(C)Claire Marie Leroux

 

 ダンス、マイム、人形、オブジェ、音楽などを融合した作品で、観客を魅了するカンパニー・フィリップ・ジャンティ(CPG)。今年で結成41周年を迎えるCPGは、1992年の初来日以来12回も上陸したが、この秋も独創的な舞台で全国9都市ツアーを敢行。演目は21年前にPARCO劇場で上演された『忘れな草』の改訂版(2012年パリ初演)。「記憶を巡る旅」という全体の流れはオリジナル版(1992年パリ初演)と共通だが、目と耳を喜ばす効果は大いにバージョン・アップ! 装置も複雑な「魔法」を送りだす機能を加え、リニューアルされた。

 オリジナル版に流れる闇の美学に替わって、改訂版には晴れやかな魔術がきらめく。黒から白へ、といった色調の変化は改訂版に参加した、ノルウェーの若いパフォーマーたちの影響も大きい。身体表現に優れた彼らはダイナミックに動き、力強く歌う。より幅広い層が楽しめる内容が加わったのだ。

 「夢の配達人」と称されるフランス出身のアーティスト、フィリップ・ジャンティは60年代に四大陸を旅して日本の伝統芸能も学んだ。彼は多彩な文化を組み合わせ、奇想天外な旅に観客を誘う。『忘れな草』の素材は、公私にわたるパートナーの振付家メアリー・アンダーウッドが見た夢。彼女の夢を基に、幼い少女が思春期を迎え成熟を遂げる三段階に応じて経験する心身の揺らぎが織り成される。

(C)Claire Marie Leroux

 

 見どころを紹介しよう。まずは人形と人間の共演。8人の登場人物それぞれに、瓜二つの等身大マネキンが寄り添う場面はまるで忍者の分身の術。「自分の中の、もうひとりの自分」と呼びたいマネキンは、抑圧された欲望や矛盾の象徴か? 人間と人形の境目がわからなくなるアクロバットにも驚かされる。骨肉と物質が一体化する瞬間、人形たちは恐さと同時にユーモアも放つ。また、シルクの袋を持って踊るダンサーが、いつしか布と溶けあい別の生きものと化したように回る場面もスリリング。

 そして、ドレスを着た「猿」が人間を風刺。大柄な雌と小柄な雄のチンパンジーの滑稽な行動には、笑いとばせない批判精神も透ける。言葉を使わないパフォーマンスに浸るうちに解放されていく感性を、いっそう柔軟にほぐすのは、らせん状に展開するルネ・オーブリー作曲の音楽だ。

 ステージを覆う雪の下に潜む思い出を掘る男には、ジャンティ自身が投影されている。多方向から観客を刺激する改訂版『忘れな草』は、意識の奥に沈むいとおしい記憶を呼び覚ましてくれるかもしれない。

 

EVENT INFORMATION

カンパニー・フィリップ・ジャンティ 〈忘れな草〉

東京公演
10月16日 (木) ~2014年10月26日 (日)  パルコ劇場

東京凱旋公演
前売り開始●9月13日(土)
11月19日(水)14時開演 新国立劇場 中劇場
協力●公益財団法人新公立劇場運営財団

入場料金●6,800(全席指定・税込)
U-25チケット ¥4,500(25歳以下対象・当日指定席券引換・要身分証明書)
※未就学児のご入場はお断りします。※営利目的の転売禁止

名古屋・京都・仙台・盛岡・大阪・山口・広島・北九州公演あり
お問い合わせ●パルコ劇場 03-3477-5858

作/演出:フィリップ・ジャンティ
振付/共同演出:メアリー・アンダーウッド
音楽:ルネ・オーブリー
出演:カンパニー・フィリップ・ジャンティ

企画招聘:株式会社パルコ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
日仏文化協力90周年
ノルウェー王国大使館
TOKYO FM
協力:WOWOW

★スペシャル・レクチャートーク付き公演有り! 詳細はHPにて
www.parco-play.com