地元・新潟を拠点に活躍するアイドル・グループ=Negiccoが、シングル“愛、かましたいの”“カリプソ娘に花束を”を含む4作目となるフル・アルバム『MY COLOR』を7月10日(火)にリリースする。これを記念し、プロインタヴュアーの吉田豪が彼女たちひとりひとりに直撃。2012年、2014年、2016年と折に触れてNegiccoへの取材を行ってきた吉田豪によるロング・インタヴューで、波乱に満ちたこの2年間を振り返る。
3週連続掲載となるNegicco特集、第1回のKaede編、第2回のMegu編に続き、最終回はNao☆のインタヴューを掲載。30歳という転機を迎えたリーダー・Nao☆は、自分自身について、Negiccoというグループについて、そしてKaedeとMeguに対して、いま何を思うのか。 *Mikiki編集部
いざ自分が30歳になると思った数時間前に手が震えだしてビックリして
――30歳おめでとうございます!
「ありがとうございます!」
――どうですか、大台に乗った気分は。
「26歳ぐらいでNegiccoを辞めてなんかやってるのかなと思ってたんですけど、一回ステージに立っちゃうとまた歌いたいなって思うので、30歳までステージに立って歌わせてもらえてることがありがたいというか。想像してた30歳とは違うなって思いました」
――どんな30歳を想像してたんですか?
「想像してた30歳は、もうNegiccoを辞めて結婚とかして子供もいて、サーティワンとかで働いてるのかなと思ってました」
――なぜサーティワン(笑)。
「サーティワンが好きで。Negiccoやってるときもバイト……まだお金がなかったとき……いまもそんな余裕ないですし、めちゃめちゃ儲かってるわけではないんですけど……」
――いまよりももっと稼げてないときに。
「ホントもっとヤバいときにサーティワンに応募したんですけど、〈土日に出られない人は無理です〉って言われて」
――アイドル業は土日が忙しいですから。保育士をやってたのは、そこがちょうどよかったわけですね。
「そうですね。最初はNegiccoをやりつつエイベックスのオーディションも受けてたので。カラオケボックスで主催されてたオーディションだったんで、店長さんが事情を知ってくれて〈Nao☆ちゃん、土日休んでいいからバイトする?〉って言ってくれて。そこにいたんですけど、やっぱり環境が合わなくて。タバコとかもすごいし半年ぐらいで辞めたんですよ。
それで、子供が好きなので〈保育の仕事できないかな〉って母に言ったら、ちょうど知り合いの先生に〈娘がこうなんだけど働けませんか?〉って聞いたところだったって言われて。すごいグッドタイミングで、それでバイトさせていただくことになって」
――キャラ的にピッタリでしたもんね。
「子供がかわいいし、命を預かってる仕事なので。保育園っていうと〈子供と遊んでるだけでしょ?〉みたいな捉えられ方も多かったんですけど、子供と遊びつつ、子供の命を守り。食べもののアレルギーがある子もいるんで。あと赤ちゃんにミルクをあげたりオムツを替えたり。
仕事で嫌なことがあっても、子供が癒やしてくれたので、すごくいいきっかけになったというか。なのでママになりたいなとも思うけど、実際にママってなると一日じゅうママで忙しいから……」
――大変そうだけど子供は欲しい。
「子供……欲しいですよね、かわいいから将来的には」
――大丈夫なんですかね、ご本人がこんなに子供な人だと(笑)。
「ハハハハハハ! ステージに上がるとスイッチが入るんです!」
――子供スイッチが。実際、保育士ができてたということは、ちゃんと大人としての仕事ができてたってことですからね。子供と幽体離脱とかしてたわけじゃなくて。
「してません(笑)。もともとミュージカルとかやって、演技をやりたいとか声優になりたいとか、自分じゃない何かを演じることが好きだったので。だから絵本を読んでるときは子供がすごい喜んでくれるんですよ、〈先生上手!〉とか言って。
保育園の先生に〈保育園の仕事すごい合ってるから、アイドル辞めてちゃんと保育士にならない?〉って言われたんですけど、〈いやNegiccoが大事なので〉とか言って」
――こっちを選んで間違いはなかったと思うんですよ。
「はい、フフフフ。いまも一年一年どうなるかなって考えながらやっているし、Negiccoってアイドル・グループっていう印象がめちゃめちゃ強いなかでどうなっていくんだろうってすごい苦しんだときもあるんですけど、いまは落ち着いて、みんなが〈NegiccoはNegicco〉って見てくれてる感じがすごいあるので、嫌な感じはいまはなく」
――一時は嫌な感じがあったんですね。
「そうですね、どうなっちゃうんだろう感があったから、エイベのオーディションを受けさせてもらったりしてたので」
いまのままの自分がいちばん自分らしくて、いちばん楽でいいんだなって
――30歳になる瞬間にずっと手が震えてたっていうのはなんなんですか?
