INTERVIEW

グラスパー、BJザ・シカゴ・キッド、テラス・マーティンが来日! ブラック・ミュージック注目公演を橋本徹&柳樂光隆が語る

ロバート・グラスパー・エクスペリメント
7月20日(水)~21日(木)Billboard Live OSAKA(詳細はこちら
7月25日(月)~27日(水) Billboard Live TOKYO(詳細はこちら
7月24日(日)〈FUJI ROCK FESTIVAL'16〉(詳細はこちら

ジャズの革新を背負うアイコンが、最強のライヴ・バンドであるエクスペリメントを率いて再来日を果たす。昨年は原点であるピアノ・トリオの可能性を追求した『Covered』をリリース。そして、マイルス・デイヴィス生誕90年にして没後25年のメモリアル・イヤーとなる今年は、マイルス初の自伝的映画「マイルス・アヘッド」に音楽監督の一人として携わり、新たにグラスパーが作曲したオリジナル曲を含むサウンドトラックを発表(日本公開は12月予定)。さらにもう一枚、マイルスの音源にグラスパーが斬新な解釈を施した『Everything's Beautiful』も5月25日に日本先行リリースされる。ここ数年で目覚ましい盛り上がりを見せる現代ジャズの代名詞であるグラスパーは、ライヴの実力も折り紙つき。今回は単独公演に加えて、待望の〈フジロック〉出演も決定しており、快進撃はまだまだ続きそうだ。

★グラスパーがマイルス関連作を語るインタヴュー記事はこちら

MILES DAVIS,ROBERT GLASPER Everything’s Beautiful Sony Music Japan International(SMJI)(2016)

柳樂「グラスパーにまつわる最近のトピックといえば、(エクスペリメントのメンバーである)マーク・コレンバーグKCベンジャミンが、日本のビールのCMに参加していたんですよ(詳細はこちら)」

橋本「ナイス! そして、いまグラスパーを語るうえで欠かせないのは『Everything's Beautiful』だろうね。トリビュートの概念を覆したというか、新しい形を示したというか。普通だったらカヴァーとかオマージュ曲を用意して、アーティストに敬意を表するところを、グラスパーはほとんど新曲とも言えそうな作品を用意してきた。キャスティングも完璧だよね。エリカ・バドゥフォンテ、ビラル、ローラ・マヴーラハイエイタス・カイヨーテ、キング、ジョージア・アン・マルドロウレディシ……。そういった現代のシーンを代表する才能から、スティーヴィー・ワンダージョン・スコフィールドのような大物まで集結させている」 

柳樂「『Everything's Beautiful』は、カヴァーやリミックスではなくて〈再創造〉を謳った作品だけあって、発想としてはどちらかというと共演/共作に近い。それで、マイルスのオリジナル録音から制作しているんだけど、使っているのは演奏よりも歌詞が中心なんですよ。レコーディング中に喋っていた発言のアウトテイクを盛り込んで、マイルスの生涯を歌詞に採り入れている。だから、日本盤で歌詞をしっかり把握したほうが楽しめる作品だと思います」

橋本「代表作を再現するとか、そういう発想じゃないもんね。マイルスのエッセンスみたいなものを起点に、自分のアルバムを作っているのに近いというか」

柳樂「ビートも抜いてはいるんだけど、どこから抜いたか露骨にわかりそうな(目立つ)箇所は使っていなくて」

橋本「使っている曲もさすがだよね。いわゆるジャズのジャーナリズムでは見過ごされてきたけど、〈ここだよね!〉という箇所を見事に引っ張っている。それにまず感激したかな。最初に公開された“Ghetto Walkin'”が『The Complete In A Silent Way Sessions』から作られていたから、いきなり感動して。その次に公開された“Violet”も『Kind Of Blue』(1959年)の“Blue In Green”で〈そこを使うのかよ!〉みたいな(笑)。そういうのがいくつもあって」

