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【西山瞳の鋼鉄のジャズ女】第19回 BABYMETAL『METAL GALAXY』を全曲レヴュー!

メタラーのジャズ・ピアニストがHR/HM愛を綴ります

クラシックとユーロ・ジャズからの影響をもとに国内外で活躍中のジャズ・ピアニスト、西山瞳。ジャズ界に身を置きながら、HR/HMをジャズ・カヴァーするプロジェクト・NHORHMでは現在までに4枚のアルバムをリリースするなど、メタル愛好家としても知られており、〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉は、そんな西山さんに〈メタラーのジャズ・ピアニスト〉の視点からHR/HMのおもしろさを綴っていただく連載です。毎度高アクセスをいただいており、西山さん、そして読者の方々に大感謝です。

そして今月は、〈鋼鉄のジャズ女〉としてはこれしかないですよね。BABYMETAL待望のニュー・アルバム『METAL GALAXY』でいきましょう。〈BABYMETALのこととなると正常でなくなる〉西山さんに、満を持して全曲レヴューしていただきました。 *Mikiki編集部

★西山瞳の“鋼鉄のジャズ女”記事一覧

 


BABYMETALのサード・アルバム、『METAL GALAXY』は、もうお聴きになりましたか?

『METAL GALAXY』は、もうお聴きになりましたか!?

『METAL GALAXY』は、もうお聴きになりましたか!?!?

こんにちは。BABYMETALのこととなると、正常でなくなる西山瞳です。

以前からのジャズ・ファンの方には、「西山さんがおかしくなった」と言われておりますが、感動に正直に生きているだけと申し上げておきましょう。

ついに、3作目のアルバムが発表されました。
われわれファンからすれば、待望どころではない、待ちくたびれて離脱した人もいるぐらい待ちに待った新譜です。本当に、飢餓状態がすぎました。(過去記事参照

でもわれわれファンは知っているのです、辛抱強く与えられるものを待っていれば、予想をはるか超えたものを手に入れられることを。

BABYMETAL METAL GALAXY Toy's Factory(2019)

 

というわけで、今回は10月11日発売のBABYMETAL『METAL GALAXY』について書きます。

とにかく驚きの内容でした。
2作目『METAL RESISTANCE』(2016年)は、メタルのサブ・ジャンルを巡るアルバムでしたが、3作目は『METAL GALAXY』の名にふさわしい、ワールド・ミュージックやドメスティックなポピュラー音楽と結びついた、既成概念を飛び越えたメタル銀河に旅立って行きました。

★『METAL RESISTANCE』の時の感想

ファンというのは勝手なもので、好きなアーティストには前作を上回る内容を期待していますが、ただの前作のアップデート版ではなく、全然違う角度から切り込み、斜め上から「これでも付いてくるか!」と投げかけてくるのがBABYMETAL精神。もしかしたら、いままで応援してきたファンからしても「こんなのメタルじゃない」と、戸惑うような内容かもしれません。

私自身も初回聴いた時は鳩が豆鉄砲食らったような状態でしたが、聴けば聴くほど「『METAL GALAXY』最強」と叫びたくなるアルバムでした。

今回は2枚組ですが、収録時間は短いので1枚で収まる長さではあります。しかし、2枚別にする意味が、大いにありました。

1枚目は、“FUTURE METAL”から出発。まず今回は、打ち込みでエレクトロな幕開けに驚きます。〈GALAXY〉の部分を予感させるサウンドであるとともに、「あれ、今回はバンド・サウンドじゃないのか……?」という、新しい手触り。

次の“DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)”が、超問題曲なんですね。
まさかの、90年代ユーロビート系メタルなんですね。私も1回目に聴いたときは「えっ、これメタル……?」と、変な顔をしてしまって、感想に困りました(いつものごとく、聴けば聴くほど好きになったんですが)。でもよく考えると1作目『BABYMETAL』(2014年)収録の“いいね!”など、近いテイストの曲はあったんですよね。
そしてゲスト・ギターにTak Matsumoto!
当然のごとく私はB’zで育っておりますが、順当に考えたらBABYMETALのフィーチャー・ゲストはYOSHIKIだろうと思うところを、まさかのTak Matsumoto! 発表された時は興奮しました。これもよく考えたら、“LADY NAVIGATION”(B’z の91年のシングル)など、ダンサブルなロックをやってきているわけですから、大納得の大御所ゲストなんですよ。着眼点にぐっときます。

