インディー・ファンから絶大な支持を得ているドーターより、ヴォーカリストのエレナ・トンラがエクス・レイ名義で初のソロ・アルバムをリリース。4ADの伝統芸とも言える耽美的な音像が持ち味の本隊と同様、ギター、ピアノ、チェロを軸としたプロダクションによって素朴かつ親密な空気を醸し、随所で微睡むようなサイケデリアを創出している。特に先行シングル“Romance”は、徐々に聴き手を高ぶらせる幽玄&壮大なアレンジと、終始どこか物悲しい歌声のコントラストが美しい良曲だ。全体としては〈アシッド・フォーク〉と形容できるスタイルだが、“I Can’t Keep You”のリズム・パターンにはジャズの要素が見い出せたりと、多彩な音楽性が顔を覗かせる点も見逃せない。