※69年作『In A Silent Way』の前後におけるセッションを収めた3枚組ボックス・セットで、2001年にリリースされた 

柳樂「今回の来日では、グラスパーとマーク・コレンバーグ、KCベンジャミンにアール・トラヴィス3世というお馴染みの顔ぶれに加えて、DJサンダンスというメンバーが参加しているんですよ。正式な情報がまだ届いてないので、これは予想というか希望的観測に近いんですけど、『Everything's Beautiful』のリリース後にライヴをすることを踏まえて、もしかしたらマイルスの声ネタをDJで採り入れたいのかなと」

橋本「なるほど、それはDJを入れる必然性もあって、プレゼンテーションとしてスマートなやり方だよね。今回のアルバムは、『Black Radio』ならぬ〈マイルス・レディオ〉とも言えそうな(グラスパーらしい)アーバン・ミュージックな仕上がりだったし、ライヴでもぜひプレイしてほしいな」

DJサンダンスが参加した、約2時間のライヴ映像。ドレイク“Hotline Bling”もカヴァーしている

 

柳樂「前回の来日は『Covered』に合わせてのトリオ編成だったし、エクスペリメントとしての活動は1年間くらい離れていたわけだから、ライヴにも何らかの変化はありそうですよね」

橋本「間にトリオでのライヴを挿んだことで、きっとエクスペリメントのライヴに対する本人の欲求も高まっているよね。彼らがどう進化しているのか、そこにやっぱり注目するべきじゃないかな」

柳樂「グラスパーの新作も控えているという噂もあり、何かしら新しいモードを用意してくるのではないかと。最近は毎年欠かさず来日しているグラスパーですけど、DJのように曲をシームレスに繋いでいくエクスペリメントの演奏は、生で体感しなければ伝わらない迫力があると思いますね。〈セットリストは作らないし、俺たちは偶然性を大事にしている〉と本人も語っている通り、選曲や展開を毎回変えてくるし、生き物のようなインプロはいつだってスリリング。縦横無尽に叩きまくるマークのドラムスなど、今回も見どころは盛りだくさんだと思います」

 


今回取り上げたアーティストのほかにも、5月末はエスペランサ・スポルディングの単独公演が控えており、6月にはスナーキー・パピーが、〈フジロック〉ではグラスパーに加えて、カマシやジ・インターネットもやってくる。さらに、マックスウェルの初来日も8月に決定したばかりだ。ビッグ・リリースも連続しているブラック・ミュージックの活況を2人がどのように捉えているのか、最後に訊いてみた。

橋本「この間、最近の新譜についてまとめて原稿を書いたばかりなんだけど、ここ数か月は本当にすごいね(笑)。そういえば、マーカス・ストリックランドは来日しないのかな?」

柳樂「ブルー・ノートからのデビュー作『Nihil Novi』が大変なことになってましたね。プロデューサーがミシェル・ンデゲオチェロで、グラスパーやBIGYUKIピノ・パラディーノクリス・デイヴ、キーヨン・ハロルドも参加していて、年間ベストに入れるべき一枚だと思います」

橋本「同感! あれはかなり好きなアルバムだよ。やっぱり年間ベストに入ってくるだろうな」

マーカス・ストリックランドの2016年作『Nihil Novi』のトレイラ―

 

5月25日にリリースされるBIGYUKIのニュー・アルバム『GREEK FIRE』収録曲“Paradise Descended”

 

柳樂「黒人ではないけど、ジェイムスズーニーデラスと、ブレインフィーダーからの新作も充実してました」

橋本カルロス・ニーニョ&フレンズも最高だったな。ミゲル・アトウッド・ファーガソンネイト・モーガンデクスター・ストーリーヤソスに、マッドリブやカマシ・ワシントンまで参加していて。ミゲルは〈WORLDWIDE SESSION〉でのライヴも素晴らしかった」

カルロス・ニーニョ&フレンズの2016年作『Flutes, Echoes, It's All Happening!』収録曲“Flutes, Echoes, It's All Happening!”

