COLUMN

映画「アメリカン・ミュージック・ジャーニー」 アメリカの歴史と共に、音楽の力を再発見する旅

©VisitTheUSA.com

アメリカの歴史と共に、音楽の力を再発見する旅

 その表題にあるように、米国が生んだ音楽の豊かな様式や素晴らしさをいくつもの都市を移動しながら讃えようというドキュメンタリー調の映像作品だ。

 旅の案内役についているのは、今年亡くなってしまったスウェーデンの人気DJであるアヴィーチーの2013年メガ・ヒット曲《ウェイク・ミー・アップ》で歌っていたアロー・ブラック。パナマ人移民の両親を持ち、ストーン・スロウやインタースコープからヒップホップ時代の広角型R&Bを送り出してきている彼は、なるほどこの映画のホスト役にはぴったりだ。

 ブラックが住むLAから、彼はいろんな新旧音楽様式を追い、NY→ニューオーリンズ→シカゴ→ナッシュヴィル→メンフィス→マイアミなどを旅していく。その過程でジャズ、カントリー、ロックンロール、R&B、ラテン・ポップなどに言及し、とくにルイ・アームストロングとエルヴィス・プレスリーの業績については時間を割いて紹介。また、アロー・ブラックがジャズ・ピアニストのラムゼイ・ルイス、現代ブルース・マンのケブ・モー、キューバ移民スターのエミリオ&グロリア・エステファン夫妻らと出会う場面があり、さらにナッシュヴィルやマイアミでは現地のミュージシャンたちの力を借りて彼が自分の曲を仕上げる映像もあるし、彼のワシントンD.C.での公演も出てきてアームストロングの有名曲《この素晴らしき人生》を取り上げ、そこにアームストロング自身の歌が重ねられたりもする。また、音楽の効用を語る材料として、自閉症の子供たちに音楽が好影響を与える事が言及され、ブラックが子供たちと一緒に音楽をする場面も出て来る。

©VisitTheUSA.com

 といったように、ネタは盛りだくさん。2時間に収めるのも難しそうなところ、この映画が40分の長さに纏められているのには驚いた。それゆえ、ニューオーリンズでのドクター・ジョンとの邂逅場面はほぼカットされているわけだが、この力ワザ具合にはあらら。劇中のナレーションや会話は日本語に吹きかえられており、それはどこか他人行儀な印象を与えよう。だが、この駆け足の内容を伝えるには、字幕じゃない方が分かり易いという判断があったのかもしれない。

 監督は、過去2度のアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門にノミネートされているという、1945年生まれのグレッグ・マクギリブレイ。実は、この作品を見て感じてしまうのは、予算が潤沢だったのだなということ。各都市の表情を伝える雄大な空撮俯瞰映像は非ドローンによるものと判断したくなるし、一つ一つの映像がかなり練られ、綺麗。結果、これはまっとうな映画/映像手法に則った作品であると見ながら頷ける。そして、その総体からは“米国の都市と音楽”、“社会や人の営みと米国音楽”というテーマが浮かび上がるのだ。

 

映画『アメリカン・ミュージック・ジャーニー』
監督:グレッグ・マクギリブレイ
脚本:スティーヴン・ジャドソン
音楽:スティーブ・ウッド
声の出演:高橋広樹(アロー・ブラック)/坂口芳貞(ナレーション)ほか
配給:さらい(2018年 アメリカ 日本語吹替 40分)
◎11/16(金)よりイオンシネマ板橋ほか〈2週間限定〉公開
americanmusicjourney.jp

タグ
関連アーティスト
pagetop