左から、吉崎拓也(ヴォーカル/ギター)、有安祐二(ドラムス)、萩原“チャー”尚史(ベース)、藤田朋生(ギター)
 

ギター・ロックやブラック・ミュージック、J-Pop的なフィーリングを絶妙なバランスで融合させたバンド・サウンド、ブライトなポップ感覚に溢れた歌によって、徐々に注目を集めている4人組、GOODWARP。今年は東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマン・ライヴを行うなど、活動の規模を上げている彼らから、新EP『bravo!bravo!bravo!/ Sweet Darwin』が届けられた。華やかなグルーヴが印象的なポップ・チューン“bravo!bravo! bravo!”と、吉崎拓也(ヴォーカル/ギター)の歌の魅力を押し出したバラード“Sweet Darwin”を中心に、リミックスを含めた5曲入りとなる本作には、このバンドの幅広い音楽性がわかりやすく示されている。今回はメンバー全員にインタヴューを行い、それぞれの音楽的なルーツやバンドのコンセプトから新EPについてまで、じっくり語ってもらった。

GOODWARP bravo!bravo!bravo!/ Sweet Darwin バップ(2016)

 

自分たちを介して、たくさんの音楽があることを知ってもらいたい

――90年代ギター・ロック、70~80年代のブラック・ミュージック、エレクトロニクスを交えたサウンドなど、GOODWARPの楽曲からは多様な音楽の要素が感じ取れます。作詞・作曲を手掛けているのは吉崎さんですが、サウンドやアレンジにはメンバーそれぞれの趣向も反映されているんですか?

吉崎拓也(ヴォーカル/ギター)「そうですね。音楽的に共通している部分も多いんですけど、実は結構バラバラだったりして。そういった嗜好を抑えずにやっていこうという気持ちもあります」

――皆さんの音楽的なルーツはどんなところにあるんですか?

吉崎「僕とドラムの有安はもともとMr.Childrenが大好きで」

有安祐二(ドラムス)「いちばん最初はそうですね。小学校の時にミスチルを聴きはじめたので」

吉崎「ミスチル、スピッツサザンから始まり、中学になったら洋楽を聴きまくるようになって。その後もいろいろ聴いたんですけど、いちばんはイギリスのロックですね。ビートルズオアシスブラーとか。そういうバンドをきっかけにして、さらにいろいろな音楽を聴くようになった感じです」

――皆さんよりも上の世代のバンドですよね?

吉崎「まあそうですね。でもリアルタイムでオアシスの新作を買ったりもしていました」

有安「僕はミスチルの後、『孤独の太陽』から桑田佳祐さんを聴くようになって。中学まではみんなが聴くようなJ-Popを聴いていたんですが、高校1年の時にドラムを始めて、その当時の先生がいろいろな音楽を教えてくれたんですよね。最初はTOTOとか……」

吉崎「いきなりTOTOか(笑)」

有安「そう(笑)。その後はスティーリー・ダンとかを聴いたりしました。それからいろいろなセッションに参加するようになって、ブラック・ミュージックを聴くようになったんです。いちばんガッツリ通ったのはネオ・ソウル周辺。ディアンジェロエリカ・バドゥRHファクターあたりで、ブラック・ミュージック的なドラムのルーツはそういうところですね」

ディアンジェロの95年作『Brown Sugar』収録曲“Brown Sugar”
 

萩原“チャー”尚史(ベース)「僕も同じようにポップスから入りました。最初は小沢健二さんで、親の影響で井上陽水さんも聴いてました。自分でバンドをやるようになってからは、YMOなどのテクノ・ポップ、80年代のニューウェイヴを掘っていました。当時はキーボードをやっていて、ベースを始めたのはしばらくしてからなんですけど、それからはレッド・ホット・チリ・ペッパーズとかも聴いてましたね」

藤田朋生(ギター)「僕はやっぱりX JAPANがきっかけですね」

吉崎「〈やっぱり〉って(笑)」

藤田「そこからどんどん彼らのルーツを辿っていったんです。キッスエアロスミスからローリング・ストーンズを聴いて、さらに古いブルースも聴くようになってロバート・ジョンソンに行き着いた。そこから日本の音楽を聴きはじめたんです。それでSUPER BUTTER DOGに出会って、自分がやりたいのはこれかもと思った。それから日本語で歌うバンドを始めました」

SUPER BUTTER DOGの2000年作『FUNKASY』収録曲“コミュニケーション・ブレイクダンス”
 

――確かにルーツはバラバラですね。この4人でバンドを立ち上げた時は、どういう音楽をやろうと思っていたんですか?

