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ようやく俺にバトンが回ってきました。『XENO』のワールド・ツアーを終え、その後SiM VS Crossfaithという形でシングル“GET iT OUT”という作品をリリースした。

SiMとはかなり長い付き合いになる。遡れば俺たちが昔、ホームのように沢山ライブをしていた箱「心斎橋Club DROP」でのブッキング・イベントで顔を合わせたのが最初の彼らとの記憶だ。
当時のその箱のブッキング・マネージャーにこう言われたのを覚えている。
「お前らと同年代でやばいバンドがいる」と。むしろそれ以上の情報はアーティスト写真ぐらいしかない状態だった。そして、初めて見た時にすごい衝撃を受けたのを覚えている。

SiMの2016年作『THE BEAUTiFUL PEOPLE』収録曲“Dance In The Dark”
 

その当時の俺は、ちょうど西海岸のレゲエ・パンクと言われるものを認知し始め、暑い晴れた天気のいい日にはSUBLIMEを聴きながらおさんぽするというのにはまっていた頃だ。
彼らはパンクという言葉では収まりきらないぐらいの情報量がその当時からあった。
レゲエなのにパンクだし、気を抜いていたらいきなりモッシュピットを意識したブレイクダウンをぶっこんでくる。とりあえず俺はライブを見た後にSiMの楽屋に走り、「やばいっすね!」とMAHくんに叫んだ。そして俺は初めてcoldrainに出会った時のような感覚を覚えた。
「またライバルに出会えた」

それ以降、俺たちは互いのイベントに出るなど、何度も共演をしてきた。
SiMは着実に日本での人気を獲得していき、まさに「火が点いた」そんな状態に。そして俺たちは長年の夢であった海外でのツアーを成功させ、それから幾度となく日本というフィールドを飛び出して戦いを挑みに行っていた。
そう、その頃から昔のように〈毎月逢う〉という様な状況では無くなっていた。

そんな昨年の秋頃、俺たちがSkindredのツアーでUKを回っていた時に、Red Bullからこういうオファーをもらったのだ。
「SiMとCrossfaithで〈Red Bull Air Race〉のテーマソングを作って欲しい」
こんなに面白いオファーはバンドをしてきた中でも初めての事だった。しかし、ツアーの日程と製作の期間を照らし合わせると、簡単に首を縦に触れるという状況ではなかった。そうすると、そこに俺たちのマネージャーはこう続けた。「ちなみにSiM側はやる気満々だよ」と。
その言葉はCrossfaithの負けず嫌いに火を点け、俺たちは重い首をブンブンと縦に振りまくった。

そして帰国後の初対面。あれは〈OZZFEST JAPAN〉だったかな? MAHくんが作ってきたDEMOを楽屋で聴かせてもらったその時、おれは素直にかっこいいと思った。そこからそのDEMOをベースに、両バンドの両パートによるアレンジが始まったのである。
その作業の中でも、一緒に歌詞を書くという行為はかなり新鮮だった。

俺とMAHくんは両方ともバンドの歌詞をほぼ100%担っている。そんな二人が一つの曲の歌詞を書く事に、最初は少し不安を感じていたというのが正直なところだった。というのも、俺はできる事ならば全て自分で完結させたい派で、ベーシックの歌詞を書いてきたMAHくんにも同じ様な気持ちがあるのではないかと思っていたのだ。そして俺は単刀直入に聞いた。
「これ正直完成してると思うんですけど、変える必要あります?」
すると、「えっ? ダメだよ、こいちゃんが書かないとコラボしてる意味ないじゃん!」
当たり前といえば当たり前の返答ではあったけど、その言葉は俺が最初に抱いていた不安をきれいさっぱり払拭してくれた。

そこから俺はVerseの歌詞を書き上げ、DEMOを聴いてから、初めての両バンドがスタジオに集まって、お互いの歌詞を照らし合わせた。その作業中で特に印象に残っているのは、MAHくんの「〈ZION〉って言葉をどうしても入れたいんだよねー」という発言。これは、レゲエ・ミュージックを愛するSiMとCrossfaithのEPのタイトルであり、俺たちの中でも大事な言葉だ。その2バンドの中にある共通項を入れようというアイデアに俺はニヤリとしたし、かなり愛を感じた。

正直、このシングルの製作までMAHくんが少し苦手だった俺。掴みにくい性格というかなんというか、まぁこの人とはソリが合わないのかもと思っていたからである(俺の勝手な勘違いでしたけども)。
しかしこの“GET iT OUT”の製作によって、違うベクトルで過去数年間活動を続けてきた両バンドの互いへの理解を深め、絆は確実に強くなっていった。

