞を受賞した作曲家が共演しているというのもすごいです。

オダギリ「確かに(笑)。いろんなカルチャーを作品に取り入れたいと思っているんです。それに細野さんや慶一さんって人間力が高いじゃないですか。そういう人って俳優向きなんですよ。お芝居ができる、できないはあまり問題じゃない」

――そういえば、細野さんは「ある船頭の話」にも出演されていましたね。

オダギリ「細野さんは俳優にはできない芝居ができるんです。そこが好きなんですよね。喋り方も独特のテンポがあって、なんか中毒性があるんですよ(笑)」

――オダギリさんが監督するのを見て、瑛太さんは刺激を受けました?

永山「僕はもともと映画監督になりたかったんです。家のビデオを使って兄弟で撮ったりしてたんですよ。だからいつか映画監督はやって見たいと思ってて。今回、オダギリさんがモニターを覗きながら、どういう動きをするのか一挙手一投足、密かに横で観察してたんです」

――何か発見はありました?

永山「自分はオダギリジョーさんにはなれないなと(笑)。今後、また違った形でご一緒出来る日を楽しみにしています」

瑛太/ヘアメイク:勇見勝彦(THYMON Inc.) スタイリスト:壽村太一
オダギリジョー/ヘアメイク:シラトリユウキ スタイリスト:西村哲也

 


オダギリジョー(Joe Odagiri)
76年2月16日生まれ、岡山県出身。アメリカと日本でメソッド演技法を学び、2003年、第56回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された「アカルイミライ」(黒沢清監督)で映画初主演。「ある船頭の話」(2019)は長編初監督作品。連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が待機中。

 

永山瑛太(Eita Nagayama)
82年12月13日生まれ。東京都出身。99年、「ホットドッグプレス」でモデルデビュー。2003年のフジテレビ系ドラマ「WATER BOYS」で注目を浴び、フジテレビ系深夜ドラマ「男湯」で初主演。2021年10月1日(金)公開の「護られなかった者たちへ」に、三雲忠勝役で出演。

 


TV INFORMATION

NHKドラマ10「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」
2021年9月17日(金)、24日(金)、10月1日(金)放送予定
金曜[NHK総合]22:00~22:45(全3回)
脚本・演出・出演:オダギリジョー
出演:池松壮亮/永瀬正敏/麻生久美子/本田翼/永山瑛太/佐藤浩市 ほか

公式Instagram:https://www.instagram.com/nhk_oliver/
番組公式ホームページ:https://www.nhk.jp/p/ts/ZPZJP2WJ9R/