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辻井伸行とドイツ・グラモフォン(DG)が専属契約を結ぶことが発表され、本日2024年4月22日(月)に東京・サントリーホール ブルーローズで記者会見が開催された。

記者会見には辻井とドイツ・グラモフォン社長のクレメンス・トラウトマン、ユニバーサル ミュージック合同会社社長兼最高経営責任者(CEO)の藤倉尚が登壇。会見では、リスト作曲“愛の夢 第3番 変イ長調」と“ラ・カンパネラ”の2曲が披露された。

©Ryota Mori

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なお、2025年初頭にリリースされる辻井の記念すべきDGデビュー作には、ピアノ作品の中でも最も複雑かつ高度な技巧が要求される、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 Op.106“ハンマークラヴィーア”が含まれるという。

さらに、これまでの辻井の広範なディスコグラフィ(前所属レーベルであるエイベックス・クラシックス・インターナショナルで録音されたアルバム)も、デジタルとフィジカル、両フォーマットでDGより再リリースされる

※配信では約15本の旧譜アルバムが全世界でDGより再リリースされ、旧譜CDについては国内ではエイベックスのCDが引き続き流通される予定。海外ではDGのロゴで発売される

また今回の契約を記念して、コンサート映像〈辻井伸行 プレイズ・バッハ、ショパン&ラフマニノフ〉が5月18日(土)よりDGの配信サービス〈STAGE+〉にてプレミア配信される。バッハの“フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816”で幕を開け、ショパン「即興曲」の4曲、ラフマニノフの“ヴォカリーズ”や“楽興の時Op.16”が披露されるこのリサイタルは、東京・サントリーホールで今年2月末にライブ収録されたものだ。

辻井伸行とクレメンス・トラウトマン(ドイツ・グラモフォン社長)
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今回の契約についてトラウトマンは、「DGに辻井さんを迎え入れることは、私たちにとって非常に大きな栄誉です。昨年、ロンドンで彼の演奏を聴き、その魅力に心を奪われました。彼は実にエキサイティングな音楽家です。その類まれなる音楽的創造性と洞察力は、彼が他とは違う目で世界を見ていることに起因するのかもしれません。彼がピアノから引き出すのは、驚異的なテクニックと深みのある豊かな音色に支えられ、聴く者の心に直接届く音楽です。私たちは辻井さんという素晴らしいアーティストを世界中の聴衆に紹介すると同時に、その国際的キャリアが発展し続けるよう、彼自身、そして彼の音楽事務所と協力して努力してゆく考えです」と語った。

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辻井自身も、今後DGで録音活動を行い、新たなプロジェクトを展開していくことを楽しみにしているという。「マルタ・アルゲリッチやマウリツィオ・ポリーニをはじめとする素晴らしいピアニストが数多くの名盤を録音しているので、ドイツ・グラモフォンの録音は、僕も子供の頃からよく聴いています。クラシック音楽をリードしてきた名門レーベルと契約することをたいへん誇りに思います。また、今後リリースされるCDやストリーミングを通じて、世界中のより多くの人たちに僕の演奏を聴いてもらえることを非常に嬉しく思います」と心境を述べた。

辻井のレコーディングを担当するプロデューサーであり、DGのアジア地域事業開発部長である城所孝吉は、「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールでの優勝を機に、日本での辻井さんの人気は一気に高まりました。しかし彼は、キャリアを世界に広げるポテンシャルを持っていると思います。彼の演奏は聴く者の心を揺さぶる、真の魔法を備えているからです」と述べ、辻井が間違いなく世界の聴衆を魅了し、感動を与えるだろうと確信している。

藤倉尚(ユニバーサル ミュージック合同会社社長兼最高経営責任者)
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藤倉は、「私たちユニバーサル ミュージック ジャパンは近年、ドイツ・グラモフォンと提携しながら、サイトウ・キネン・オーケストラや久石譲などの日本のアーティストをグローバルで展開し、その世界への道は確実に大きなものになってきています。ドイツ・グラモフォン125周年、そして、辻井伸行さんがヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝されて15年という記念すべき年に、ユニバーサル ミュージックグループのファミリーに迎えられ、ご一緒できることを誇りに思います。ドイツ・グラモフォン、そしてユニバーサル ミュージックに来てよかったと思っていただけるよう全力でサポートしていきます」とコメントした。

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今後、辻井がDGからどのような作品をリリースしていくのか、これからの活躍に期待だ。

 


PROFILE: 辻井伸行 Nobuyuki Tsujii
2009年6月に米国テキサス州フォートワースで行われた第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで日本人として初優勝して以来、国際的に活躍。2011年にはカーネギーホールの招聘でリサイタル、2012年はウラディーミル・アシュケナージの指揮でロンドン、ワレリー・ゲルギエフの指揮でサンクトペテルブルクにてそれぞれデビュー。2013年にはイギリス最大の音楽祭〈BBCプロムス〉に出演し〈歴史的成功〉と称賛された。これまでに共演してきた著名な指揮者や世界的オーケストラからも高く評価されており、ウラディーミル・ユロフスキ指揮ロンドン・フィル、ケント・ナガノ指揮ハンブルク・フィル、クラウス・マケラ指揮オスロ・フィルなどの日本ツアーのソリストに数多く抜擢されているほか、欧米の一流オーケストラの定期公演にもたびたび招聘されている。なかでもゲルギエフからはサンクトペテルブルク、ミラノ、東京など重要な公演のソリストに指名され、いずれも大成功を収めている。また、これまでにウィーンのムジークフェラインやベルリンのフィルハーモニーをはじめとする世界の著名なコンサートホールでの公演を成功させており、歴史あるパリのシャンゼリゼ劇場では2017年以降、リサイタル公演を継続的に行っている。2022年には創立100年を迎えた野外劇場ハリウッド・ボウルにおいてロサンゼルス・フィルと共演、2023年にはロンドンで〈BBCプロムス〉に再び招かれ、いずれも5,000人を超える聴衆からスタンディングオベーションを受けた。2024年以降もニューヨーク、ロンドン、パリ、シドニーをはじめとする主要都市、世界各地の音楽祭での公演や世界的オーケストラとの共演が予定されており、日本を代表するピアニストとしてさらなる飛躍が期待されている。

2009年、文化庁長官表彰(国際芸術部門)。2010年、第11回ホテルオークラ音楽賞及び第1回岩谷時子賞受賞。2013年、第39回日本ショパン協会賞受賞。

辻井伸行オフィシャルサイト:https://avex.jp/tsujii/