コラム

辻井伸行、多彩にして統一感ある〈音のドラマ〉が豊かに息づいているショパンの2大ソナタ収めた最新録音盤

(C)Yuji Hori

 

日本ツアー、世界ツアーで大喝采を浴びた、ショパンの2大ソナタを収録

 辻井伸行のピアノを聴いていると、いつも心が洗われる想いがする。そして、文字通り「天賦の」としか言いようの無い輝かしい才能に、讃嘆の念を禁じえなくなる。彼の演奏は、今日の混沌とした世界にあって、「善」の絶対的な価値や「神の存在」の力強い証明となり、聴き手である我々を感動させ、あるいは勇気づけてくれるのかも知れない。

辻井伸行 ショパン:ピアノ・ソナタ第2番、第3番 avex-CLASSICS(2015)

※試聴はこちら

 彼のこのような美質は、最新録音のショパンのピアノ・ソナタ第2番&第3番にも見事に脈打っている。まず一聴して感じ入るのは、弱音から強音まで絶妙にコントロールされた透明かつ繊細な音色と、流麗無比なテクニックである。彼はセンシティヴなピアニストであるが、やはりその前提となる音色美やテクニックを完璧に備えていることが、彼の自在かつ多彩な表現を可能としているのである。

 聴き進めてゆくと、こうした音色美とテクニックが、ひたすら音楽に奉仕していることが明らかとなる。ソナタ第2番第1楽章は対照的な2つの主題によって構成されるが、彼は焦燥感あふれる第1主題と憧れに満ちた第2主題を音色と緩急の変化で絶妙に描き分ける。しかも、その変化は自然である。展開部の激烈さも凄まじいが、再現部でサッとその緊張感を解放するのが実に上手い。こうした対比や対照、および相反する統一感の描出は、楽章だけでなく作品全体をまとめ上げる大きな力となっている。ソナタ第2番では、闘争的な第2楽章、葬送行進曲となる第3楽章、そして不気味な風が全てを吹き流してしまうフィナーレと続くが、彼の情景の変化を描き出す巧みさと、音楽の自然な流れにより全曲をまとめあげる構成力は見事というほかない。第2番が終わったあと、第3番のソナタが冒頭の一音だけで、全く違う世界観で始まるのも素晴らしい。ここにも多彩にして統一感のある「音のドラマ」が豊かに息づいている。そして我々は、彼の我欲のない、ひたすら音楽に奉仕する姿に感銘を受けるのである。 

【参考動画】辻井伸行による2009年のショパン〈ピアノ協奏曲第2番〉コンサート映像

 

LIVE INFORMATION
○11/25(水)19:00開演 会場:フェスティバルホール
○11/26(木)18:45開演 会場:愛知県芸術劇場コンサートホール
○11/28(土)14:00開演 会場:イズミティ21
出演:辻井伸行(p)ワレリー・ゲルギエフ(指揮)ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
*東京公演は完売
nobupiano1988.com/

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