photo by Timothy White


最高じゃないか! 低予算の自主制作盤で想像以上の成功を掴んだアイツらが、ブルー・ノート初のロック・バンドとしてふたたびシーンを掻き乱す! ロックンロール本来の黒さを纏ったこの音こそ、未来への希望だ!

 

いつも通りにやればいいんだ

 ヴィンテージ・トラブルはとんでもなく素晴らしいライヴ・バンドである。一度でも彼らのステージを観た経験があるなら、そのことに異論を唱える人はまずいないはずだ。稲妻みたいなロックンロールやブルースと、胸を熱くさせるソウルのブレンド。〈何が何でも観客のタガを外させるのだ〉というような、気迫に満ちたヴォーカリストのアクションとシャウト。ギター、ベース、ドラムスの贅肉のない演奏。それらが一体となった破格のパフォーマンスでグループの名は徐々に知れ渡り、ザ・フーの北米&欧州ツアーに帯同したり、ローリング・ストーンズのロンドンはハイドパーク公演の前座を務めたりもするようになった。現在はあちこちのフェスで暴れつつ、AC/DCのツアーに帯同して各国のスタジアムで熱のあるライヴを披露している。

 「僕らはライヴ・ミュージックというアートを、よりセクシーで、より刺激的なものにしたい。毎回、観た人が帰り際に〈こんな凄いものは観たことがない〉と思ってくれるようなライヴをやりたいんだよ。レジェンド的なバンドの前座を務める日の朝は、こんなふうにも思うよ、〈僕らの音楽を聴いたことのない大観衆の心にどう訴えかけようか〉〈レジェンドの名を汚さないようにするにはどうすればいい?〉って。でも演奏が始まればオーディエンスが思い出させてくれるんだ。〈結局はいつも通りにやればいい〉ってことをね。目の前にいるのがAC/DCを観に集まった12万人の大観衆であっても、僕は自分の伝えたい思いを会場のいちばん後ろで観ている人にまで届ける気持ちで歌う。なぜって、もしかしたらその人は、凄く辛い思いを抱えて会場に来たかもしれない。ならばその人の魂を僕らの音楽で慰めたいと思うんだ。大切なのは集まった人の数じゃなく、そこにいる一人一人に何をどう伝えるかなんだよ」。

 そう一気に捲し立てるヴォーカリスト、タイ・テイラー(発言:以下同)の言葉は、すなわちライヴに対するバンドの信条であり、信念であり、ひいては音楽表現全般においての基本姿勢でもある。そしてそんな彼らのパフォーマンスを観て衝撃を受け、その信念に共感した一人に現ブルー・ノート社長のドン・ウォズがいる。ドン・ウォズは他人から薦められ、ヴィンテージ・トラブルのギグをLAのエル・レイ・シアターで初体験してブッ飛び、その後、ブルー・ノートの歴史と展望をメンバーに熱く語ったうえで〈レーベルの未来のため、キミたちに加わってほしい〉と口説いたそうだ。

 「僕らは前作『The Bomb Shelter Sessions』を2000ドルで自主制作して世界中をツアーしていたから、メジャー・レーベルに所属する必要などないと考えていた。でもドン・ウォズからそう言われたら、〈イエス!〉って答えるしかないじゃないか」。

 

アドレナリンが出まくってるよ

 かくしてヴィンテージ・トラブルはブルー・ノート初のロック・バンドとなり、実に4年ぶりとなるセカンド・アルバムを完成させた。それが『1 Hopeful Rd.』だ。

VINTAGE TROUBLE 1 Hopeful Rd. Blue Note/ユニバーサル(2015)

  「プロデュースもドン・ウォズがしてくれた。知っての通り、彼はライヴのエネルギーを捉えることに長けている。そんな彼がいてくれたから、僕らは考えすぎることなくレコーディングに取り組むことができたんだ。もちろんすべて一発録りだよ。そりゃ個別に録音するほうが、ミスったらまたやり直せるんだからずっと楽だよね。でも互いに信じ合い、〈いっせーのせ!〉でエネルギーをぶつけ合ってレコーディングするのはとても刺激的だ。何ていうか、自分の内側で常に地震が起きているような状態って感じかな。アドレナリンが出まくって、地面が絶えず揺れているみたいな感覚なんだよ」。

