いまロックンロールのイスに誰も座ってないのなら取っちゃおう
――Ryujiさん&Koさんの、リズム隊の2人のお話も訊かせていただけますか?
Ryuji「沖縄出身ということもあって、〈晴れてる〉音楽が好きですね。ボブ・マーリーなどもよく聴きますが、特に好きなのは女性のシンガーで、ジョニ・ミッチェルやジュディ・シルとか。母性を感じて癒されるんですよ」
――ちょっと待ってください。ジョニ・ミッチェルもジュディ・シルもダイレクトに〈晴れ〉という感じでは……。
Ryuji「ないですね(笑)」
Ko「こいつは言うことが本当に適当なんですよ(笑)」
Ryuji「すみません(笑)。たぶん、優しい音楽が好きなんだと思います。でもドラムを叩くときは、クラッシュとかパンクからの影響が大きいですね」
――かつてはHi-STANDARDのコピーをしていたということですが、ルーツとしては70年代のロンドンやNYのオリジナル・パンク寄りなんですか?
Ryuji「もちろんそこもなんですけど、最初に出会ったのはサム41、グリーン・デイ、サブライム、ランシドとかの90~2000年代のパンクだったので、影響としてはそのあたりがいちばん大きいかもしれないですね」
――クラッシュに関してはファンクやレゲエの要素を採り入れたスタイルということで結び付けられるんです。でもサム41となると、ああいった速い8ビートの曲ってThe ManRayにはないので、ちょっとわからなくなってきますが。
Ryuji「スタイルとしては全然違いますからね。気持ちの部分です」
Takuro「そこは僕らメンバーは感じてますよ。彼がシャッフルを叩いていても、ひとつのものに対して集中して突っ込んでいく感じがあるんです」
――なるほど。ベースのKoさんはどうですか?
Ko「僕はグリーン・デイから入って、そこからボブ・マーリーやサブライムをTSUTAYAに借りに行ったのはよく覚えてます。ほかにも有名どころは10代の頃にいろいろ聴きました。ストロークスやリバティーンズにもハマりましたし、とにかくポップな曲が好きなんですよ。それは自分がめざすThe ManRayの音楽にも通じていて、地下に潜っていくより多くの人に届くものが作りたいんです。音楽的なベースは何なのかとなると難しいんですけど、ベックみたいにジャンルに囚われずいろんな表現ができたら良いですよね」
――ベース・プレイヤーとしてはいかがですか?
Ko「スタジオ・ミュージシャンが弾くラインというか、整っているベースが好きです。ファンクだから黒人のようにとか、ポール・マッカートニーっぽくとか、そういうのは無いですね。やったところで板に付かない気がするので。いちばん考えているのは曲の良さを活かすためにどう弾くか。ベース1本で曲の印象ってずいぶん変わるので、そこはかなり悩むこともあります」
――みなさんが共通して好きなアーティストや作品はありますか?
Ryuji「やっぱりビートルズかなあ。レッチリも大きいよね」
――レッチリと言うと、The ManRayはジョン・フルシアンテのイメージがあるんです。
Ryuji「あ、そうですね。たしかにジョンはめちゃくちゃ大きいです」
――ギターが立った音楽ということもあるし、ソロ・アルバム『Shadows Collide With People』のような自由でカオスだけど一筋の光があるような音楽性も、The ManRayの感覚に近い気がするんです。
Ryuji「それでいきましょう(笑)!」
Takuro「実際、キャプテン・ビーフハートのようなエキセントリックな音楽やヒップホップ、ドイツのノイやカン、さらにインダストリアルなものとか、ジョンに出会ったことでいろんな音楽の世界に入って行くことができましたしね」
――ちなみにこの場には来られなかったギターのTenshiroさんはどうなんでしょう?