続く“Elevator Girl”は、“あわだまフィーバー”(2016年作『METAL RESISTANCE』収録)を受け継ぐような、BABYMETALらしい曲。
“DA DA DANCE”で強烈に驚かされた後にほっとしますが、しかし、少女たちが大人になっていくのに合わせ〈あわだま〉よりグッとクールになっていて、逆に前作からの変化、成長を感じます。
こちらは、以前書いた“Elevator Girl”のレヴュー記事をご参照下さい。

“Shanti Shanti Shanti”は、歌唱も振り付けも新境地の、インド風メタル。
ボリウッド調のダンスや歌唱、タブラのような音も入り、ヘヴィなサウンドとエキゾチックさとSU-METALの通る声とが素晴らしくブレンドされて、他にないサウンドとなっています。これは振り付けと一緒に、ライヴでぜひ味わってほしい曲。ちゃんと正確に歌おうとしたら、地味に難しい曲だと思いますよ。

こちらも目玉曲であろう、“Oh! MAJINAI (feat. Joakim Brodén)”は、サバトンのヨアキム・ブローデンとのコラボ。フォーク・ダンスのような雰囲気で、北の方のヨーロッパでフィドルが演奏するようなリフ。

そして“Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)”には本当に驚かされました。こちらはアーバンな曲調で、宇多田ヒカルが歌っていても違和感のない曲。今回のアルバムは全体的にSU-METALの歌が爆発的にレベルアップしていて、しかもいろんなタイプの歌唱を聴かせてくれるので、アイドルって何だ?と考えたりしました。アイドルは不完全さが愛されることだと思っていたのですが、いよいよSU-METALは完全体に近づいて行っている……。
MOAMETALのKAWAIIの完全体進化も恐ろしすぎるし、アヴェンジャーズも強力だし、いまのBABYMETALの無敵感はハンパないです。
ギター・ソロが超格好良いです。

“↑↓←→BBAB”。この星野源みたいなJ-Popらしいコード進行をメタルのサウンドに落とし込んで、言葉遊びとともにBABYMETALというジャンルに昇華するあたり、さすがです。サウンド・エフェクトも非常に活きていて、トラックの緻密な作り込みもあっぱれ。

1枚目最後の“Night Night Burn!”は、クラーベのリズムを取り入れたラテン・テイストのメタル。

1枚目は、ワールド・ミュージックとメタルの融合、もしくは日本の90年代以降のドメスティックなポピュラー音楽を巡る旅となっていました。
そもそも、すべてメタルとはまったく関係のない音楽です。
これをBABYMETALというフィルターを通して、一つの音楽にしてしまう。
なんて素晴らしいことでしょう。

 

仕切り直して始める2枚目は、“IN THE NAME OF”で出発。こちらは、2018年のダークサイド時期のライヴのオープニングで聴いていましたが、1枚目の楽曲たちとはまったくテイストが違う、誰が聴いても「メタルだ」と思うバンド・サウンド。2枚目はメタル・サイドのアルバムになるんだろうなと、全く違う予感の始まりです。

ちなみに、ダークサイドの時期は、私はそれはそれで楽しんでいました。
ただ、衣装が地味で、SU-METALとMOAMETALの可愛さがあまり伝わらなくて、「もっと可愛い二人を見せて! はっきりと!!!!」と、心の中で叫ぶ日々でしたが。

すみません、熱くなりました。
2枚目、本編最初の歌の曲は“Distortion (feat. Alissa White-Gluz)”。アーチ・エネミーのアリッサ姉さんのドスがきいています!! ありがとうアリッサ姉さん! 最高のコラボをしてくれて、本当に感謝しかないです。

“PA PA YA!! (feat. F.HERO)”は、最初は違和感しかなかったけれど、超絶アゲチューンの一曲。(過去記事参照

そして、誰もが驚いたであろう“BxMxC”ですよ。
SU-METAL、こんなこともできるんだ!
現在発売中の雑誌「ヘドバン vol.24」で、Mary’s Bloodのギタリスト・SAKIちゃんとBABYMETALファン対談をしていまして。その時に彼女に教えてもらったんですけども、曲中に出てくる歌詞〈わさび〉は聖飢魔IIのアルバム『The Outer Mission』(88年)の曲“不思議な第3惑星”のオマージュではないかと。
対談の後、帰宅して確認したら、なるほどー! さすが筋金入り信者のSAKIちゃん、そしてさすがBABYMETAL!と、嬉しくなっちゃいました。あとで出てくる曲について、「聖飢魔IIの“GO AHEAD!”みたいだなあ」と思ったりはしていたんですが、これは気がつかなかった。詳しくは「ヘドバン vol.24」をぜひご覧ください。

