東京文化会館から羽ばたく新進アーティストの熱演に期待!

 2003年から始まった〈東京音楽コンクール〉は、〈芸術家としての自立を目指す可能性に富んだ新人の発掘と育成・支援〉を目的とし、東京文化会館を舞台に毎年開催されている。今年8月に行われた第15回では、ピアノ部門1人、弦楽部門1人、木管部門2人の計4人を優勝者に選出。その俊才たちが年明け1月8日の優勝者コンサートに出演し、それぞれ協奏曲を披露する。円光寺雅彦が指揮する新日本フィルの伴奏と、音楽に造詣が深い朝岡聡の司会で行われるので、万全のサポートが期待できそうだ。以下、4人の演目や聴きどころなどを出演順に紹介しよう。

ヘルバシオ・タラゴナ・ヴァリ

 トップバッターは、木管部門を制し、併せて聴衆賞も受賞したヘルバシオ・タラゴナ・ヴァリ(cl)。ウルグアイ出身の彼は、2015年の日本木管コンクール第2位の実力派で、作曲も行うマルチな才能の持ち主だ。今回の演目はウェーバーの協奏曲第2番。優勝記念にふさわしい華麗な作品で、第1楽章終盤のクラリネット・ソロによる急速なアルペッジョや、第3楽章の技巧的コーダなど、その実力と可能性を随所で聴きとれることだろう。

荒井里桜(C)井村重人

 続いての登場は、弦楽部門の覇者で、東京藝大に在学中の荒井里桜。本選ではチャイコフスキーのロマンティックな協奏曲をデリケートかつ爽やかに歌い上げていたが、今回はメンデルスゾーンのセンティメンタルな協奏曲(ホ短調)を選択。旋律の歌い回しひとつでソリストの〈素性〉が赤裸々に表れてしまう、この〈怖い〉名曲に、どんな知性と感性で挑むかが楽しみだ。

アレッサンドロ・ベヴェラリ

 後半は、前述のヴァリと木管部門の優勝を分け合ったアレッサンドロ・ベヴェラリ(cl)の演奏で幕開け。イタリア出身の彼は現在、東京フィルの首席奏者を務め、オケ、協奏曲、室内楽と多彩に活動中だ。今回の演目に選んだコープランドの協奏曲は、ジャズ・クラリネット奏者ベニー・グッドマンによる委嘱作品で、クラシックとジャズが巧みに融合した傑作。また、ピアノやハープもソリスティックに活躍するので、彼の柔軟な音楽性やオケマンならではの掛け合いを存分に堪能したい。

ノ・ヒソン

 そしてトリを飾るのが、ピアノ部門第1位&聴衆賞に輝いた韓国のノ・ヒソン(p)。現在、名門ソウル大学に在学中の知性派で、本選では高い集中力と繊細なダイナミクスで全編を彫琢したラフマニノフの協奏曲第2番を披露して大喝采を浴びた。今回は、ベートーヴェンの協奏曲第5番《皇帝》を演奏予定なので、若き王者ならではの瑞々しさと風格を備えた名演を期待しよう!

 


LIVE INFORMATION

第15回東京音楽コンクール  優勝者コンサート
○2018/1/8(月・祝)15:00開演
会場:東京文化会館 大ホール
【出演】
クラリネット:ヘルバシオ・タラゴナ・ヴァリ *木管部門第1位及び聴衆賞
ヴァイオリン:荒井里桜 *弦楽部門第1位及び聴衆賞
クラリネット:アレッサンドロ・ベヴェラリ *木管部門第1位
ピアノ:ノ・ヒソン *ピアノ部門第1位及び聴衆賞
円光寺雅彦(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団
朝岡聡(司会)
【曲目】
ウェーバー:クラリネット協奏曲第2番 変ホ長調 op.74(ヘルバシオ・タラゴナ・ヴァリ)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64(荒井里桜)
コープランド:クラリネット協奏曲(アレッサンドロ・ベヴェラリ)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調「皇帝」op.73(ノ・ヒソン)
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