INTERVIEW

ボウイの遺志を胸に『★』演奏メンバーが集結、ダニー・マッキャスリンが新作『Beyond Now』に刻んだ生前の記憶を語る

デヴィッドはとにかく根っからのジャズ好きだった

――マリア・シュナイダーが、ボウイにあなたのグループを紹介したそうですが、彼との出会いについて改めて訊かせてください。

「僕はもともとマリアのバンドでプレイしていたんだけど、彼女はデヴィッドと“Sue”という曲を一緒に作っていたんだ。マリアのバンドにデヴィッドがヴォーカルで加わってレコーディングをすることになっていたんだけど、マリアのところのドラマー(クラレンス・ペン)が都合がつかないということで、僕がマーク・ジュリアナを薦めたんだ。一方で、確かデヴィッドはマリアに、もっと他に曲を一緒にやりたいかを訊いたんだけど、彼女は自身のアルバム『The Thompson Fields』(2015年)のレコーディングを控えていたので無理だった。そこで彼女は、僕らと一緒に何かしてみてはどうか、と彼に提案してくれて、またデヴィッドに『Casting For Gravity』を聴かせてくれた。そうこうするうちに、僕らがいつもプレイしているNYの55 Barというところにデヴィッドを連れてきて、演奏を聴いてもらうことになったんだ。その晩は直接デヴィッドと会うことはなかったんだけど、1週間ほど経った頃に、マリアと“Sue”の初リハーサルがあって。確かマークとベースのジェイ・アンダーソン、トロンボーンのライアン・ケベールトニー(・ガドレク)スコット(・ロビンソン)、そしてマリアと僕にデヴィッドという比較的少ないメンバーで集まった。そのときに初めて彼と顔を合わせたよ」

デヴィッド・ボウイの2014年のベスト盤『Nothing Has Changed』収録曲“Sue”
ダニー・マッキャスリン・グループの55 Barでのライヴ映像
 

――実際にボウイと会ってみてどうでしたか? 

「それはグレイトだったよ。デヴィッドはとにかく温かく、フレンドリーで寛容、それにすごく感じが良くて、とにかく素晴らしい人なんだ。大スターなのにまったく偉ぶることもなく、そしてスターだからこそそういった温かくて寛容な部分が顕著で、とにかくワンダフルな人だったよ」

――『★』の録音現場では ボウイからはどのような要求がありましたか?

「なかったね。デヴィッドは僕らが僕らの持ち味を出し、やりたいことをやるのを奨励していたよ。だから素晴らしくクリエイティヴな場だった」

『★』収録曲“I Can't Give Everything Away”
 

――ボウイとはジャズの話をしましたか?

「ああ、したよ。とにかくジャズが好きだということ、そしてジャズ・ミュージシャンをよく知っていると感じた。チャーリー・パーカーチャールズ・ミンガスジョン・コルトレーンなど、数多くの偉大なミュージシャンについても話したね。どのアーティストの音楽もすべて網羅していて、とにかく根っからのジャズ好きだった」

――『★』であなたのサックス・プレイに驚いたリスナーも多いと思います。演奏について心掛けていること、大切にしていることはありますか?

「いつだって心を込めて、そして誠実に(自分の)ありのままに演奏するよう心掛けているよ。そして一緒に演奏しているメンバーとの関係を良く保ち、音楽に尽くし、どの瞬間も認識して演奏することだと思っている。また、その曲に対する自分の捉え方や熱情が、インプロヴィゼーションや演奏そのものにきちんと反映されているようにすることだね」

――特に影響を受けたサックス奏者や、あるいは演奏に影響を与えたサックス以外の音楽があれば教えてください。

「あまりにもたくさんいてね。まずは、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーン、チャーリー・パーカー、ウェイン・ショータージョー・ヘンダーソンマイケル・ブレッカーなど、挙げだしたらキリがないよ。あ、レスター・ヤングも追加させてほしい。それに、デューク・エリントンハービー・ハンコックマイルス・デイヴィスフレディ・ハバードトニー・ウィリアムズエルヴィン・ジョーンズ……とにかくたくさんいるんだ。一方で、ジャズ以外のミュージシャンでインスパイアされた人も多い。例えばさっきから話に出ているデッドマウスやエイフェックス・ツインに、スクリレックス、ケンドリック・ラマー、ボーズ・オブ・カナダ。あとはノアーだね、彼らはかなり気に入っている」

マイケル・ブレッカーの98年のライヴ映像
ノアーの2010年作『Louis Cole And Genevieve Artadi』収録曲“The Mystery Of A Burning Fire”
 

――マーク・ジュリアナ、ジェイソン・リンドナー、ティム・ルフェーブルによるこのグループで今後も活動を続けていくのでしょうか?

「僕はもともと、何年も先を見据えたようなプランを立てたりはしないんだ。ただ、いま一緒にやっているメンバーは最高さ。プレイしていて本当に楽しいし、まさに夢のようなバンドだから、もちろん続けていきたいと思っている。でも、ほかのアーティストとのコラボレーションもやっていきたいね。いま現在でいえばポップ/エレクトロニック方面の音楽に興味があるけど、そのほかのジャンルについてもオープンに考えているよ」

――来年予定されている来日公演はどのようなものになりそうですか?

「そうだね、『Beyond Now』からの曲に、『Casting For Gravity』と『Fast Future』からも数曲、あとはデヴィッド・ボウイの曲もいくつかインストゥルメンタルで演奏すると思うよ」

ダニー・マッキャスリン・グループによる『★』収録曲“Lazarus”のカヴァー映像

 

ダニー・マッキャスリン来日公演
日時/会場:2月1日(水)、2月2日(木)ブルーノート東京
開場/開演:
・1stショウ:17:30/18:30
・2ndショウ:20:20/21:00
料金:自由席/7,500円(税込)
※指定席の料金は下記リンク先を参照
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