INTERVIEW

芳垣安洋

カオスからエロスをアンサンブルする魅惑のエリントン作品集

芳垣安洋

 ビッグバンドの時代に誰よりも多くの名曲を残したのがデューク・エリントンだ。彼の曲の多くはスタンダード化しているが、オルケスタ・リブレの『プレイズ・デューク』の演奏は、通常のジャズとは一味も二味も異なっている。それはエリントンの音楽に渦巻く多様な要素に注目したところから生まれたと、リーダーの芳垣安洋は語る。

Orquesta Libre plays DUKE GLAMOROUS(2014)

 「メロディや曲の構造が素晴らしいのはもちろんですが、いわゆるジャズとちがって、もっと原初的なものも感じるんです。ジャズはいろんな形でいろんな要素が入って発展してきた音楽だけど、発展の過程でなくなっちゃった要素も少なくない。デューク・エリントンの曲を聞くとそれがわかるし、チャーリー・ミンガスアート・アンサンブル・オブ・シカゴのような彼の音楽の継承者からもそれが感じられておもしろいんです」

 それは多種多様なアンサンブルで活動している芳垣安洋のもとに専門分野を越えてメンバーが集まったオルケスタ・リブレだからこそできたことでもある。正調エリントン的な部分を骨格にしつつ、打楽器類によるイントロからゲストのロンロンのタップまで脱線が止まらない《A列車で行こう》、ゲストのスガダイローのピアノと椎谷求のギターが株価のように乱高下する《マネー・ジャングル》など、すべての演奏から、元の演奏に敬意を表しつつ、内在する多様な要素を引き出そうとする張力が感じられる。

 「ビッグバンド・ジャズを自ら好んで聴くようになったのは40歳過ぎてから。カウント・ベイシーやデューク・エリントンやバディ・リッチをあらためて聴いていくと、けっこうしっちゃかめっちゃかというか、ビッグバンド・ジャズは窮屈なものと思っていた先入観とちがって、ほんとに自由な音楽だった。かつてのジャズメンにはジャズというカテゴリーを意識しないでやってた人がたくさんいた。ところがいまはジャズというカテゴリーの音楽をやろうとしている人が多い。もちろん、それはそれで意味があることだし、力量を試すプレイヤーとしての喜びもあるんだけど、ぼくは音楽を作るうえで自分をカテゴライズしたくない。昔のジャズメンも、ジャズをやるんだという気負いはもちろん持っていただろうけど、それ以上に、いまいちばんカッコいいことをやるんだと思っていたんじゃないのかな。われわれもそうありたいですね」

 クルト・ワイル武満徹、ヨーロッパの映画音楽……取り組みたい音楽は数多い。オルケスタ・リブレの旅はこの先もまだまだ続きそうだ。

40周年プレイリスト
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