そして“GET iT OUT”は完成した。

“GET iT OUT”のMVのメイキング映像
 

それから完全招待制のSiM VS Crossfaithでのスペシャル・ライブも行った。最初は互いに30分ぐらいライブをし、それから最後に“GET iT OUT”をプレイして欲しいというのがRed Bull側からの提案であった。その事に少し疑問を抱きながら、SiMのツアーの富山公演に出演した時の打ち上げで、その話題がテーブルの上に上がった。“GET iT OUT”の製作でかなりイケイケだった9名のテンションは大幅にスペシャル・ライブの内容を再構築していく。

「そもそも、別々に普通のセットでライブするのおもしろくないよね?」
「確かに。せっかくスペシャル言うてるねんからなんか面白いことしたいよねー」
「じゃあお互いの曲にお互いが参加して……」

などという思いつきから、あのスペシャル・ライブは生まれていったのだ。結局ステージ上は9人が入り乱れる、というものになり。当日来ていた人もそうだし、演っている本人たちもこどものように楽しんだのである。なんか、あの時はバンドを始めた時の様な感覚というか、なんというかとりあえずカオスだったけど、すごく楽しかったのを覚えている。
とにかく2バンド(全9名)がステージに同時に立つのもそうだし、リハーサルもかなり大変で、この場を借りて、実現させてくれた裏方のみなさん本当にありがとうございました!!! 感謝!

 

さてさて、一旦SiMとの話は置いといて。そのスペシャル・ライブから約一ヶ月後に俺たちはもう一つ大事な日を迎えた。
〈京都大作戦〉である。もうこれを読んでる人にとっては説明不要だろうから概要には触れない。一つだけ言うなら、10-FEETが首謀者のロック・フェスである。
これも歴史は長い。約5年程前、俺は何を思ったか、直接10-FEETのTAKUMA君に電話で直談判したのだ。そんなに面識もないくせによくやったなと思う。
まぁその年はもちろん出られなかった(笑)。

それから俺は実際に〈京都大作戦〉にお邪魔させてもらった。その年はこれまた盟友であり大阪の先輩であるHEY-SMITHがメイン・ステージに出演してて、それを袖で見ながら嬉しさと悔しさの両方の気持ちに挟まれ、そこで俺は絶対にこのステージに立ちたいと思った。〈京都大作戦〉の持つ空気はその他のフェスとは一線を画している。とりあえず愛がすごい。バンド同士の愛、オーディエンスから全力で送られる10-FEET、そして〈京都大作戦〉への愛。開催が発表されれば誰が出るかもわからないのに、チケットが秒速で完売する程のものだ。
まさに京都のオリンピック(笑)!!!
冗談交じりではあるけど、半ば本当にそうだと思う。

10-FEETの2016年のシングル“アンテナラスト”特典DVDトレイラー。〈京都大作戦〉時のライヴ映像が満載
 

そんな京都大作戦に、今年遂に出演する事ができた。知らない人の為に説明すると、大作戦にはふたつステージがある。メインの〈源氏の舞台〉、そして今年俺たちが出演した〈牛若の舞台〉。
〈丘を越える〉という言葉が大作戦には存在する。字のごとく、〈牛若〉から丘を越えるとそこにはメイン・ステージの〈源氏の舞台〉があるのだ。

当日俺たちのステージを見に、そこには入りきらないぐらいの人が集まってくれた。思いが強かった分、いつも以上に力が入っていた。そして最高の(毎回そうだが個人的には課題の残る)ライブができた。もちろんあの丘は必ず越えて〈源氏の舞台〉に出たいという気持ちももちろんあるが、それより最高のフェスの一部になれただけで、すごく嬉しかった。

そしてその一週間後、これまたとても大事な日がやってきた。SiM主催の〈DEAD POP FESTiVAL〉である。
なにを隠そう、Crossfaithはこのフェス最多の出演者。今年で5回目。
野外フェスに変わった去年の夏は絶賛アメリカで〈Warped Tour〉中で、みんなのSNSでのポストを見て「ええなぁー楽しそうやなー」と全力で思っていた。それもそのはず、旧知の仲間のフェスで、友達のバンドもいて、夏に野外で(それはWarpedも一緒やけど)と楽しくないはずがない。そして5回目の〈DEAD POP FESTiVAL〉はさらに俺たちにとって特別なものだった。

