(左から)WATARU、HIROSHI、SHUN、HAYATO

〈ONE MORE DRIP〉(日常にアロマオイルの様な彩りを)をバンドのコンセプトに掲げ、生活に寄り添った音楽を展開しているFIVE NEW OLD。パンク・バンドとしてキャリアをスタートさせたが、『LISLE’S NEON』(2015年)収録の“HOLE”をきっかけにR&Bやソウルといったブラック・ミュージックへ傾倒。2020年には活動10周年を迎え、バンドとしての軸を掴み始めた。

そんな彼らが約1年半ぶりのアルバムをリリースする。作品のタイトルは『MUSIC WARDROBE』。色とりどりの服が詰めこまれ、無限のコーディネートの可能性を提示してくれるクローゼットのように、どんな気分の自分も受け止めてくれる1枚だ。

このインタビューでは、前作の『Emulsification』(2019年)からFIVE NEW OLDの歩みを振り返ると共に『MUSIC WARDROBE』にこめられた想いやこだわりについて語ってもらった。何気ない音に隠された秘密は、知れば知るほど作品を耳にする楽しみを増やしてくれるはず。

正直なところ、最近のFIVE NEW OLDはポップなバンドだと思っている節が私にはあったのだが、この場を借りて訂正させてほしい。彼ら4人は正真正銘、現代に生きるパンク・バンドだ。

FIVE NEW OLD 『MUSIC WARDROBE』 etichetta/ワーナー(2021)

 

どんなサウンドを鳴らしてもいい、何をやってもFIVE NEW OLDじゃん

――今作の『MUSIC WARDROBE』についてお伺いするまえに、2019年にリリースされた『Emulsification』の振り返りから始めさせてください。2021年の今、『Emulsification』はどのような作品だったと感じていますか。

HIROSHI(ヴォーカル/ギター)「10周年を迎えるタイミングだったし、今までの自分たちを振り返った集大成だったなって。自分たちの出自であるパンクと変遷していくなかで手にいれた横ノリやグルーヴを継ぎ目なくサウンドとして展開できた作品というか」

――『Emulsification』を漢字一文字で表すと何になりますか。

HAYATO(ドラムス)「〈集〉ですかね。ちょっとオルタナな部分を匂わせたり、メロウなチルい感じもいれてみたり、やりたいことに挑戦できたアルバムだと思うので」

WATARU(ギター/キーボード)「僕は〈建〉かなと思いました。自分たちのなかで培ってきたものを、ひとつひとつ重ねていった結果があの曲たちなので。もともとFIVE NEW OLDが持っていたものと新しいもののハイブリッドというか」

SHUN(ベース)「過去から今までの音楽の全てを乳化したって意味もあるから、〈混〉かな。混沌としてるけど自分たちの作品として上手く表現できたし、僕が加入してから初めて制作したアルバムでもあるので」

HIROSHI「僕がパッとでてきたのは〈極〉。〈自分たちがやってきたことを凝縮させた〉という意味では、ひとつの道に入ったような気がしています。極めるべきものが見えてきたというか……」

――見えてきた〈極めるべきもの〉とは何でしょうか。

HIROSHI「〈何をやっててもFIVE NEW OLDじゃん〉っていうところ。日常の何気ない時間をすごくドラマチックなものにするという意味で〈ONE MORE DRIP〉を掲げている以上、僕たちは徹底的にいろんなサウンドでその演出の仕方を提供し続けるべきだと思うんですよ。〈FIVE NEW OLDだから元気なときに聴くものだ〉だけじゃなく、悲しいときや辛いとき、泣くしかないときに寄り添えるように。

そうやって日常に寄り添えるなら、どんなサウンドを鳴らしてもいい。ジャンルをクロスオーヴァーしていくことをためらわない」