〈ハンサム四兄弟〉が4部構成で贈るとっておきの時間

 〈ハンサム〉ってなんだろう。もとは英語の形容詞handsome。日本では〈イケメン〉と同義で使われがちだが、本来は〈堂々とした〉〈立派な〉〈親切な〉〈寛大な〉〈品のある〉といった意味で女性にも用いられるすてきな言葉だ。そうやって考えると、磨き上げられた声と華やかな佇まいで人気の4人のバリトン歌手――宮本益光、加耒徹、近藤圭、与那城敬の魅力を形容するのに〈ハンサム〉ほどぴったりな言葉はほかにない、という気持ちにさせられる。

 〈4人のバリトンコンサート ハンサムなメロディー〉の発案者は、4人のリーダー格・宮本益光。「有能で可愛い後輩たちのことを思い浮かべながら、ふと脳裏をかすめたのがこの〈ハンサム〉という言葉でした」と語る宮本のコメントはとびきりのユーモアに満ちている。宮本曰く〈ハンサム四兄弟〉の四男・加耒徹は、「最もインテリなハンサム歌手」。バッハからイギリス歌曲までを歌いこなす守備範囲の広さが持ち味だ。三男・近藤圭は、「二枚目なのに、喋ると愛くるしいほどの三枚目キャラ」。でも歌となるとキリリとハンサムというギャップが素晴らしい。次男・与那城敬は、「最も端正なハンサム歌手」。風格も増し、舞台での存在感も際立つ中堅といえるだろう。そして自身を「ヒョーキン兄さん」と語る長男・宮本益光こそ、彼らが体現する〈ハンサム〉の塊だ。経験に裏打ちされた魅惑的な演唱はもちろん、コメント一つとっても〈ハンサム〉の本来の意味を深く理解する(しかもそれをひけらかさない!)知性と、後輩たちへの愛がほとばしっている。そして、コンサートの構成や選曲も知的で愛に満ちていてゴージャスなのだ。

 プログラムは4部構成。〈私の好きな歌〉、〈オペラアリア集〉、そして〈あなたに…〉と名づけられた映画&ミュージカル名曲集では、“闘牛士の歌”(与那城)、“ムーンリバー”(加耒)といったおなじみの名曲から“ブルックにて”(近藤)、“木犀のセレナード”(宮本)といった佳曲までが、4人それぞれのこだわりと愛に満ちた選曲で登場する。加えて、宮本とのコンビでも知られる作曲家・ピアニスト加藤昌則の歌曲集が、本人の伴奏で楽しめる。さらに、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の若きコンサートマスター﨑谷直人がhandsome弦楽四重奏を率いて参戦する。なんと行き届いたハンサムぶりだろう!

 オペラのキャラクターになぞらえるとわかる。低音の魅力もさることながら、バリトンの美点はやはりこの〈ハンサム〉精神にあるのだと思う。秋のはじまりに、知的冒険に満ちたハンサムな午後を堪能しよう。

 


LIVE INFORMATION
4人のバリトンコンサート ハンサムなメロディー
2019年9月22日(日)東京・めぐろパーシモンホール 大ホール
開演:15:00
出演:宮本益光、加耒徹、近藤圭、与那城敬
加藤昌則(ピアノ)/handsome弦楽四重奏:﨑谷直人(ヴァイオリン)、桜田悟(ヴァイオリン)、高野香子(ヴィオラ)、門脇大樹(チェロ)
第1部 私の好きな歌/第2部 オペラアリア集/第3部 加藤昌則歌曲集/第4部 あなたに…
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