「そうなんです! 震えが止まらないんですよ。いざ自分が30歳になると思った数時間前に手が震えだしてビックリして」
――体が拒否してたんですかね?
「心はそう思ってないんですけど、体が……。でも、30歳になったときは〈やったー!〉っていうよりズシッていうか、〈あの迎え方はなんなんだろうね?〉っていう話を30歳の女性としてました」
――いろいろ考えなきゃいけないことも増えるだろうし、それこそ結婚だなんだって周囲から言われる機会も増えるだろうし。
「親友も結婚して子供が生まれたんですけど、自分の周りが想像以上に大人になってて、中学生から見たら30歳って立派すぎる大人なので(笑)」
――まさか30歳になって〈ちょっと、ちょっとちょっと!〉とかやってるとは思わなかったわけじゃないですか。
「思ってないですよ、そんなこと言う人いないと思ってたんで。もっとドシッとした、スーツをピシッと着た大人を想像してたので、まさかでした」
――小学生モードのまま大人になれるとは。
「いちばん年上のリーダーって、〈リーダーです、ちゃんとまとめてます!〉って人が多いので、こんなリーダーでいいのかなとか、大人っぽいNegiccoのリーダーになったほうがいいのかなとかいろいろ悩んだんですけど……」
――そんなの誰も求めてないですよ。
「そうなんですよね(笑)。そこで血迷ったときがあって、何がリーダーなんだろうとか、何がいちばん年上なんだろうとか、そういうところまで考えることもあったんですけど、いまのままの自分がいちばん自分らしくていちばん楽でいいんだなって思うようになって、いまがいちばん楽しいですね」
――何度か迷う時期がありましたよね。〈MCで変なこといっぱい言ってるかもしれないですけど歌で評価される人になりたい〉とか、おもしろがられることにモヤモヤを抱えたり。せっかくおもしろいのに。
「フフフフフ。ファンの人とかに〈ホントにリーダーなの?〉とか言われることもあって」
――それは悪い意味で言ってるんじゃなくて、軽いイジりだと思いますよ。
「そうなんですよね。それを私、昔からそうなんですけど性格的に冗談が通じないんですよ」
――よく知ってます(笑)。
「冗談が通じないんで。それで落ち込んじゃうんですよね。でも、かえぽとかも〈こういうリーダーだから続けられた〉って言ってくれてたので。芸能スクールにいたときにいろんなグループがあっていろんなリーダーがいて、めちゃめちゃ怖い人もいたし、そういうグループに入ったこともあって。
そのとき、すっごい嫌だなと思ったんですよね、〈リーダーリーダー〉してて怒るのが正解みたいな。いかに一緒にいるメンバーが居心地がいい場所を作るかっていうのもリーダーの仕事なんじゃないかなと思って」
――そのとおりです! それはちゃんとできてますよ。
「ホントですか? ヘヘヘ、よかった(笑)」
――これでいいんですよ。
「……豪さんと話してると泣きそうになりますね(笑)」
――またもや! 泣いても大丈夫ですよ。
ちゃんと大人なんだけど子供心がある男性がいいなって
――2年ごとにインタヴューやってるから、毎回〈体力的にキツくなった〉って話が出てくるんですけど、その辺りの変化もありました?
