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ベートーヴェンがいま生きてたら、絶対ロックをやってたと思う

――楽曲のことも聞かせてください。今作は1曲目の“Dearest "B"”からロックしてますが、この〈B〉はベートーヴェンの〈B〉だそうですね。

「もしベートーヴェンがいまの時代に生きていたら絶対、ロックをやってたと思うんです。“月光”の第3楽章にしても“運命”にしても、常にビートが鳴ってるような楽曲ですし。きっと〈もうアコースティックなピアノなんて古いよ〉って言って、電子楽器や打ち込みを使いこなしていると思うんですよね。ベートーヴェンは来年2020年が生誕250年のアニヴァーサリー・イヤーということもあって、彼に捧げる曲でこのアルバムは幕を開けたいなって。それにバンド・アルバムではありますが、ルーツであるクラシックな要素は残しておきたくて」

――3曲目の“Inst Heroes”も、それぞれの楽器が物凄いテンポで弾きながらグイグイきて圧巻です。

「今回はどの曲もライヴ感というか、バンドの生演奏感を極力重視しています……限界まで。昔は生の楽器を演奏しているようなサウンドを機械で出すことが凄かったけど、いまは逆に、機械のような無機質な音を人間が有機的に作ってるほうがおもしろいんじゃないかって思ってます。特にゲーム音楽のように永遠と鳴ってるようなサウンドを、敢えて生演奏でやる。4曲目の“Members”とかはまさにそれで、高井くんがずっと下で弾いてるちょっと猥雑な、ボカロというかロボットが喋っているようにも聴こえるあのシンセの音。彼はあれを約14分間ずっと繰り返しやってくれてるんですよ。ちょっとでもズレたら録り直しになるところだったので、終わったらもうみんな拍手でしたね」

――彼があのシンセを弾いている間に、TEAM-2BRO.のANIJYA(兄者)、OTOJYA(弟者)、OTSUICHI(おついち)のナレーションによるバンド・メンバー紹介が入るわけですね。ここが今回のアルバムの最大の聴き所かもしれません! ゲーム実況動画を投稿・配信して人気を集めているYouTuberのTEAM-2BRO.とは、ゲームを通じて知り合ったんですか?

「元々は僕のほうが彼らの大ファンで、Twitterとかをフォローしていたんです。そしたら、僕がコナミの『メタルギアソリッド』の音楽をやっていた関係で、彼らも僕のことをフォローしてくれていたみたいで、それを知って吃驚したんです。YOSHIKIさんもそのパターンだったんですが、好きな人に自分がフォローされているのを知った時の嬉しさったら、ないですよね……。それですぐ彼らにメールして、連絡を取り合ったのが関係の始まりです」

――素敵な声ですよね。はじめ、プロの声優さんかと思いました。

「実際にOTOJYAさんの声が『メタルギアシリーズ』のキャラクターの声を担当している人気声優の大塚明夫さんにそっくりだってネットでも話題になっていましたよ。僕も最初はそうだと思ってた(笑)。でも、プロという点では彼らももちろんプロで。好きなことを仕事にしているからこその、あの熱量がいいんですよね。自分も好きな音楽をやって生きているから共感できるんです。そして、だからこそ今回のバンド・メンバーにも、もっと自由に好きなことやってほしくて」

――いろいろ繋がってますね。そして5曲目の“See you soon”はバラード調の楽曲です。

「自分だけで作ってもよかったけど、この曲はみんなに参加してもらって一緒に作った曲です。今回のアルバムでは基本的に、メロディーとリズムとハーモニーの3つの柱を決めたら、あとの7~8割はミュージシャン任せ。みんなにはコード譜とか最低限の紙ペラ1枚くらいしか渡してないんです。ぶっちゃけ、インスト・バンドやるのにここまで時間がかかったのも、それが可能なこのメンバーを集めるのに時間がかかったからなんです」