Takuro「Tenshiroもジョンは好きですね。彼はギタリストとしてはジョンとはまた違った味があると思うんですけど、プレイヤーとしてヒーローになれる奴だと思うんです。メンバーの中では一番オタク気質で、それがThe ManRayの色にもなってます」
――Tenshiroさんが〈弾きすぎる〉くらいがちょうどいいですよね。
Ko「僕もそう思ってます。ジャムじゃないですけど、彼がスタジオで自由に弾いたフレーズが完成形になることもよくあって、“Brown Sugar”のサビはTenshiroがその場で弾いていたアイズレー・ブラザーズみたいな感じがもっともしっくりきたんです。意図したものとは違う色が出てもそれがカッコ良ければオーケー」
――“Brown Sugar”はリズムの展開もおもしろいですよね。ジワジワと腰にはまってくる感じ。
Ryuji「ギターはファンクな感じなんですけどドラムの入りはサンバなんですよ。それがサビになるとファンクに。これも感覚でやったので、そう感じてもらえたら嬉しいです」
――1曲目に“Brown Sugar”とくるとローリング・ストーンズの『Sticky Fingers』(71年)を意識したのかどうか気になるところですが。
Takuro「単純にホワイトでもブラックでもどっちでもない色……ぶっちゃけ別に灰色でも良かったんですけど、連想的な感じで言葉のリズム感が良かったのとコーヒーが好きなので〈ブラウン・シュガー〉にしようと。ダークな意味もある言葉だし、歌い方もヘロヘロでちょうど良いとも思って」
――そういったさまざまな音楽的要素を含んだThe ManRayの音楽を、あえて一言で表すとすればなんだと思いますか?
Takuro「〈ロックンロール〉でありたいですね。音楽的なやり方というよりは気持ちの話ですが、何か強い目的を持ってやるという意味で」
――ロックンロールが表現していることに惹かれたということですね。
Takuro「そうですね。だから演奏する音楽はもはやロックじゃなくても良いし、あえて流行りと逆を行くみたいな、少数派の音楽に魅力を感じるんです」
――時代とは逆を行きつつもKoさんがおっしゃったように〈多くの人に届けたい〉という思いがある。
Takuro「マスに向いてなければカウンターにもならないですからね。わかりやすいものでありつつも〈関係ないよ〉みたいな。最初から万人にウケることを狙って、そこで勝負する楽しさもあると思うんですけど」
――なぜ、それをしないんでしょう?
Takuro「音楽的に巧みにやって伝えていくより、キャラクターで勝負したほうが強いと思うこともありますし、本当はやりたいですよ。それでアイドル的な人気が出るのも良いですよね。でもそれも好きじゃなきゃできないし、僕らはそういうタイプじゃないし……歳も20代後半で、顔もこんなですからね(笑)」
――みなさんカッコ良いですけど、フレッシュな感じではないですよね。濃い(笑)。
Takuro「僕らがやろうとしているのはビートルズならいきなり『Revolver』から始めるみたいなイメージ。それでも広く伝えられる可能性はあると思いますし」
――〈広く伝えたい〉という視野で見たときに、今世界的にインディー・バンドはシーンから抜け落ちていて。先ほど名前も挙がったストロークスやリバティーンズらが出てきた2000年代のときのような希望はない。
Takuro「そこに関しては椅子取りゲームじゃないですけど、自分たちが一番座りやすいところが〈空いてるじゃん〉って思ったんですよね。そのカッコ良いポジションに誰も座ってないなら取っちゃおうって」
Ko「そうだね。それで少年たちが〈俺もロックしてえ〉って思うようなことをビシッとやりたい」
Ryuji「基本はパンクな精神でいたい。お客さんにもついて来てほしいです。東京でやるなら攻めていたいし、リスナーやThe ManRayが持っている熱をまた誰かが感じて広がっていくようなエネルギーを大切にしたいですね」
LIVE INFORMATION
〈Block Party presents“The ManRay-You will be mine-”〉
日時:2017年6月16日(金)
場所:東京・下北沢THREE ※入場完全無料
開場/開演:19:00
出演:The ManRay、The Plashments
DJ:Kosuke Harada、Yuto Nagatsu、ICHIRO
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