 

柳樂「あとは、グラスパーがコモンの新作を一緒に作ってるんですよね。カリーム・リギンスがビートを手掛けているらしくて」

橋本ケイトラナダのファースト・アルバム『99.9%』にもカリームは参加していたよね。あのアルバムも最高で、特にカリームらしい“Bus Ride”は大好きだな。ケイトラナダはハイチ生まれのモントリオール育ちなのに、アンダーソン・パックやジ・インターネットみたいなLAの人たちと繋がっているところもおもしろい。J・ディラがデトロイトからLAに移って、ジェイリブや『Donuts』、『The Shining』を生み出したのと少し近い感じなのかもしれないね。ディラは幻のラップ・アルバム『The Diary』も出たばかりだけど

柳樂コリーヌ・ベイリー・レイも新作のレコーディングでイギリスからLAに渡ったんですよね。ピノ・パラディーノやエスペランサ、キングが参加していて、すごくいいアルバム」

橋本「うん。ビヨンセの『Lemonade』にもケンドリック・ラマーが参加していたけど、そこでもフィーチャーされていたジェイムズ・ブレイクの新作『The Colour In Anything』がこれまた良かった。ジョー・クラウゼルルイ・ヴェガとかハウスのアルバムも絶好調だし、こんなふうに、ここ1~2か月の間にも名盤が数多く生まれて、コネクションの輪もどんどん広がっている。チャンス・ザ・ラッパーは言うまでもなく、ドモ・ジェネシスのソロ・デビュー作『Genesis』も最高だったし、フランク・オーシャンの新作も年内に出るんだよね? 本当に楽しみだなぁ」

アンダーソン・パックが参加した、ドモ・ジェネシスの2016年作『Genesis』収録曲“Dapper”

 

テラス・マーティン
【大阪公演】
日時/会場:6月1日(水) Billboard Live OSAKA
開場/開演:
1stステージ:17:30/18:30
2ndステージ:20:30/21:30
料金:サービスエリア/8,500円 カジュアルエリア/7,500円
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【東京公演】
日時/会場:6月2日(木) Billboard Live TOKYO
開場/開演:
1stステージ:17:30/19:00
2ndステージ:20:45/21:30
料金:サービスエリア/8,500円 カジュアルエリア/7,000円
★公演詳細はこちら

 

BJザ・シカゴ・キッド
【大阪公演】
日時/会場:6月11日(土) Billboard Live OSAKA
開場/開演:
1stステージ:15:30/16:30
2ndステージ:18:30/19:30
料金:サービスエリア/8,900円 カジュアルエリア/7,900円
★公演詳細はこちら

【東京公演】
日時/会場:6月13日(月) Billboard Live TOKYO
開場/開演:
1stステージ:17:30/19:00
2ndステージ:20:45/21:30
料金:サービスエリア/8,800円 カジュアルエリア/7,300円
★公演詳細はこちら

 

ロバート・グラスパー・エクスペリメント
【大阪公演】
日時/会場:7月20日(水)、21日(木) Billboard Live OSAKA
開場/開演:
1stステージ:17:30/18:30
2ndステージ:20:30/21:30
料金:サービスエリア/9,800円 カジュアルエリア/8,800円
★公演詳細はこちら

【東京公演】
日時/会場:2016年7月25日(月)~27日(水) Billboard Live TOKYO
開場/開演:
1stステージ:17:30/19:00
2ndステージ:20:45/21:30
料金:サービスエリア/9,800円 カジュアルエリア/8,300円
★公演詳細はこちら 

7月24日(日)〈FUJI ROCK FESTIVAL'16〉
★詳細はこちら

 


PROFILE
橋本徹(SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『Free Soul』『Mellow Beats』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』『Good Mellows』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは290枚を越える。USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作。著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。
http://apres-midi.biz
http://music.usen.com/channel/d03/

柳樂光隆
79年、島根・出雲生まれ。ジャズとその周りにある音楽について書いている音楽評論家。「Jazz The New Chapter」監修者。CDジャーナル、JAZZJapan、intoxicate、ミュージック・マガジンなどに寄稿。カマシ・ワシントン『The Epic』、ブランドン・コールマン『Self Taught』、エスペランサ・スポルディング『Emily's D+Evolution』、テラス・マーティン『Velvet Portraits』ほか、ライナーノーツも多数執筆。 

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