INTERVIEW

Suchmos『FIRST CHOICE LAST STANCE』自主レーベルからの第1弾作品を通じて提示する、バンドのスタンスと最新モード

Suchmos『FIRST CHOICE LAST STANCE』

Suchmos『FIRST CHOICE LAST STANCE』自主レーベルからの第1弾作品を通じて提示する、バンドのスタンスと最新モード

自身の信じることをやればいい──そんな姿勢を貫いた一枚で大きな成果を得たバンドは今、次なる航海へ。新たなホームを基盤に作り上げられたこの音を聴き、あなたが〈これだ〉と思った瞬間にこそ真実がある!

 今年1月にリリースしたセカンド・アルバム『THE KIDS』が20万枚に迫るロング・セールスを記録中のSuchmos。一心不乱で遊びに没頭する子供のように、混じり気のない創造力を無邪気に振りかざしたクールでワイルドなバンド・サウンドが瞬く間に圧倒的な支持を集めてゆく様は、痛快であると同時に、同世代のバンドや若いリスナーに勇気を与えた。

「ceroやペトロールズといった上の世代のバンドを見て俺たちが勇気付けられているように、〈本当に好きなことをやればいいんだ〉という姿勢を作品を通じて世の中に見せられたこと。そして、音楽の力だけで驚くような結果を出せたことは、自分たちにとってはもちろん、周りにとっても明るいトピックになったとしたら、これほど嬉しいことはないですね」(YONCE、ヴォーカル:以下同)。

 そう語るYONCEは、静かな台風の目のなかに立っているかのように、エネルギーを吸収して膨らむ熱狂の渦を冷静に分析する。

「アルバムに向かう過程でリリースした2枚のEP『LOVE&VICE』と『MINT CONDITION』、そのなかの“STAY TUNE”や“MINT”という作品の顔となる曲の完成度を高めることができて、自分たちとしても大きな手応えを感じて。『THE KIDS』が最高の作品になることは確信できたんですけど、扱える調味料の種類が少なくて、わかりやすい料理しか作れなかった『THE BAY』に対して、『THE KIDS』は奥行きのある料理。つまり、ディアンジェロの『Voodoo』(2000年)みたく、何回も聴いているうちに隠された旨味が沁み出してくるアルバムになりましたし、同時にいろんなアイデアがてんこ盛りで、カロリーが高すぎる作品であるとも思います。“PINK-VIBES”のように軽快なナンバーもありつつ、展開して、気付いたらメタルになってる“ARE WE ALONE”とかサイケデリックなサウンドで刺激的なことを歌っている“SNOOZE”とか、聴いた後に若干疲れる曲も入っていますよね(笑)。ただ、『THE KIDS』の曲は録音する前にライヴで演奏しながら成長させていったので、ライヴ映えするダイナミクスが自然と盛り込まれた曲たちは、その後のツアーでも手応えは大きかったです」。

 

然るべきタイミング

 そして、4月27日に新木場STUDIO COASTで行われたツアー・ファイナルにて、自主レーベル=F.C.L.S.の設立を発表。新たな航海へと乗り出したSuchmosは、“WIPER”と“OVERSTAND”の2曲から成る新作『FIRST CHOICE LAST STANCE』をリリースする。

Suchmos FIRST CHOICE LAST STANCE F.C.L.S./ソニー(2017)

「レーベル設立第1弾の作品にこの2曲をセレクトしたことに、特に深い意味はなくて、その時に完成していたのがこの2曲だったというだけですね。ただ、今回の作品のように、ハードな部分とメロウな部分が同居しているのがSuchmosだと思うし、歌詞ではHSU(ベース)と俺がそれぞれ今感じていることを言葉にしていますからね。それが作品になったということは今がその然るべきタイミングだったんだろうし、意味は後から付いてくるんだろうと思いますね」。

 その制作は『THE KIDS』のレコーディングを終えた後、すぐに始まった。

「去年11月に束の間のオフを利用して、みんなでグアムに行ったんです。そして、帰ってきて最初のリハーサルで出来たのが2曲目の“OVERSTAND”。それまでの1年半は、ちゃんと呼吸ができないまま何とか乗り越えてきていたので、異国のリゾートでようやく羽を伸ばすことができて、その心境が自然とサウンドになったんですよね」。

