「ジャズとは何か」はたえず議論されてきた一方で、これまで抜け落ちてきた「ジャズという何か」について考えてみる――まず、原雅明の立てた命題が興味をそそる。本書は90年代を転換点に起きつつ、前史に当たる80年代から現在にいたるまで、ヒップホップやマシーン・ビート、ポストロックなどジャズならざる様々な音楽に聴き取れる「ジャズという何か」を考察する。それは、当然ジャズ自身にもフィードバックされ……マイルス・デイビス、ECM、ロバート・グラスパーらの探究を紐解く。音楽が呼応し合い、交錯し、また新たなアートとして上書きされる。そのダイナミクスに魅了されるすべてのリスナーに。