 そのようなエネルギーの充満度合は、聴けばすぐにわかる。わずか8日間で録音されたという本作には、ステージの勢いと躍動感が少しも失われることなく真空パックされているのだ。ライヴ中、タイがマイクを持ったまま客席に分け入って歌う“Run Like The River”や、オーディエンスにハンズアップを促す姿が目に浮かぶ“Strike Your Light”などの火を吹くようなロック・ナンバーと、昨年のEP『The Swing House Acoustic Sessions』にアコースティック・ヴァージョンでも収録されていた“Another Man's Words”をはじめとする味わい深いソウル・バラードとの配分バランスも実に良い。つまりファンのよく知るこのバンドの魅力がしっかり詰まった内容と言えるわけだが、そんななかで〈こんな曲もやるんだ!?〉と驚かされたのが“Angel City, California”。これ、初期イーグルスドゥービー・ブラザーズかといった、晴れやかなウェストコースト・ロック・サウンドなのだ。

 「デイヴ・グロールが全米の各都市を訪ねて音楽のヘリテイジについて語ったTV番組があってね。デトロイトとかニューオーリンズとかそういう都市なんだけど、そこでソウルを見つけるというのはみんなわかっても、LAでソウルを見つけるっていうのはピンと来ないだろう。でも僕はLAに来てソウルを見つけたと考えているんだ。ヴィンテージ・トラブルはLAで出会って結成された。うわべだけの街だと思われがちなハリウッドだけど、そこには住んでいる人間にしかわからない側面がある。だから、白い砂のビーチと青い空っていうんじゃなく、泥臭くていかがわしいけど、僕が僕として生きられるこの街のアンセムを作らなきゃと思って、これを書いたんだよ」。

 同曲を含め、どれもタイのパーソナルな思いが明快なメロディーと結び付き、普遍的なヴァイブを持つものとなっている。初めに紹介したライヴの取り組み方についての彼の言葉をなぞるなら、〈リスナー一人一人に何をどう伝えるか〉、そのことをよく考えて書かれたナンバーばかりだ。そして何より、どの曲からも希望が感じられる。そこが素晴らしい。

 「そう。だからアルバム・タイトルを〈1 Hopeful Rd.〉としたんだ。これは『Run Like The River』の歌い出しの言葉で、目の前に続く一本の希望の道を表している。そして、一枚通して聴いてもらえればわかると思うけど、それぞれ異なる曲をバラバラに入れているわけじゃなく、緩やかな弧を描くように並べ、聴き手を旅に連れて行こうとしているんだ。夢がずっと生き続けている、希望に満ちたその道の先へとね」。

*お知らせ*
アパレル・ブランド〈nano・universe〉東京では、ヴィンテージ・トラブルとのコラボTシャツを8月19日まで販売。こちらには、『1 Hopeful Rd.』のリード・トラック“Strike Your Light”の、現在ここでしか手に入らない最新ライヴ音源のダウンロード・コードが付属、さらに購入者には8月20日(木)に新宿ReNYで行われる一夜限りのスペシャル・イヴェントへの招待状がプレゼントされる。詳細はこちらからご確認を。なお、このコラボTシャツはタワーレコード渋谷店および新宿店でも8月19日まで取り扱われる。

また、nano・universe東京とnano・universe難波では、ギターのレスポールと同じ木材を正面に使用したギブソンの最新スピーカー〈Les Paul Reference Monitors〉と、音楽検索アプリ〈Shazam〉との合同キャンペーンも実施中。店頭でオンエアされているヴィンテージ・トラブルのライヴ音源をShazamで検索するとキャンペーンの特設サイトにリンクされ、バンドのサインが入った〈Gibson Les Paul Reference Monitors〉が抽選で1名に当たる。ぜひトライしてみよう(詳細はこちら)。