★〈DEAD POP FESTiVAL 2016〉のレポート記事はこちら

第一回のDEAD POPは渋谷のclub asiaというライブハウスで行われた。ちなみにその年のラインナップはSiM、coldrain、HEY-SMITH、NUBO、Crossfaith and moreといった感じだ。そう、いまの日本のロックシーンに多大な影響を与えている(ちょっと言い過ぎ? いや、そんな事はないと思います)バンド達が出演している。今考えてみれば本当にすごいメンツ。その当時はラウド・ロックという言葉が今ほど浸透もしていなかった。その当時のホームページに載っているイベントの概要はこうだ。
「死んだ様なPOPSに別れを」
強烈なインパクトをこの言葉から感じることができる。俺たちが活動し始めた頃は本当に今の様にこのシーン自体が認められていなかった。だれに認められなくても自分たちの信じた音楽を貫いて、なんなら俺たちで作ってやろうぜという空気感が本当に強かった。まぁ、いまもその気持ちは全然変わらないんだけど。

SiMの2015年のシングル“CROWS”より、DVDに収録された〈DEAD POP FESTiVAL 2015〉のダイジェスト映像
 

あの時出会った仲間達は本当に大切だ。そんな大切な仲間の作ったイベントは開催するたびに規模を大きくしていき、今では正真正銘のロック・フェスになった。SiMの〈DEAD POP FESTiVAL〉、HEY-SMITHの〈HAZIKETEMAZARE〉、coldrainの〈BLARE DOWN BARRIRES〉、SHANKの〈BLAZE UP NAGASAKI〉。みんなに出会ってから、各々のバンドにも本当にいろいろな事があった。それはもう全然一筋縄ではいかなかったし、今でも戦い続けてる。そして仲間達がまたその場所で集い、お互いの現状をライブで見せつけ合う。そう考えると本当に気合が入りまくった。

〈DEAD POP FESTiVAL〉での自分たちのライブの内容については、文字で伝えるようなものではないので割愛します。ただ、その日は俺たちにはもう一つ大仕事があったのだ、それは“GET iT OUT”のフェスでの初披露。しかも何を考えたかアンコールでするという大役。SiMにとったら一年の中で一番大事な日といっても過言ではないだろう。まぁもちろんその話をもらった時も、全力で首を縦にブンブン振りまくったのだが。

その景色と言ったら壮観だった、野外フェスの夜のステージ。メイン・ステージでのプレイは幾度となく行ってきたが、夜のあのステージといったら破壊力がまるで違う。そしてそこにSiM VS Crossfaithで立てる興奮と言ったら、口では説明できないほどのものだった。もう一つ、俺たちも自身の〈ACROSS THE FUTURE〉というイベントをでかくしたいと心底思った。

という感じで6月から7月にかけて、俺たちの周りであった事を急ぎ足でまとめてみました。今ようやく夏フェス・シーズンも落ち着きをみせ、次はUKで行われるREADING & LEEDS FESTIVAL! 全力でぶちかましてくるよ! これは個人の自由で楽しみ方は人それぞれなんやけども、一本一本のライブやフェス、そのバックボーンにあるものを知るとより楽しいかもね!

※〈READING & LEEDS FESTIVAL 2016〉は8月26日~28日に行われた

以上! それではみんなまたどこかのライブ会場で会おう!

 

PROFILE:Crossfaith


Kenta Koie(ヴォーカル)、Terufumi Tamano(プログラム/ヴィジョン)、Kazuki Takemura(ギター)、Hiroki Ikegawa(ベース)、Tatsuya Amano(ドラムス)から成る5人組。2006年に結成。2009年に初アルバム『The Artificial theory for the Dramatic Beauty』を発表。翌2010年には初作がヨーロッパでリリースされ、海外デビューを果たす。2011年にヨーロッパに続きUSでも発表することにな る2作目『The Dream, The Space』を完成。アジア圏をはじめヨーロッパやUSなどでのツアーやフェス出演も精力的に行うようになる。そして2012年にミニ作『ZION EP』を、2013年には世界デビュー盤となる3作目『APOCALYZE』をリリース。2014年には世界を股に掛けた活動の充実ぶりに拍車がかかり、 メジャー・デビュー・シングル“MADNESS”を発表。2015年に入ると日本国内での初ワンマン・ツアーを開催したほか、メジャー初作『XENO』を リリース。さらに初の映像作品となるライヴDVD「LIVE IN UNITED KINGDOM AT LONDON KOKO」、ドキュメンタリーDVD「ACROSS THE FUTURE ~The Beginning~ すべての始まり」を相次いで発表した。そして、2016年5月のSiMとのコラボ・シングル “GET iT OUT”に続き、7月には最新シングル『New Age Warriors』(ARIOLA JAPAN)をリリース。夏は海外を含む数々のフェス出演をこなしつつ、9月からは新シングルを引っ提げて、日本国内ではバンド史上最長・最多の全国ツアー〈New Age Warriors Tour 2016〉をスタートする。

★ライヴの予定ほか詳しくはこちら

Crossfaithの2016年のシングル『New Age Warriors』収録曲“RX Overdrive”