ディスコティークでファンキーなサウンドに彩られた2016年のファースト・アルバム『PLAY LIST』で、男性アイドルのファンのみならず多くの音楽フリークの耳目を集めたボーイズ・グループ、CUBERS。彼らはこの秋、青と赤を基調とするグループのイメージカラーに沿うようにして、春にリリースしたEP『シアン』と対をなす形で新EP『マゼンタ』を完成させた。

CUBERS マゼンタ Bermuda(2017)

 「近年の男性アイドルはエレクトロ系が多いなかで、僕たちはブラック・ミュージック要素を強く採り入れているんです。見た目の派手さとかだけじゃなくて、一般の方にも〈アイドルでもこういう曲があるんだぞ〉というのを届けたい。だから100円あげてでも聴いてほしいんです(笑)」(綾介)。

 その〈100円あげてでも〉というのは、タワーレコード渋谷店で無料のサンプルCDを配布し(その数は1万枚を突破した)、そこに封入された引換券をイヴェント会場に持っていくとキャッシュ100円がもらえるという施策のこと。もはや無料すらも飛び越してマイナス100円のプロモーションを展開した。

 「この時代にどうしたら聴いてもらえるのかと考えたときに、こっちからお金をあげるというのは前例がないんじゃないかということになって。そんな案が会社で通るのかってスタッフさんと話してたんですけど……通ってしまった(笑)。僕たち自身が一番驚いてます」(TAKA)。

 こうした奇策に打って出るのはやはり、音楽的に勝負をしているからこそ、何が何でも聴いてもらいたいのだという意気込みの表れとも取れる。『マゼンタ』は、ロック的なバンド・サウンドにアプローチして拡がりをみせた『シアン』から一転、『PLAY LIST』の延長線上と言えるグルーヴィーな楽曲集に。これぞCUBERSな仕上がりになった。

 「CUBERSらしさのなかで色んな曲調が入った一枚になったと思います」(優)。

 「やっぱり楽曲がいいんですよね。自信を持ってかっこいいと思える」(春斗)。

 「楽曲を作ってくれる制作陣には絶対的な信頼がありますね。ただ、『PLAY LIST』のときはレコーディングでいっぱいいっぱいな部分はあった。だから、あれから変わったぞっていう面を見せてやろうっていうのはありました」(TAKA)。

 初期と比べると歌唱面で表現力が格段に進化している。新たな領域へと手を伸ばした『シアン』経過後だからこその成長とも言えるのではないか。『マゼンタ』は、聴けば聴くほどにヴォーカルのマイク乗りの良さや、ちょっとしたニュアンスのつけ方にも変化が見て取れる。

 「ホントにまだまだなんですけど、そう言われるとちょっと……ありがたいです(笑)。『シアン』はライヴを想定してレコーディングしたんですけど、今回の『マゼンタ』は〈会えない時間にも聴いてほしい〉がテーマなので、いったんライヴのことは考えずに、音源として、作品として成立するということだけを考えて臨みました」(TAKA)。

 「素敵な楽曲をいただいてるし、最近は男性アイドルを聴かない人から聴いてもらえているという実感もあるので、もっとちゃんと表現しないといけないっていう意味でのプレッシャーもあります」(末吉9太郎)。

 「レコーディングのチームがガッチリ固まったというのもあるかもしれない」(優)。

 「うん。僕らのことを理解してくれてるからやりやすいですね。僕らも制作側の意図を少しずつ理解できるようになってきたのかもしれないね。最初は90年代のディスコファンクって言われても、正直〈はぁ……〉みたいな感じだったんですけど、少しずつ勉強していって、自分らでもパフォーマーとしての意識が内側から出るようになったんだと思います」(綾介)。

 現在進行形で変化しているCUBERSのいまを捉えた『マゼンタ』を聴いてみてほしい。

 

CUBERS


TAKA、優、春斗、綾介、末吉9太郎から成る5人組のボーイズ・グループ。2015年4月より仮名称で活動を開始し、7月にCUBERSとして正式に結成。10月にデビュー・シングル“SHY”を発表し、初のワンマン・ライヴを行う。2016年2月の“Bi'Bi'Bi'”、7月の“STAND BY YOU”とコンスタントにシングル・リリースを重ね、〈聴けるボーイズユニット〉に方向転換して発表した9月のファースト・アルバム『PLAY LIST』が高い評価を得る。年末には“ホワイトスノー”をフリー配信。今年に入ってからは4月にファーストEP『シアン』を発表し、定期的なライヴや個別の活動でも注目を集めるなか、このたびセカンドEPとなる新作『マゼンタ』(Bermuda)をリリースしたばかり。