INTERVIEW

BTB特効『SWEET MACHINE』 季節を彩るハマのトークボクサーが初オリジナル作に仕込んだ新たなチャレンジを語る!

BTB特効『SWEET MACHINE』 季節を彩るハマのトークボクサーが初オリジナル作に仕込んだ新たなチャレンジを語る!

日常から生まれた自然なメロウネス

 「トークボックスってわりとこう、シュッとしてて美声でオシャレでカッコイイみたいなイメージってあるじゃないですか。そういう偏ったイメージみたいな部分に対して、そこへの反抗期みたいな時もこの4年の間にはあったりしました。やっぱどこ行っても〈メロウ〉とか〈スウィート〉を求められて、それはそれでありがたいことなんですけど、〈それだけじゃないんだ〉っていうのをちゃんと伝えたかったってのはありますね」。

 PAN PACIFIC PLAYA(PPP)に所属するトークボクサー・デュオのLUVRAW & BTB(以降LB)で名を広めてきたBTB改めBTB特効。もともと〈特攻〉と名乗っていたレッキンクルー時代から数えれば長いキャリアの持ち主であり、近年はZEN-LA-ROCKらのプロデュース・ワークでもお馴染み。2014年には名曲をトークボックスでカヴァーした『Back To Basic~俺とお前篇~』を初のソロ作として発表していたが、同作はもともとLBでの活動中に手を付けていたそうで、今回リリースした初のオリジナル・アルバム『SWEET MACHINE』に注ぐ思いには格別のものがあるはずだ。冒頭の言葉通りの幅広さと独自性が満載された今作では、メロウ&スウィートなトークボックスの魅力も十分に披露しつつ、それだけじゃないトラックメイカーとしての持ち味、さらにシンガー・ソングライターとしての新たな側面もプレゼンされている。

BTB特効 SWEET MACHINE PAN PACIFIC PLAYA/VYBE(2018)

 

いろいろやりたくなっちゃって

 リリース時期が夏になったのは制作の遅れに起因する偶然らしいが、波音から始まるこのアルバムが夏に(も)ハマるのは必然だ。もともとは前作のリリース後から構想はあったというから、実に4年越しの力作ということになる。

 「カヴァーで一枚作ってみたことで、自分の好きなコード進行だったりとか、メロの作りとか、曲の構成とかが、勉強じゃないですけど、身体に染み込んで。そのうえで〈次はこういうことができるな〉っていう考えはぼんやり浮かんでました。で、その間に7インチとか12インチも出してったので、最初はそれをまとめればアルバムになるなって思ってたんですけど、いざ作りはじめてみたら、いろいろやりたくなっちゃった感じで(笑)」。

 昨年にはZEN-LA-ROCKとのアーバン・ファンク“Suga Suga Disco Nights”や気持ち良いハウス“Keep On Stupid Fresh!”を含むアナログ『SUGA SUGA STUPID FRESH! EP』を発表し、Shinjuku Tracksからはスピナーズのレゲエ・カヴァー“I'll Be Around”も7インチでカット。それらの楽曲ももちろんアルバムの振り幅を構成する重要な要素となっている。

 「いろんな面を見せたかったというよりは、自分が自然に通ってきて、聴いてきたものや周りから受けてきた影響をまっすぐ出すと、こういう内容になったというか。自分を説明するにあたって単純に好きなものを出したら、自然とこのバランスになった感じですね」。

 得意のコズミック・ブギーからラテン、トロピカル・ダブ、ハウスまで、JINTANAやKASHIFといったPPP仲間や高橋一(思い出野郎Aチーム)、go max 剛田(井の頭レンジャーズ)の助力も得つつアレンジの多様さは過去最高。なかでも鮮烈なのがスタイリッシュなグラウンド・ビートの“ワイルドに最高の未来へ”だ。

 「ラフはいちばん最初に出来たんだけど、いちばん時間がかかったというか、ずっとリピートで聴きまくってた曲ですね、まず最初に歌詞とメロがあって、コードと簡単な打ち込みのデモ段階では違うビートでハメてたんですけど、作ってくうちにグラウンド・ビートがハマってきた形で。今回は歌詞ありき、言葉ありきで作った曲が多くて、〈こういう内容を歌いたい〉っていうのがまず頭にありました。作り溜めてたトラックから〈この歌詞にハマるのはどれだろう?〉って選んだり、〈この言葉にハマるコードで作ってみよう〉っていう作り方の順番でしたね。日本語ラップも普段よく聴くし、昭和歌謡とか和モノって歌詞がおもしろいじゃないですか? そういうところの影響もあって、やっぱり歌詞をおもしろいものにしたいなって」。

 

実体験を元に歌いたかった

 もともとある種の匿名性も纏いながらフィーリング重視のワードをリフレインする用法がロボ声の良さのひとつでもあるが、本作での彼はほぼ全編で日本語詞を披露。日本語詞のトークボックス作品というだけでも珍しいうえに、その意識はチューブから口を離した地声での表現にも及び、肉体の衰えや日常の不満、家族への思いなどを伸び伸びと歌う。菱沼彩子によるジャケでも初めて本人が描かれているように、より主役の個が前に出てきた印象だ。

 「匿名感の良さもあるんですけど、認知もされつつあるので、今回それをやる必要はないかなって、歌詞での自己表現に重きを置いてみようって意識したところはあります。地声で歌ってみるとか、今年1月から始めたギターを入れるとかも、今回やりたかったことでした」。

 そうした流れで迎える山場がLatin Quarterのトラックに乗った“Yokohama Flames”だ。これはOZROSAURUSやCKB、石田あゆみ、サ上とロ吉らへの敬意も交えつつ地元での日常を祝福する名曲だが、そんな感動的な大団円に終わらず、15歳の頃の甘く苦い思い出を感傷的に振り返った“このまま海まで”でシメるあたりも妙なリアルさを感じさせる。

 「見栄を張って作っても、やっぱり歪みがどっかにくるし、ファースト・アルバムだからこそ今回はリアルな内容っていうか、等身大というか……架空の歌詞ではなく、実体験を元にした内容で歌いたかったっていうのがあります。ただ、歌詞書くことにまず慣れてないし、照れもあって苦労したんですけどね(笑)」。

 過去も現在も含めて心中の言葉を開陳した『SWEET MACHINE』。今後の彼はPPPの新コンピなども控えつつ、「やりたいトラックメイカーの人がいたりとか、自分の生ヴォーカルをもうちょっと突き詰めてみたいっていう欲求もあったり。自分のトラックで女性ヴォーカルとかいろんな人に歌ってもらったりとか、それもやりたいんですよね(笑)」と、さらにマイペースかつ意欲的に動いていきそうだ。なお、以前から考えていたという改名については、「以前からメールを貰うとたまに〈特効〉って変換ミスしてる時があって、意味としていいなって思って。昔から知ってる人は〈とっこう〉って呼ぶし、すんなり受け入れられるかなって。まあ、暴走族の特攻隊長やってたわけでもないし、〈40になってまで攻撃してる場合じゃねえな〉みたいなところですね」。

 ともかくトークボックスの特殊効果を使いこなす彼には相応しいネーミングとなって気分も一新、今後もBTB特効はスペシャル・エフェクトと人間味を織り合わせながらロマンティックな音の快楽へと誘ってくれるに違いない。

『SWEET MACHINE』に参加したアーティストの関連作を一部紹介。