 波のようなシンセサイザーがメロウなソウル・フィールとロッキンな昂揚感を運ぶ“OVERSTAND”は、Suchmos流のアンビエントR&Bと形容できそうな極上の一曲だ。

「かなり、そんな雰囲気の曲になりましたね。“MINT”にも通じる雰囲気もあって、サビではスタジアム・ロック的なメロディーが出てきたり、レゲエっぽいベースラインと土着的なリズムだったり、その時のバンド内のトレンドが上手いバランスでミックスされていますよね。ストレスフリーなシチュエーションでは、自分自身だけじゃなく、一緒にいる人たちにとっても楽しいことを考えるじゃないですか? 実際に現地ではそういう瞬間を大事に過ごしたし、帰ってからもその気持ちは変わらなくて、むしろ、今の日本では人をリスペクトしたり、思いやる気持ちが欠如しているようにとさえ感じたので、そうした思いが自然と歌詞にも反映されたんですよね」。

 

直感にこそ真実がある

 束の間の穏やかな時間を甘美な楽曲で描き出した彼らは、ふたたび攻勢に転じる。歪んだギターと強烈なバスドラムのキックで幕開ける1曲目の“WIPER”は、グルーヴの際立ったサウンド、そのプログレッシヴな展開にメンバー各人のアイデアを集約したSuchmosの最新モードが提示されている。

「曲の雛形が出来たのは今年の1月末から2月頭にかけてのジャム・セッションですね。ベースと鍵盤のムーグがユニゾンしているフレーズを繰り返し演奏しているうちにメロディーが思い浮かんで、それがサビになり、さらにそのサビに肉付けすることで曲が形になっていったんです。曲が展開していくアレンジは『THE KIDS』の楽曲の流れを汲むものだと思いますし、その展開のなかで今まで誰もやってなかった要素の食い合わせ、ミクスチャーの提案にこそSuchmosのアイデンティティーがあるんですけど、そういう曲があれよあれよという間に出来て。歌詞は『THE KIDS』のツアーが始まるちょっと前にHSUが書き上げてくれたので、レコーディング前にして、ツアーのセットリストに加えて、ライヴでじっくり成長させたんですよ」。

 曲を作ってはライヴで叩き上げ、その躍動感を提示すること。Suchmosのやり口は変わらず、実にシンプルだ。

「HSUが書いた歌詞は、車のワイパーとTVのワイプのダブル・ミーニングになっていて、TVのワイプに抜かれた作り物の表情みたいなことは俺たちにはできないっていうことでもあるし、バンドとしてはスタジアムのような、オーディエンスがたくさん集まった風景をめざしつつも、自分たちが意図しているのは曖昧模糊としたマス・コミュニケーションではないということでもあって。ロックが存在する意味、言い換えれば、自分たちが信じているものや大切なもの、知ってほしい感覚……俺たちはそういうものを持って帰ってもらいたいんですよ。歌詞に出てくる〈LIVE and DIRECT〉という言葉、作品のタイトルである『FIRST CHOICE LAST STANCE』やその頭文字を取ったレーベル名のF.C.L.S.には、そうしたSuchmosのスタイルや自分たちが好むバンドのスタンスが集約されていますね」。

 新レーベルを立ち上げ、新たな風景をまさに切り拓こうとしているSuchmosのスタンスについて、YONCEは改めて語る。

「『FIRST CHOICE LAST STANCE』というのは、俺らと出会ったばかりのときにマネージャーからいきなり送られてきた言葉だったんですね。それを見た瞬間に〈その通りだ〉と感じたし、Suchmosもこうありたいなって思って、その日から俺らの心の中にずっとあるフレーズなんです。今回、レーベルを立ち上げるにあたって、Suchmosの核心を突いたそのフレーズを屋号にするのがベストなんじゃないかって。音を鳴らした瞬間、何かを感じた瞬間……そうした瞬間がすべてというか、直感的に〈これだ〉と思ったものにこそ真実があるっていう、そんな思いで俺らは音楽をやっているし、今後もそれが変わることはないでしょうね」。

 

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