吉崎「コンセプトは特になかったんですが、GOODWARPを始める前にバンド・メンバーを探すための〈名刺〉を作ろうと思って、チャーと半年くらい宅録をやっていた時期があったんです。その時にダンス・ビートっぽい曲が多くて、そのデモに反応してくれたのがこの2人(藤田、有安)だった。だから自然とそっちの方向になったんだと思います。朋生と最初に会った時はビックリしましたけどね。メール・アドレスがエアロスミスの曲名で、僕もエアロスミスが大好きだったから、この人は良さそうだなと思ったんですけど、当時はもっとブルースマンだったというか、髪も長くて、サイケデリックなシャツを着ていた(笑)」

萩原「アクが強かったよね(笑)」

吉崎「〈あれ、僕らはポップスをやりたいんだけど……大丈夫かな?〉って」

藤田「ハハハハ(笑)。ネットにアップされていたデモを聴いたのが最初なんですけど、すごくダンサブルでメロディーも良くて、コードの鳴りもいいなと思ったんですよね」

有安「僕もデモを聴いてイイ曲だなと思ったので、とりあえず一緒にスタジオに入ってみることにしたんです。結構ネットに上がっているデモ音源は信用ならないんですよ。曲が良くても実際にスタジオに入ったら演奏が…みたいなこともあると思うので」

藤田「最初は(スタジオで)ジョン・メイヤーの曲をやったんだよね」

有安「そうそう。スティーヴ・ジョーダン(ドラムス)が好き、みたいな話もしていたので、これはいいかもなと思った」

スティーヴ・ジョーダンが在籍するジョン・メイヤー・トリオの2005年のライヴ盤『Try!』収録曲“Who Did You Think I Was”
 

――GOODWARPの方向性は、間口の広いポップスを基本としつつ、ブラック・ミュージックのテイストだったり、プレイヤーとしてのセンスも活かしたいという感じですか?

吉崎「そうですね。やりたいのはあくまでもポップスですけど、聴いてくれた人に、ブラック・ミュージックが好きなんだろうな、おもしろいサウンドだなと思ってもらえるような要素を数滴くらいは垂らしたいというか」

有安「ほんのちょっとだよね。あまり入れすぎると……」

吉崎「マニアックになるからね。僕のヴォーカリストとしての実力を考えても、本格的になろうとしたってなれないので」

――良い意味でクセがなくて聴きやすい、ポップス向きの声質ですよね。

吉崎「そう言っていただけると嬉しいですね。僕はもともとギターをやっていて、歌うようになったのはこのバンドが初めてだったんですが」

――ライヴはどのタイミングからやるようになったんですか?

吉崎「最初はまずスタジオでしっかり曲を温めて、ライヴはその後……と考えていたんですが、〈そんなこと言ってたら、いつまで経ってもライヴができない。とりあえず、すぐやろう〉ってメンバーに言われて」

萩原「半ば強制的に(笑)」

吉崎「なので、わりと早い段階からライヴは月1~2本はやってましたね」

GOODWARPの2016年のミニ・アルバム『FOCUS』収録曲“僕とどうぞ”
 

――まずはライヴで自分たちの音を固めていくというスタイルはバンドらしいですよね。

吉崎「観てくれた人からは、いろんなことを言われていました。シティー・ポップだねと言われることもあったし、ギター・ロックだねと言われることもあったんだけど、自分たちとしてはどちらもピンとこなくて」

有安「うん」

吉崎「シティー・ポップよりは汗臭くありたいし、ギター・ロックだけではなくもっといろんな音楽の要素を活かしていきたい。だから、自主企画ライヴに出演してくれた人たち(荒川ケンタウロスHOWL BE QUIETミラーマンSHE’S雨のパレードなど)のサウンドやジャンルもバラバラなんだと思います」

――わかりやすく方向性を絞ったほうがいいと思ったことは?

吉崎「うーん……作品ごとに新しいことにトライしようとしていて、BPMが速めの縦ノリな曲もあれば、ブラック・ミュージックのテイストが強い曲もありますけど、オリコン・チャートにバンドがたくさん入っていた90年代らしいメロディー感を、自分たちなりに表現したいという気持ちは変わらず持ってます。言い方は悪いですけど、メロディーには人寄せパンダみたいな役割があると思っていて、人懐っこいメロディーで誘って僕たちの作品を聴いてもらえれば、裾野の広い音楽をやっていることがわかってもらえるはずで。そういうことがやりたいんですよね。さっきも話したように、メンバーそれぞれがいろんなジャンルの音楽を聴いてきて、そのルーツを遡っていくことですごくおもしろい経験をさせてもらっている。なので、リスナーにとって脈々と繋がっていく音楽のひとつでありたいんです。自分たちを介して、こんなに楽しい音楽がいっぱいあるんだと知ってもらえたら最高ですね」

――なるほど。音楽的にもいろいろな変遷を経ていると思いますが、現在のGOODWARPのモードはどんな感じですか?

吉崎「サウンドでいうと、前作の『FOCUS』まではダンス・ビートに意識が向いていたんです。例えば4つ打ちだったり、ギターのカッティングだったり。でもいまはそれを取っ払って、自分たちらしさをさらに深く求めている感じです」

GOODWARPの2016年のミニ・アルバム『FOCUS』のダイジェスト音源