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ジャズとクラシックの架け橋となるジャズ・コンポーザー

Photo by SHITOMICHI(vale.)

 

 ジャズ・コンポーザーとして活動を展開する挾間美帆が、3年ぶり2枚目となるリーダー作『タイム・リヴァー』を発表した。サウンドや楽器編成、参加メンバーといったあらゆる点で、1枚目の『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』の延長線上にある作品だ。

 「作曲家、アーティストとしての私のイメージが定着するまで、アルバムの内容や楽器編成はあまり変えないようにしています。ただ、作る曲はその時のインスピレーションの問題なので、必然的にけっこう変わってきます。もともとオーケストラが好きなので、アンサンブルはオーケストラとビッグバンドを足して2で割ったような室内楽団になっています」

挾間美帆 Time River Verve/ユニバーサル(2015)


”ジャズ・コンポーザー”とい う看板を掲げてはいるが、彼女は国立音楽大学でクラシックの作曲を専攻した後に、マンハッタン音楽院の大学院でジャズの作曲を学んでいる。引き出しを多く 持つ彼女は、ジャジーなハーモニーやリズム、インプロヴィゼイションを活かすいっぽう、アレンジした部分には精緻な音色のコントロールや各声部のポリフォ ニックな動きなど、クラシックの技法をふんだんに盛り込んでいる。

 とはいえ、先入観なしに聴いた彼女の音楽は、巧みに計算された構成感や利発なインプロヴィゼイションで知的好奇心をそそるいっぽう、全体的なサウ ンドやメロディにはたおやかさや肌触りの良さ、親しみやすさといったものが感じられるという具合に、多面的な魅力を帯びている。ラジオから音が聞こえてく るような冒頭の《アーバン・レジェンド》などは、そういった彼女の音楽、ひいては彼女自身の性格がよく表れている。ゲストのジョシュア・レッドマン(sax)やギル・ゴールドステイン(acc.)も、彼女の音楽性と見事に共鳴した演奏を聴かせている。

アルバムではオリジナル曲の他、「高校生の時に友達がやっていたコピー・バンドで演奏していてとても気に入っていた」という、ア・パーフェクト・サークルの《マグダレーナ》も取り上げている。原曲のクライマックスで叫び声を上げるロック・ギターを、サクソフォンのフリーキーなトーンに置き換えるなど、アレンジに工夫が凝らされていて、引き出しの多い作曲家の面目躍如たるものがある。

 「ジャズ・コンポーザーと名乗って活動することで、ジャズ以外のジャンルの方々から、『こういう、ジャズの要素が入った音楽がやってみたかったんだよね』と声をかけていただくようになったのが嬉しいです。将来的にはジャズとクラシックの架け橋になれればと思っていましたから」と語る彼女の爽やかな音楽は、ジャンルの壁を打ち破る強大なパワーを秘めている。

 

LIVE INFORMATION
挾間美帆 m_unit  
ニュー・アルバム 『タイム・リヴァー』 発売記念ライヴ
○10/15(木)1st:19:00開演 2nd:21:30開演
会場:ブルーノート東京
出演:挾間美帆 M_unit
www.jamrice.co.jp/miho/