※聖飢魔IIの第十七教典/99年作『LIVING LEGEND』収録

“Kagerou”は少しインダストリアルの雰囲気で、これもSU-METALの歌が良いですねえ! こういう、少し退廃的な音作りには、SU-METALのまっすぐな声がとても合います。

そこからの“Starlight”、こちらは、シングルで出した時から大分ミックスを変えていますね。アルバム・ヴァージョンは少しアレンジも分厚くなって、より〈GALAXY〉感が出ました。

“Shine”。これが、最初に聴いた時から聖飢魔IIの“GO AHEAD!”を想起させて、それも泣けて仕方ないんですよ! それで、先ほど聴き比べてみたら、同じキーでした。そりゃ、想起しますよね……。
しかし〈まがいもの〉など言われ異端扱いされてきたBABYMETALですが、もっと前には聖飢魔IIやX JAPANがその道を切り拓いていたわけで、それらを明らかにオマージュし、繋がっているのは、激アツですね。

クロージングは、“Arkadia”、こちらはメロディック・スピードメタルを踏襲した一曲。きっちり、誰がどう聴いてもヘヴィメタルという曲で締めるあたりが、メタルの未来を背負っていく矜持を感じます。しかし、いままでの“Road Of Resistance”(2015年のシングル)などと同じ路線の曲ではあるのですが、SU-METALの歌は、当時より沢山の経験をして実力をつけ、とっても太いものになっていると思いました。このメタルを背負っている自負というか、「こんなのメタルじゃない」「まがいもの」という世評をひっくり返してきた自信というか、まさにその道のりを感じる最後の一曲でした。

 

元々メタルが好きで、ジャズで20年活動してきて、アイドルに一度もハマったことのなかった40歳目前の私は、『METAL GALAXY』の2枚を通して聴いて、最後の“Arkadia”にたどり着いて感動して泣いています。

ヘヴィメタル・カヴァー・プロジェクトのNHORHMで、BABYMETALの曲を2曲(“悪夢の輪舞曲”“THE ONE”)ジャズでカヴァーし、CDに収録していますから、最近ファンの方から「新譜も出たし、今度はどの曲をカヴァーするの」と聞かれます。が、まだそんなこと、とても考えることができないぐらい、興奮しております。というか、心がいっぱいすぎて無理……。

とりあえずは、〈METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN〉のさいたまスーパーアリーナのチケットが2日間当選したので、行ってきます!

 


PROFILE:西山瞳

1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシック・ピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I'm Missing You』を発表。ヨーロッパ・ジャズ・ファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、横濱ジャズ・プロムナード・ジャズ・コンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズ・フェスティバルに招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。

以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、全世界約15,000エントリーの中から自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコード・ジャズ総合チャート1位、HMV総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自己のレギュラー・トリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『シフト』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカヴァーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、YOUNG GUITAR誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズ両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。

自己のプロジェクトの他に、東かおる(ヴォーカル)とのヴォーカル・プロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグ・バンドへの作品提供など、幅広く活動。横濱ジャズ・プロムナードをはじめ、全国のジャズ・フェスティヴァルやイヴェント、ライヴハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。

 


LIVE INFORMATION

西山瞳pianoソロ
10月19日(土昼)東京・池袋 Apple Jump(03-5950-0689)
開場/開演:13:30/14:00~2sets 2,800円
http://applejump.net/

NHORHM
10月28日(月)東京・新宿 Pit inn(03-3354-2024)
西山瞳(ピアノ)、織原良次(フレットレス・ベース)、橋本学(ドラムス)
+Special guest SAKI(ギター)from Mary's Blood
開場/開演:19:30/20:00
前売3,000円+税/当日3,500円+税
整理番号順の入場になりますので、ご予約下さい。
http://www.pit-inn.com/

★ライヴ情報の詳細はこちら

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