「そうですね。かえぽがこないだ『26歳になって疲れが抜けなくなった』ってTwitterに書いてて、そうなんだよ、30歳はヤバいよって思いました(笑)」
――ダハハハハ! やっとわかったかっていう(笑)。
「はい(笑)」
――いまは腰にきてる感じなんですか?
「いまは尾てい骨と腰にきてて。いつも年始にNegiccoが〈今年も素敵な1年になりますように〉って祈願しに行くところがあって、そこに行ったときに〈Nao☆ちゃんはダンスとかが腰にくるからちょっと気をつけなさい〉って言われたんですよ。
そのとおりで、この間、長時間立って2回通しぐらいワンマンのリハやったら腰がめちゃくちゃ痛くて。踊れなくなったら困るなっていうか。あと尾てい骨は飛行機と新幹線移動が続いたときに、椅子が硬かったりして」
――お尻が痛くなりますよね。
「はい、下北沢GARDENでライヴがあったとき、痛くて立てなくなってお医者さんに行ったんですけど。尾てい骨を痛めるのもよくないんだなと思ってアマゾンで4000円ぐらいの尾てい骨クッション買ったんですけど、大きすぎて車にしか置いておけないんですよ。あと、舞監(舞台監督)さんに〈ホントに車は腰にくるよ〉って言われたのと、いつも〈くの字〉で寝てるんで、そこはなんとか工夫しなきゃって思ってます」
――体のことを本気で考えなきゃいけない時期になってるわけですね。
「そうですね、けっこう体にくるなって。あと筋肉痛が2日後にくるっていうか。こないだKaedeとアイスリンクに行ったんですけど」
――ああ、Twitterで見ました。すごい楽しそうでしたね。
「フフフフ、楽しかった! そしたら次の日はちょっと内股が痛いぐらいだったんですよ。っていうかほぼ痛みはなかったんですけど、今日すっごい痛いんですよ。だからKaedeと2人で〈ヤバいね〉って言ってました(笑)」
――それでアイドルやるのはたいへんですよね。
「だから体力はちゃんとつけようと思ってて。ジムは7000円払っても月に一回も行けないときもあったので辞めちゃったんですけど、ちゃんと自分で走ったりトレーニングはしようと思ってます」
――そして当然この年齢になると、結婚以前にまず恋愛というものをちゃんと考えなきゃいけなくなってくると思うんですけど、そのあたりは掘り下げても大丈夫ですか?
「親友が結婚してから変に焦りが芽生えたんですけど、まあ出会うときに出会って、ワッという何かがあったときに結婚したいなと思うんで。変に周りが結婚して子供いるから自分もっていうよりは、ビビッときた人とちゃんと結婚したいなって思います」
――〈好きなタイプは雪だるまを作りたいとか言う人〉とかTwitterに書いてましたよね。
「そうですね、自分がこうなんで、ちゃんと大人なんだけど子供心がある男性がいいなって」
――一緒に遊んでくれる人が(笑)。
「はい。〈雪だるま作ろう〉って言ったときに〈やだ〉って言う人は嫌だなと思って」
――〈幽体離脱しよう〉って言ったら〈やだ〉と言わず、ちゃんとつき合ってくれるような人が。
「つき合ってくれるような人がいいですね。自分を変にセーヴさせるような男の人は嫌だなと思って。女の人ってけっこう男の人によって左右されて変わっていっちゃうじゃないですか。だから自分の個性を潰さないような人と一緒にいたいなって思いますね。〈もっと大人っぽくしてろよ〉とか、〈いまショートが流行ってるからショートにしろよ〉とか言ってくるような人は嫌なので」
――このままでいて欲しいから、ホントにそう思いますよ。数年前には原稿にもできなかった、とんでもない悩みを抱えてましたけど、なんとか幸せになっていただきたいです。
「はい、ありがとうございます(笑)」