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【特集:DOG YEAR OF RAP】人気と実力を兼ね備えたEINSHTEINと言xTHEANSWERが、それぞれをタッグ・パートナーに選んだ理由

【特集:DOG YEAR OF RAP】人気と実力を兼ね備えたEINSHTEINと言xTHEANSWERが、それぞれをタッグ・パートナーに選んだ理由

人気と実力を兼ね備えた最強タッグが、時代に王手をかける!

 若手の台頭が著しい近年の日本語ラップ・シーンにおいて、その原動力のひとつとして挙げられるのが〈高校生RAP選手権〉だろう。2012年にBSスカパー!の番組「BAZOOKA!!!」の企画として誕生し、高校生相当の年齢のティーンズたちがフリースタイル・ラップで競い合うこの大会からは、BAD HOPのメンバーとして新時代を牽引するT-PablowとYZERRの兄弟をはじめ、GOMESS、HIYADAM、Lick-G、ちゃんみな、裂固ら数多くの才能が脚光を浴びるきっかけになってきた。ここで紹介するEINSHTEINと言xTHEANSWERの2人も、そこを足がかりにして個々に人気を拡大してきたアーティストたちだ。

 

ここからキングを獲りにいく

 大阪出身で14歳の頃にラップを始めた97年生まれのEINSHTEIN(アインシュタイン)と、北海道で高校時代から音源を制作していた98年生まれの言xTHEANSWER(ユートゥザアンサー)。両者が初めて顔を合わせたのは、2015年3月に開催された第7回の〈高ラ〉の現場にて。その時はお互い敵同士だった。

 「2回戦で当たったんですけど、アインは僕よりもひとつ上の先輩で、もともと〈選手権〉にも一足先に出演してたので、バトルを見てて〈めっちゃ口悪い奴がいるな〉っていう印象だったんです(笑)。でも楽屋で優しくしてくれて、これからバトルなのに何か気まずいな……っていうぐらいで(笑)」(言xTHEANSWER)。

 「で、そのバトルは僕のほうが負けちゃったんですけど、その後は普通に応援する気持ちになって、何のわだかまりもなく仲良くなったんです」(EINSHTEIN)。

 「それからも僕だけが出てるバトルがあるたびに、試合前のギリギリのタイミングで〈がんばってね〉ってメッセージをくれたり、〈えーっ! 何、このいい人!〉って感じで(笑)。マメでイケてる大阪の先輩って感じでしたね」(言xTHEANSWER)。

 ライヴの現場で出会うことも多く、親交を深めながら各々に活動を進めていた両者だったが、奇しくも2017年初頭のちょうど同じ時期に上京。共に音楽を志す身として、将来の夢や不安などを分かち合うことのできた二人は自然と連れ立って遊ぶようになり、やがて一緒に曲作りを行っていたという。そうして完成したのが、今回のタッグ・アルバム『Two Pawns』というわけだ。

EINSHTEIN,言xTHEANSWER Two Pawns AndRec/ビクター(2018)

 「最初は別にリリースも決まってたわけではなくて、ただ本当に日常で起きたことを曲にしてたんですよ。〈今日ムカつくことあったから、このテンションを曲にしちゃおうよ〉みたいなノリで、その日に話した内容とか出来事に合ったトラックを探して、録音して。だから今回のアルバムは何か壮大なテーマについて歌ったような曲はひとつもなくて、等身大なんですよね」(言xTHEANSWER)。

 「あと、周りの意見とか何も意識しなかったんで、どの曲も飾りがないんです」(EINSHTEIN)。

 タイトルにある〈Pawn〉とはチェスの駒における歩兵のこと。

 「ちょっと知ってもらえるようにはなったけど、音楽業界全体からしてみると僕たちはまだまだ底辺の存在やし、将棋で言うなら〈歩〉みたいなもんやと思ったんで、そういう意味を込めて。ここからキングを獲りにいこうということです」(EINSHTEIN)。

 そんな言葉が大口ではないのは、SUNNY BOYやUTAらヒットメイカーもサウンド面で援護した内容の充実ぶりからもわかるはず。1曲目ではフリースタイルをかましつつ、ディスコな夏ソング“SUMMER NIGHT BIKINI”やヘイターたちを威勢のいいライムで捻じ伏せるエレクトロ・バウンス“フルボッコ”といった先行配信曲のポップな仕上がりからも伝わるように、いわゆる〈ヒップホップらしさ〉に凝り固まることなく、二人は純粋に音楽を楽しんでいる様子だ。

 

互いに補い合えた

 「ANSWERのラップは言いたいことがわかりやすく伝わってくるし、レコーディングでもリズム感がズバ抜けてすごいと思いましたね」(EINSHTEIN)。

 「あざっす! 逆にアインはラップもできて、なおかつサビをキレイに歌い上げられる歌のスキルが武器だと思う」(言xTHEANSWER)。

 互いの持ち味について評する二人。「俺は攻撃的な歌詞が好きなので、ムカつく奴はムカつくっていうのをラッパーとしてちゃんと表現したいんですけど、それにアインが乗ってくれて」(言xTHEANSWER)出来たという辛辣な口撃曲“WeAre-A”は言xTHEANSWERらしさが前面に出ているし、一方でリード曲の“To U”はEINSHTEINのソロ作品に通じるジャパレゲ風味の温かなラヴソングに仕上がっており、それぞれの得意な分野を持ち寄ることで相方の新しい部分も引き出すコンビの妙が活きている。

 「お互いにないものを補い合ってやれてるので勉強にもなりますし、もしずっとソロでやってたら僕は攻撃的なラップを書かなかったと思うんですよ。逆にANSWERもソロでこういうポップス系のラヴソングを作ろうとはしなかったと思うし」(EINSHTEIN)。

 他にも、言葉をタイトに刻むANSWERとメロディアスに流すEINSHTEINの対照的な魅力が際立ったEDMテイストの“PARTY TAG”といった新機軸があるなか、もっとも心を震わされるのは終盤の2曲だろう。「ANSWERのヴァースが深いことを言ってて、心にズンズンと突き刺さる歌詞なんですよね」(EINSHTEIN)という“BE”は、不安に苛まれながらも前進する彼らの覚悟が詰まったドラマティックな一曲。そしてラストの“花は咲く”は自分たちと同じように新生活を送る人々に向けられており、音や歌詞に込められた昂揚感が聴く者を鼓舞する。

 「いままでは自分の考えを言ったり、〈俺はこうだぜ〉って主張する曲が多かったんですけど、この曲では初めて自分と同世代の新社会人の気持ちになりきって歌ってて」(言xTHEANSWER)。

 「こういう勇気をもらえたり、悔しいことがある中でもがんばろうぜっていう曲が個人的にすごく好きなんですよ。ちなみに僕、今年成人式で大阪の実家に帰ったんですけど、そのとき母にアルバムを聴かせたらこの“花は咲く”で泣いてくれました」(EINSHTEIN)。

 「それ、めっちゃいい話だねー!」(言xTHEANSWER)。

 彼らの日常と進行形の心情がストレートに刻まれた本作には、きっと老若男女問わず惹きつける魅力があるのだろう。いまはまだ〈ポーン〉の二人だが、いずれは〈キング〉になる日がくるのかもしれない。

 「次のアルバムでもう『Two Kings』になってて〈こいつらナメてるな〉とか言われたいよね(笑)。それで〈うるせえ!〉って“フルボッコ2”みたいなのを出したりして。でも、どんなメロディアスなものやポップな曲をやっててもマインドはラッパーだと思ってるので、僕らは打たれ強いですし、自分たちのやりたいことをやるだけですね」(言xTHEANSWER)。

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