COLUMN

ティグラン・ハマシアン、アルメニアの正教音楽の聖歌をピアノと合唱団のためにアレンジしたECMデビュー作『Luys i Luso』

(C)Vahan Stepanyan/ECM Records

 

ピアノで弾く古代正教音楽

 このCDを聴くと、まず「このキラキラと響く美しい音は何だろう?」と多くの人は思うだろう。小さいエキゾチックな宝石が輝いているようなデリケートな音楽だ。これはピアノでアルメニアの宗教音楽を弾いている響きである。アルメニアにはビザンチンの正教音楽と多くの共通点を持つ音楽がある。このCDは5世紀から20世紀のアルメニアの正教音楽の聖歌を新たにピアノと合唱団にアレンジしたもので構成されている。合唱団はアルメニアのプロの合唱団だが、なるべく20世紀以前に持っていた雰囲気を残したかったようだ。昔は中東音楽で使われているの4分の1音(ドとシの間の音)を使いながら自然にビブラートなしで歌われていたらしい。ピアニストのティグラン・ハマシアンはアルメニアの正教音楽の歌を学んでからこのプロジェクトに取りかかった。ピアノの響きは中東の多くの国で使われているサントゥールという楽器と似ている。ハンマーで弦を叩いて音を出す楽器で、元々ピアノはサントゥールに鍵盤を付けた楽器だと言われている。最初の曲からピアノとそのルーツとなる古代のサントゥールが親戚関係である事が彼の弾き方からよくわかる。

TIGRAN HAMASYAN Luys i Luso ECM(2015)

 12世紀のアルメニアの正教音楽ではモードを使った即興もあったらしい。20世紀の現代音楽の作曲家リゲティを思い起こす曲もあるが、印象派や印象派以後のクラシックやジャズの和音や響きも聴こえて来る。プリペアド・ピアノも使っている。ピアノ・ソロでポップな響きがする時もある。

 ティグラン・ハマシアンは合唱団と共にこの曲集を持って世界ツアーに出かけるという。そのドキュメント映画もリリースされる予定だ。そして来年には、ECMでのティグラン・ハマシアンの2枚目のリリースが予定されている。それはアルメニアの伝統音楽をジャズ・ミュージシャンとエレクトロニクスの人と共演したものになるらしい。

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